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調整が甘い

 空とイリーナは一緒にシミュレーション室にいた。

 連鎖爆発について彼女がたずねてきたからだ。空としても隠す理由がないから、改善点を教えていたというわけだ。正直黄龍は小回りが利かないから難しいとは思っていたが、どうもイリーナなりに改善していたらしい。空も学べる部分がたくさんあった。


「イリーナさーん」

「ん?」


 シミュレーションでの実践と二人で改善案の話し合いを繰り返していると、ネオン教授がシミュレーション室に顔を覗かせた。


「ちょーぉっといいでーすかー?」

「ん」

「待てよ」


 ネオン教授の後を追おうとするイリーナの肩を掴んで、空は眼光鋭くネオン教授を睨み付ける。


「はぁーい。なーんでしょーかー?」


 ニタニタと薄気味悪い笑みを刻みながら、ネオン教授は首を傾げる。同じ動作でもイリーナとは天地の差だ。


「イリーナは調整が済んだばかりだろ。一体何の用事があるんだ」

「こうせーんないよーうを見るかぎーり、ちょうせーいのあまーい部分が見ーつかりまーしたー」

「調整が甘い? MVP取れる働きだったぞ。勘違いじゃないのか?」

「ぶがーいしゃがー、口を出ーすことではーあーりませーん」


 部外者、よりにもよって部外者と言いやがったな。

 空の堪忍袋がわずかに切れた。要はカチンと来たのである。


「なーんで目のかたーきにされるーのかわーかりませんがー? すーくなくとーも、あーなたよーりはイリーナさーんを知っていーるつもーりでーすよー」

「だったら調整の内容を教えてみろよ。そもそもその情報がないから俺は」

「なーんどもいーわせなーいでくださーい」


 部外者に話すことはない。ネオン教授の目はそう語っていた。


「チッ、分かったよ意地でも突き止めてやる」


 空は大人しく引き下がる。ここで噛みついたところではぐらかせるのは目に見えている。もしかすると、空の不安を払しょくさせるために嘘の情報を渡してくるかもしれない。

 普通の高校生だった空だ。専門的な言葉を使ってそれらしく語られたら真偽は判断できない。丸め込まれる可能性はおおいにあった。

 調整の内容を知るためには、空が直接その目で確認する必要がありそうだ。


「あーなたがーわたーしにきょーうりょくしてくーれるのなーら、すーぐにわかーりまーすよー?」

「冗談だろ? 一時的にでもお前を信頼するなんてできるわけがない」

「そーれはざーんねーんでーすねー」


 ニタニタと笑っているネオン教授は、間違いなく残念に思っていないだろう。

 指摘して慌てふためくのなら見てみたいが、空はもうこの男と会話もしたくなかった。


「ん」

「心配するなって、俺はイリーナの仲間で家族だ。何されているかも分からない限り信用できない」

「んー」


 イリーナの頭を撫でながら空は首を横に振った。彼女は不満そうに唸る。しかし、こればかりは空も譲れない。


「そーろそろ行きまーすよー」

「ん……ん」

「ああ。いってらっしゃい」


 小さく手を振るイリーナに空も軽く手を振った。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


次回は明日午前8時更新予定です。

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