取引
「そもそも赫夜という〔意志〕を持った〔ジン核〕を、〔再武装化〕したのは〔反咲工房〕の職人である俺の親父だ。だが、コイツはいきなり折れてる。その原因がわからない」
「その原因を探るため?」
「ああ。正直ゴミ面倒な作業だが、もしまともな〔裏論武装〕も作れないなんて周りに思われたら、ただでさえ落ち目の〔反咲工房〕の名前にまた傷がつく。だから俺はコイツがどんな構造で、どんな機能を備えているのかを調べたい。もし動かないなんてことになったら、〔反咲工房〕の〔武装化職人〕でもある俺が責任をとる必要があるからな」
「えっと・・・」
気だるげだった反咲柳児の真剣な口調に一虎は戸惑う。しかし彼の言葉から少しの裏解を得る。促す柳児の声。
「頼む。他の誰でもない、俺にやらせてくれ」
一虎は、真摯な柳児の言葉から彼の想いを汲み取る。
『・・・そう、か。もし僕が他の職人さんに解析を頼んだら、そしてもし赫夜に問題があったら、反咲くんの所属する〔工房〕に悪い評判が出る・・・』
考えた瞬間、一虎の答えは決まった。
だから、
「うん、いいよ。でも、赫夜に痛みとか、そういうのはないんだよね?」
一虎は1つ先の懸念を口にする。流石に子供である赫夜に悪い影響が出るのはよくないと思ったのだ。
すると、
「ああ、それはない。取引成立だな。さて、そうすると、見た目で裏解したほうがいいよな」
柳児は一虎を安堵させる余裕の笑みでそう答える。
次いで、
「おい、桧王?」
「ハイ」
「部屋から工具箱と作業台、あと〔人間〕の構造模型を持ってきてくれ」
「承知イタシマシタ」
柳児は従者であるらしい桧王にそう言った。桧王がどういうわけか赫夜の鼻の穴に詰まったかりんとうを抜く作業を中断して立ち上がり、奥の部屋、柳児の私室に向かう。すぐに取って返した桧王は、柳児と一虎、深夜の前に膝の高さの木製の作業台を設置。その上に緑の工具箱と、バスケットボール大の木製の球体を置く。
「サンキュ」
礼を言った柳児が、再び赫夜の鼻に詰まったかりんとうを抜く作業に戻る桧王を見送る。
「で、お前達が聞きたいのは、なんで〔ジン核〕に〔意志〕があるのか、だったな?」
「うん」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ん」
2人の頷きを確認し、黒革の手袋に覆われた柳児の右手が閃く。手も触れられていない工具箱の蓋が勝手に開き、中からコイル状の小さなバネが1つ浮遊、中空に停止する。




