第12話 同盟締結作戦
外部の力を借りることにした。
武器は料理に使わされた。手駒は使えなかった。記憶喪失はバレた。ならば同盟だ。使える勢力と手を組む。そのための交渉は得意だ。千年以上、外交で生きてきた部分もある。
シェイドに言った。「使える勢力を紹介しろ」と。
翌日、シェイドが1人連れてきた。
白髪の老人だった。腰が少し曲がっていた。にこにこしていた。
「魔族の方は珍しいですな。シェイドくんに呼ばれて来ましたが——何かお困りで?」
私はシェイドを見た。
「これは何だ」
「村一番の手練れです。若い頃は傭兵をされていたとか」
「今は?」
「引退されています」
老人が「まあまあ、せっかくだからお茶でも」と言った。
お茶を飲んだ。老人の武勇伝を1時間聞いた。
その翌日、ゴルダが来た。
「魔王様! 仲間を集めました! 今度こそ精鋭を——!」
後ろに3人いた。
大工と蕎麦屋と養蜂家だった。
「……お前たち、また来たのか」
大工「ゴルダさんに呼ばれまして」
蕎麦屋「今日は出前が3件あるんですが」
養蜂家「蜂がまだ巣分かれ中で」
「解散していい」
「魔王様!」ゴルダが前に出た。「今度は作戦があります! 聞いてください!」
「聞く」
ゴルダが胸を張った。
「まず大工殿にアレン殿の家の構造を調べてもらいます。次に蕎麦屋殿が出前を装って近づき、養蜂家殿が——」
「養蜂家は何をする」
「蜂を——」
「蜂を使うのか」
「は、はい……! 蜂で——」
シェイドが口を開いた。
「ゴルダさん、蜂は制御できますか」
「……できません」
「では蜂を使うと、全員が刺されますね」
沈黙があった。
大工「それは困る」。蕎麦屋「出前が届けられなくなる」。養蜂家「蜂も疲れます」。
「解散していい」
「魔王様……!」
ゴルダがシェイドを睨んだ。
「お前が余計なことを言うから!」
「正しいことを言いました」
「黙れ!」
「ゴルダさんこそ」
「お前には聞いていない!」
2人がにらみ合った。大工と蕎麦屋と養蜂家が少し後ろに下がった。
養蜂家が蜂蜜の小瓶をそっと私に渡した。
「よかったら」
「……もらう」
(所要時間、2日。同盟、締結できず。蜂蜜2瓶目)
帰り際、シェイドだけが残った。
「魔王様。本当に、復讐したいですか」
「また同じことを聞くな」
「今日で3回目ですね」シェイドが笑った。「答えが変わっていないか、確認したくて」
「変わっていない」
「そうですか」
シェイドが少し笑った。今日は、笑い方が少しだけ違った。残念そうにも見えたし、安心しているようにも見えた。
どちらなのか、私にはわからなかった。




