第9話 残党招集作戦
手駒を増やすことにした。
シェイドは5回見つかった。ゴルダは剣を磨いた。2人とも使えなかった。ならば数だ。かつての魔王軍には優秀な者が大勢いた。今も各地に散らばっているはずだ。ゴルダに声をかけさせれば、すぐに集まる。
ゴルダに命じた。「仲間を集めろ」と。
3日後、ゴルダが3人連れてきた。
1人目:がっしりした体格の男。元魔王軍・突撃部隊長。
「お久しぶりです、魔王様……!」と言って頭を下げた。腰に下げているのは剣ではなく、木槌だった。
「今は何をしている」
「大工です。棟梁に弟子入りして3年目で、来月から現場を任せてもらえることになりました」
2人目:細身の女性。元魔王軍・毒物専門の暗殺者。
「魔王様にまたお会いできて光栄です」と言って頭を下げた。手に持っているのは短剣ではなく、どんぶりだった。
「今は何をしている」
「蕎麦屋です。出汁の研究に3年かかりましたが、ようやく納得のいく味になりました。今日も出前が3件あって、少し急いでいます」
3人目:大柄な男。元魔王軍・精鋭部隊長。
「お懐かしゅうございます」と言って頭を下げた。両手に持っているのは巣箱だった。
「今は何をしている」
「養蜂です。蜂が今、巣分かれの時期でして——少し気が急いています」
私は3人を見た。大工と蕎麦屋と養蜂家が並んでいた。
「……お前たちは、今すぐ戦えるか」
大工「来月まで現場が」
蕎麦屋「今日は出前が3件」
養蜂家「蜂が巣分かれ中で」
3人が同時に答えた。綺麗に揃っていた。
「……解散していい」
「魔王様!」ゴルダが声を上げた。「せっかく集まったのですから、せめて作戦会議だけでも——」
「大工と蕎麦屋と養蜂家で作戦は立てられない」
3人が顔を見合わせた。大工が「まあ、そうですね」と言った。蕎麦屋が「出前もありますし」と言った。養蜂家が「蜂も心配で」と言った。
3人とも、どこか申し訳なさそうな顔をしていた。悪意はなかった。ただ、今の仕事が板についていた。
養蜂家が巣箱を置いて、懐から小瓶を取り出した。
「よかったら、蜂蜜を持っていきますか。今年はよく採れたので」
私は小瓶を見た。
「……もらう」
(所要時間、3日。成果、ゼロ。蜂蜜1瓶)
ゴルダが「魔王様……!」と言って泣いていた。
蜂蜜は、甘かった。




