スタンディンバイ
鎌足と大和、世紀の怪獣大決戦が裏野〔教師陣〕総出で大和を制止するという強行手段で終了した20分後。観戦した全員のボケに律儀にツッコミ続けた一虎が、やっとぐったり状態から復帰し始めた頃。
「さて、茶番がいい休憩になったところで、改めて、赫夜の解析を行う」
「あ・・・はい」
柳児がそう言って、正座した一虎と深夜の前、安楽椅子から立ち上がった。なぜあんな戦闘を見た直後にこの場にいる全員はこんなにも冷静で切り替えが早いんだろう、という一虎の疑問に応える者はいない。
『だって、絶薙さんがズバババって校舎とグラウンド真っ2つだし、鎌足先生もなんか変なのを口からウネウネオロロロってドカンドカンドカーンってとんでもなく凄かったのに』
先ほど天地がひっくり返る勢いの戦闘シーンを目の当たりにし、興奮冷めやらぬ一虎を無視して、立ち上がった長身があるものへと手を伸ばす。
そして、
『あ、そうだ。そもそも反咲くんも天出雲さんも、両親が超級の〔裏論使い〕だからあんなの見ても全然驚かないんだ』
などと一虎が納得して顔を上げた、瞬間。
ガポ。
「・・・え?」
「よし。じゃあ〔胴体〕はサポートを頼む」
一虎の前で柳児はそう言うと、桧王の〔胴体〕から外れた〔頭部〕を自分の頭に被せた。
「は・・・?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!?」
あまりの光景に、アイマスクを外して束の間現れた柳児の素顔も見逃し、あっけにとられる一虎と深夜。そんな彼らに、一度大きく展開して柳児の頭に形を合わせ、ヘルメット型となった桧王の〔頭部〕が、スリットの中の単眼を赤く光らせて告げた。
「スタンディンバイ」
「・・・いやいやいやいや!?ちょっと発音が流暢で格好いいけども、何、どう、えええええ!?」
「私ノ心配ハ無用デス、一虎様」
「うふう!?そのヘルメットみたいな状態でも喋れるんだね!?なんかうんよかった!」
フローリングに正座する一虎が桧王と間の抜けたやり取りをしていると、頭に円盤頭を被せた柳児が言った。
「よし、始める。竹叢」
「え?何?」
真面目な声音に、やっと現実に立ち戻った一虎は姿勢を正して聞き返す。
「俺に赫夜の〔本体〕へのアクセス許可を。〔裏論武装〕は、使用者として〔裏力登録〕された人間か、その使用者に許可された人間でないと何も干渉出来ねぇからな」
「アクセス許可?」
怪訝な表情を浮かべる一虎に、柳児が桧王の単眼を向けて答える。
「口頭でいい。俺にアクセス許可を出してくれればいい」
「あ、じゃあ、アクセスを許可、します」
「肉声による所持者の許可が下りた。認証。承認。よし、構造および、機能の解析を開始する」
全ての驚きと疑問を無視し、柳児が刀から両手を離す。しかし刀はその存在位置を空中に維持したまま、柄を天井へと向ける。刀の両側に控えた柳児の手指が動き、
「あ・・・!?」
植物の根を固くよりあわせた意匠の柄が、可憐な野花が咲くように解けた。開いたその中心には、小さく、黒と赤の札が幾重にも張られたビー玉サイズの球体。赫夜の〔本体〕たる、〔ジン核〕の姿が現れる。
その光景に、いきなり柳児の声音が変わった。まくし立てるように言葉を放つ。
「なんだ、これ?〔ジン核〕がビー玉サイズ?なのに〔意志〕が目を覚ましてるのか?そんなの聞いたことねぇぞ?桧王、何か知ってるか?」
「柳児様ガ疑問ヲ持ツノモ無裏アリマセン。通常、培養液内デ、莫大ナ時間ト手間ヲカケテ生成サレル〔人工ジン核〕。及ビ、特殊ナ〔裏生物〕ノ体内デ生成サレル〔天然ジン核〕ハ、ドチラモ〔意志〕ガ目ヲ覚マスノニ、直径10cm以上ガ必要ダト言ワレテイマスカラ」
「もし培養液や特殊な〔裏生物〕の体内から一度でも取り出されれば、〔ジン核〕はそれ以上のサイズには成長しないし小さくもならない、はずだよな?だったら、これはどういうことだ?このサイズなら、まだ〔意志〕は眠っているはずだろ?」
「ハイ」
「だったら、なんでだよ?お前のように直径10cmオーバー、〔意志〕の1つ目の機能である〔裏力〕の自己生成が可能になる〔シン核〕になって初めて目を覚ますはずだ。だが、これは・・・?」
怪訝な様子の柳児の言葉に対し、
「あの、どういう・・・?」
と一虎は質問し、
「・・・俺はもう疲れた。桧王、お客様に解説頼む」
と、柳児が桧王に促す。言葉に、桧王の単眼が「ハイ」と答え、一虎のほうを向いて続ける。
「一虎様ハ、〔ジン核〕ノ種類ガ3ツアルコトヲ、ゴ存知デスカ?」




