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ふ、っくうう、うわああああああああん!

 そこにはアニメの戦隊ヒーローもののヴァイオレットのお面をつけたまだ幼い少年と、それに向き合う着物を纏った黒髪の女のかがんだ背中。2人はどうやら家の軒先にいるらしい。そしてどうやら黒髪の女の背後から、桧王がお面の子供を覗き込んでいるのだと一虎は気づいた。

 映像が動きだし、幼い少年が背中を見せる黒髪の女に問う。



「ねえお母さん、魂って何?」

「あ、ええっと、ね?その、魂っていうものは・・・」

「じゃあ、僕らの生活を支える、電気に代わるエネルギー、〔裏力〕って何?〔本能〕と〔精シン世界〕と〔意志〕と〔肉体〕と〔現実世界〕の関係と〔ジン核〕が〔意志〕を持つことにどんな共通点があるの?でも〔意志〕を持ってるのに、〔ジン核〕は自律駆動は出来ないんでしょ?」

「りゅ、柳ちゃん・・・!?あの、そんないっぺんに聞かれたら、お母さんちょっと困・・・」



 黒髪の女が、お面の子供の質問責めにたじろぎ、一歩を後ずさる。



「じゃあなんで桧王は、普通の〔ジン核〕と違って自分で〔裏力〕を作って自律駆動出来るの?ねえ僕わかんないんだ母さんはわかってるんだよねだって〔反咲工房〕の親方だもんね?」

「あ、えっとその・・・ううう」

 お面の放つ無形の圧力に耐えかねて、黒髪の女がガタブルと震えだす。

「お母さんは大人だもんね?大人はなんでも知ってるんだよね?」

「・・・ふ、っくうう、うわああああああああん!」



 映像の中の女が、お面の子供の質問責めと上手く説明せねばならないというプレッシャーに耐えかねてついに逃げ出した。桧王の視界らしい映像が、干された布団を背景に走り去る女の背中を見送り、次いでお面の子供に振り返る。お面をわずか持ち上げた子供の口が、ニヤリと嫌な笑みを浮かべているところがハッキリと映し出され、ディスプレイは閉じられた。

 そして、桧王は一虎と深夜に言った。



「柳児様ハ、コノ頃カラスデニ、〔異論派〕ラシイ狡猾ナ策士デシタ。オネショヲシテ怒ラレタ直後ニ、アマリ会話ヤ説明ガ上手デハナイ母上様ニ、コノヨウナ復讐ヲ」

「・・・うわ~。それで反咲くんのお母さん、なんとかしようとしてそのボールを」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・腐れお漏らし」

「リュージはいじめっ子?」



 一虎と深夜と軽蔑の眼差しと、赫夜の純真な視線が捻くれまくった柳児を捉える。

 対して、



「・・・」



 赫夜と桧王を含めた4人から見つめられた柳児はそっぽを向き、しばしの間を置いて、



「コイツは、〔人間〕を簡単な構造の模型にしたものだ」



 言いながら、柳児がボールに左手を添える。反射的に、



「その、木のボールが?」



 と聞いた一虎だったが、



「って、この会話さっきやったよね!?もしかして今の件なかったことにしようとしてる!?」



 と1人慌てた。対する柳児は断固とした口調で言った。



「説明を、続ける」

「あ・・・はい」

「桧王お前後で覚えてろ俺に関するゴミ記録全部消させてやるからな」



 ブツブツと赫夜にお茶を渡す桧王に恨み言を吐いた柳児を見て、一虎はすごすごと引き下がる。次いで、一虎と深夜の見ている前で、ボールがバカリと音を立てて真っ2つに割れる。半球の片割れが床に降ろされ、中空に留まった半球の断面が一虎達に示される。

 それを見て、



「くだ、もの?」



 真面目な方向に意識を戻した一虎が、率直な感想を口にする。

割れた球体の断面は、果物のように、円が円を包んで外に広がっていくような波紋構造を持っていた。


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