女の子の方が
「迷惑をかけてすまなかったんだな」
艦橋で健太郎に報告が終わった後、スイは頭を下げた。
「仕方ないわ。機体トラブルなんだもの。誰にでも起こることじゃない」
「ん」
シトラに続いて、イリーナも仕方がないと頷く。
本当はスイの薬が切れて一時的に共感覚を失ってしまったからなのだが、帰投すると健太郎は別の理由を用意していた。エンたちに事実を隠そうとしているスイに配慮したのだろう。
「整備に慣れていないスタッフがいた、か。やっぱ整備も専用のチームが必要なんだな」
「ん」
「当然よ」
実際は違う。ステラの整備スタッフは優秀だ。彼らに何の非もない。
悪いのはタイミングの悪さと人に罪を押し付けた健太郎だ。
「空君たちがいなければボクは死んでいたんだな」
「俺じゃないけどな。エンが気付いたおかげだ」
「ウチちゃうよ。空が守ってくれたおかげやん」
「二人ともありがとうなんだな」
スイはもう一度頭を下げた。
「それにしても空君はホント強いんだな。思わず惚れ直したんだな」
「ほっ!? ほ、惚れ直したってなんだよ」
平静を装うとするが、空の声は震えていた。スイは見た目だけならシトラたち三人に勝るとも劣らない美貌の持ち主だ。動揺しなかいのは筋肉隆々のガチムチが好きな人だけだろう。
少女たちの訝し気な視線が刺さる。
「空ってゲイなんやな。どうりでウチの誘惑に引っかからないわけや」
「司令官とも仲いいしね」
「ん」
「ちげーから」
ひそひそと勝手なことを言っているシトラたちに、空は不機嫌気味に否定した。
「違うのかな?」
上目遣いで目尻には涙もためて、スイが空の右腕に絡みつく。
口の端が楽しそうにピクピクと痙攣していた。確信犯だろお前。
「おまっ、離れろマジで」
空は慌てて空いている左手で彼の肩を掴み、力任せに引っぺがそうとする。
少しドキッとしたことが、たまらなく悔しかった。
「「やっぱり……」」
「ん」
「絶対違うから! 俺は女の子の方が好きだから!!」
ジトーとしながら確信を得たみたいな調子で呟く女子三人に、空は無駄に力の入った大声で否定する。
「んじゃあウチに手を出しとく?」
「それはそれでありなんだな」
「いや無しだから」
空は即答する。
何が兄妹仲が悪いだ。息ピッタリじゃないか。
こんなことになるなら仲介に入るんじゃなかったと、空は後悔した。
「そうよ。絶対にダメだから」
「ん」
「どうして二人まで邪魔すんねん」
スイと一緒に抱き着こうとするエンの両肩を、シトラとイリーナが首を横に振りながら強く掴んでいた。その表情は戦闘中でも見せないぐらい真剣である。戦闘中の顔なんて見たことないが。
ふと視線を感じて、まだ左腕の自由を奪っているスイに視線を落とす。
彼はすごく楽しそうに微笑んでいた。
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次回は今日午後12時更新予定です。




