・・・・・うん?
安堵していた一虎が、一転して自信なさげに答える。
「さ、さあ。僕も詳しくは。それに、刀のほうは、赫夜が現れたときに折れちゃったし」
「折れた?見せてもらうぞ?」
一虎が頷くと同時に柳児の左手が翻る。床上で桧王と楽しそうにお茶を準備する赫夜の頭の上を、一振りの刀、一本の竹にも見えるそれが宙を舞って飛んでくる。柳児は右手でそれを受け、ためらいもなく鞘から抜く。だがそこにあるべき竹製の刀身はない。
「根元からいってんな。どういうことだ?」
「さあ・・・」
「仕様なのか?だが、これが親父の〔裏論武装〕ってことは、〔化身化〕以外にどんな〔裏論〕を積んでるとか、どういう使い方を想定しているのかって説明はなかったんだろ?」
「あ、うん。特には。とりあえず刀を受け取ったら、いきなり光って赫夜がビャーって」
「・・・ゴミ親父め、毎回顧客への説明を端折るから仕事が認められねぇんだ」
ブツブツと言う柳児に、一虎は自分の〔裏論〕への無知が自分だけのせいではないと知り、安堵して言った。
「でもホントに驚いたよ。そもそも、〔ジン核〕に〔意志〕があるなんて知らなかったし」
しかし、一虎の軽い言葉に、
「・・・は?」
「・・・あれ?」
柳児が顔を上げて、ポカンと口を開いた。その姿を見て、一虎は自分がまた馬鹿なことを言ったと気づく。次いで、柳児が怒鳴るような早口で言った。
「おいおいマジかよお前!?そんなことも知らないで〔裏論使い〕を名乗るのか!?こんなの常識だろ!そもそも〔意志〕があるから〔ジン核〕は〔裏論〕を展開出来るんだろうが!?」
「あ、えっと・・・そうなの?」
一虎の困った笑顔を見て、自分の常識の水準に不安を抱いたらしい柳児が、顔を上げて聞く。
「お、おい!?お前は知ってただろ!?」
対して、
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん?」
一虎の上で鎮座する深夜が、長い間の後に小首を傾げた。〔裏論〕や〔ジン核〕に関してそれなりの知識を持つ柳児と戦って破った少女も、どうやら詳細な部分は知らないらしい。雰囲気を感じて、一虎は少しホッとする。
そして寝そべったままの少年は、
「・・・こんな奴に負けたのか、俺は。くそ、こんな脳筋女に・・・」
などと頭を抱えて落ち込んでいる柳児に、
「あの」
「・・・なんだよ」
「よかったら、教えてくれないかな?」
そう頼んだ。すると、一瞬動きを止めた柳児は、次に考え込むように腕を組んだ。
そして、
「条件がある」
そう言って、バキバキとかりんとうを齧る赫夜に黒革の手袋に覆われた左手の指先を向けた。
「俺にアイツの機能と構造の解析をさせろ」
「解析?」
柳児の意図がわからず、一虎は疑問形で返す。その答えは、すぐに返ってきた。




