する方もされる方も
「考えてもみろよ。お前の〔裏論武装〕が俺の親父の作品だってのはいい。そしてそれを、お前の〔ジン核〕の貸与者、絶薙大和の娘である天出雲が届けに来た。それもいい」
「うん」
「だったら、なんで親父があの場にいたんだ?天出雲は、お前の〔裏論武装〕を親父から受け取っていた。なら、あの場に親父がいるのはおかしくないか?」
「あ、れ?そうかも?」
「どういうことだ?」
柳児がそう言うと同時、彼のアイマスクが別の方向に向けられる。寝そべった一虎からは見えないが、彼をまたぐように置いた椅子に座る少女に、柳児が言葉を向けたらしい。
すると、
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん」
柳児の疑問に、長い独特の間を置いてから、一虎の背後で深夜がコクリとうなずく気配。そのあまりの間の悪さに、柳児がやや椅子からズリ落ちる。さらにかなりの間をおいてから、
「・・・春休み。私、流さんに、〔抜刀術〕の使い手を想定した稽古、お願いした。そしたら、入学式、遅刻寸前。だから、トンボで出発。パラシュート降下」
と、少女はつっかえつっかえ言った。一虎と柳児の頭は最初、飛び飛びのその言葉を裏解出来なかったが、必死に言葉を纏めて2人は問いかけた。
「ええっと?春休みの間、〔抜刀術〕の使い手を想定した稽古を、〔抜刀術〕の使い手でもあるうちの親父から受けていて?」
「でも、入学式に遅刻しそうになって?だから反咲流さんにトンボでここまで送ってもらって?上空からパラシュート降下した、ってこと?」
2人の言葉に、
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん」
注目されると混乱してしまうのか、再びかなりの間を置いて深夜が頷く。
「な、なるほど。だからあの場に天出雲さんを送ったばかりの、反咲流さんがいたんだね」
「ゴ、ゴミわかんなかったぜ」
一虎と柳児が、なんとか状況を呑みこむ。すると次の瞬間、椅子に座った深夜が身じろぎし、その下にうつぶせに寝そべる一虎の背中の上で、ゴリッと何かが動く音。さらには棒でも押し当てられているような硬質な感触が一虎を襲い、口から声が出る。
「あ、ふ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・気持ち悪い」
嫌悪の覗く深夜の声が頭の後ろから降り、一虎は素直に謝った。
「ご、ごめん。でも気持ち良くて」
すると、
「なあ、竹叢。俺は、俺の持つ〔裏論〕によって、直接見なくてもお前らが今どういう状況かだいたいわかる。だから一応聞いておきたい」
「な、何?」
「そういうの、好きなのか?その、する側も、される側も?」
柳児が、椅子に脚を組んで座る深夜の白い靴で、現在進行形で背中を踏みにじられている一虎にそう問いかけた。




