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人工知能達と行く宇宙傭兵生活   作者: フタバ
戦場で踊る輪舞
520/522

覗き込む時自分もまた覗き込まれている

「被害状況は...」

「高速艇全23隻中5隻が撃沈、乗員は...」

「分かった...」


 未だ砲火は厚いが既に汽水域の目前まで迫った我々には最早それは効かないに等しい、シャルマーニの防衛システムは構造上懐にまで潜り込まれることを想定していないからな。

 内側にまで潜り込んだ時点でほぼ勝ちが確定しているのだ...


「だが...何だろうな...」

「隊長?」


 この形容しきれぬ得体の知れない恐怖感とでも言うか、背中を薄く撫で付けられてぞわりと身震いしてしまうような感覚がどうしても拭えないのは...


「急ぎ汽水域を超え遡上を開始する、魚雷攻撃はもう来ないと考えていいだろう。」

「了解。」


 海中を僅かに覗き込んでも、既に水深は10mを切り吃水線の深い船舶では追跡もできないだろうし、あの一瞬だけ見えた潜水艇だろう影はどこにも姿はなかった。


「警戒は怠るな、どんなトラップが仕掛けられているか分かったものではない。」


 短く手信号で後続の部隊に指示を飛ばしたその次の瞬間だった、またしても魚雷による攻撃により最後尾の高速艇が爆破!!


「馬鹿な...既に水深は10mを切っているのだぞ!?」


 ここまでその潜水艇は追ってきていると言うのか!?冗談ではない!!敵からの攻撃も現状何故か沿岸砲以外は来ない事も有るが、これ以上余計な被害を出してたまるか!!


 全力で汽水域を超え遡上を開始する、流石にここまで来ると沿岸砲による砲撃は止む...つまり我々は潜んでいるだろう河川の岸辺に居ると思われる兵を警戒しなければならないということだ。


「発見されていなければ楽なものを...」

「向こうの索敵が1枚上手だったという事でしょうね。」

「それを言われてしまうと何も言えんな。」


 ほんの少しではあるが敵の攻撃が収まったと感じれば、息を吐く程度の緊張感の弛緩はある。

 それでも周囲の警戒は怠らず気の抜ける様な者はいないが、ここで気を抜いてしまうようであればそもそもここには居ない者ではあるし気にする程でもないか?


「隊長、衛星軌道上からの情報ではこの河川を3km程遡上後陸地での移動を2km程になっています。...上陸地点はズラすべきでしょう。」

「難しい所だな、既に敵には我々がどれ程の人数を残して遡上しているかがバレている。分散した戦力を各個撃破されてはたまらん、だが...それは向こうも同じことか...」

「兵力も然程此処に配備は出来ないでしょう、ならば一点集中で1ヶ所を護るのが向こう側としても望むはず...こちらはそれを逆に包囲し圧をかけるのが正解かと。」


 部下の提案は確かにこちらの減った戦力をもってしても十分可能な範囲内だった、事前に確認出来た情報でも此処に居るのは完全な非戦闘員が殆どで戦闘可能な人員も殆どがAMRSのパイロットだと言うことは分かっている。

 こちらは非戦闘員を確保人質にしてしまえば勝ちは確定するのだからな、無闇な非戦闘員の殺傷などは厳禁としているが...戦場の常と言うか、どうしても滾った血を収めるには肉欲の発散がいちばんではある為に()()()()()行為に直結してしまうのも多少は黙認せざるは得ないだろう。


「では各高速艇は別々の上陸地点から進軍を開始せよ、行動開始はこちらが認識出来る最大範囲で展開が確認できた瞬間とする。間違っても焦って手を出すなよ。」


 最前列に居る私の高速艇が1番上流まで上りそこから陸上行軍を開始する、最後尾が遡上を開始してからおおよそ1kn地点で上陸して行くのを確認した。

 残る10数隻が等間隔で上陸していく中、丁度視界から上陸部隊の高速艇が視界から消えたタイミングで私の乗る高速艇も接舷した。


「気を付けろ、リゾート惑星は元が原生林を色濃く残している。ブービートラップの類いには細心の注意を払え。」


 回収の困難になる類のものは設置して居ないだろうが、視界の悪さを利用した即席トラップ等は存分にありうる。

 そういった類は位置さえ把握していれば現状復帰は容易いからだ、部下の数名が水に脚を下ろして移動を開始した...


「っ!?どうした!!」


 その者達の動きが一斉に止まる、身体は疎か緊張による強ばった表情すらそのままに一切の動きを停止してしまったのだ。


「ちっ!!水に触れるな!!毒だ!!」

「避難地の水辺に毒!?相手は正気ですか!!」

「向こうもなり振り構っていられないという事だ!!引き上げて急ぎ移動を開始しろ!!」


 筋肉まで一斉に固まっているということは即効性のある神経毒か?心臓にまで作用されていてはこの場で即死していてもおかしくはないが...引き上げられた部下達の反応を見るにそういった類のものではないようだ...

 高速艇がエンジンを吹かしてこの場から離脱しようとした瞬間...一瞬だけ進んだと思った直後急激なブレーキがかかり、救助に当たって居た為に姿勢が悪かった者と周囲の警戒に当たる為姿勢を高くしていた者たちが船外に吹き飛ばされた!!

 幸い私は膝立ちの姿勢だった為に船外に飛ばされることはなかったが、船上に残ったのは戦闘不能になった数名と操舵手の僅かな人員のみ。


「どうした!!」

「わ...分かりません!!エンジンは正常に稼働しています!!」

「落ちた者を回収する!!急げ!!」

「動けません!!まるで...なにかに掴まれている様な!!」


 次の瞬間私は恐怖した...「ズズッ...」と何かが高速艇を締め付けるような、はい回っているような音がしたと思った時には既に手遅れだったのだ。


 高速艇の船上に這い上がって来たのは無数の触手...現物を見た事はないがその触手にはタコと呼ばれる生物の様な吸盤が備わっており、動けない部下達を1人...また1人と締め上げては水中に引きずり込んでいく。


「ば...化け物っ!!」


 声を上げた操舵手が恐怖のあまり逃げ出そうとした次の瞬間、エンジン側からなにかが飛び出して水中に引きずり込んで行った...


「た...隊長!!たすけ...ガボッ...」


 僅かな抵抗で水上に浮かび上がりはしたものの、恐怖と引きずり込んだ相手によって再度水中に沈んでしまった部下の安否は浮かんでくる水泡が消えていくのを見ればすぐにわかった。


「こんな...こんな馬鹿な話があるか...!!」


 俺たちはいったい何と戦っていたんだ...こんな未確認生物と戦う為に俺達はこの作戦に従軍したわけでは無い!!


 河川にほおり出された部下達の姿はいつの間にか消え、触手によって動けなくなったもの達も次々と水中に連れ去られた。

 船上に残るのはもう私1人、だが...私の部隊ひとつが潰された程度でこの作戦が失敗するとは思うなよ!!


「モルゴースちゃん、最後の1隻制圧完了だよ。」

「は?」


 その声は唐突だった、そして予想外だった。

 その声のする方向は私の直上、そしてその声の主は岸辺に着地し悠々とした顔で私を捕捉していた。


「うん...うん、この人が指揮官っぽいかな?ずっと指示してたし、1番全体を俯瞰してたからね。ん?他の戦闘員?全部回収してるよ、多分ハンザちゃんとクトリちゃんが...カオちゃんとモアハちゃん?...あはは...」


 見た目的には鳥人...だが私のよく知る外見では無いその声からして女と判断できるその存在は、まるで私のことを既に警戒するに値しないとしているかのようで...酷く不快と感じた私は...


「この...舐めるなァ!!」


 小銃をその女に向け、トリガーを引こうとした次の瞬間...


「ほっ!!」

「ゴブッ!?」


 一瞬で私に肉薄したその女の強靭な脚で蹴り飛ばされた、数回水切りの様に水面を飛んだあと静かに沈み始める身体と意識の中、最後に見えた光景は...


「私達の勝ちぃ!!」


 と喜ぶ鳥人の女と、水面から身体を出したこれまた女の4人の姿だった。

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