真昼に訪れる不可視の悪魔
ヴィヴィアン『説明を忘れてました!!この話...と言うか3つ程前のシュトラーセちゃんの話から、パパ達の戦闘が始まる迄には凡そ2週間程の時間差が有るよ!!因みにこっちが2週間早いって感じね!!なんで直ぐパパ達が来ないのかって?そもそも本土防衛に殆ど人員割いてる中こっちにまで割く余裕は無いんだよね〜。って事で説明は終わり!!』
〜連合軍特殊部隊『要人捕獲作戦』隊長視点〜
「隊長!!潜水艇...航行不能です!!防衛システムによる魚雷攻撃かと!!」
「馬鹿な!!こちらは秘匿されたステルスシップで降下し、直接海中から進んでいたのだぞ!?それを何故補足され...あまつさえ魚雷攻撃が着弾する!!」
「分かりません...ソナー及びレーダーには魚雷しか!!」
「えぇい!!急速浮上!!高速艇を出せ!!河川を遡上し目的を達成する、おのれ...作戦が完璧なものにならんとはなっ!!」
先程突如として我々の乗る潜水艇を襲った大きな揺れ...迎撃用とは言えまさか無音魚雷とはやってくれる!!
レーダーによる探知すら回避するとは...やはり余程の要人等でなければ使用を許さない惑星と言うだけはあるな!!
外殻を破壊された為長く潜航を続けていれば自沈の可能性すらある為にバラストタンクをブロー...つまり船体を軽くして浮上するしかない、本来であれば持っと陸地に近付いた所でバレずに浮上予定だったのだが早くもその予定は崩壊してしまった...
「海上まで後10秒!!」
「よし、浮上後高速艇を出したら直ぐに行動を開始せよ。吃水を見誤るなよ!!」
我々のような部隊は本来戦争開始前に敵国の要人を確保し人質を確保する事で交渉などを有利にする為に存在している...まぁすでに本土強襲部隊は敵本土向かい進行しているのだが、そうでもしなければ電撃作戦となっている此度の戦争が徒労に帰するということなのだろうか。
海面に浮上した衝撃を身体で感じ取る、それと同時に高速艇が展開され潜水艇上部のハッチが開くと乗員が素早く乗り移り行動を開始した。
それに遅れぬよう私も身を翻して最後の高速艇に乗り込み素早くハンドサインで出発を指示した。
「これより無線は閉鎖だ、定期報告にはコードを使った物のみ使用可とする。作戦成功時は高性能爆薬による主要施設の爆破を持って報告とする、では各員の奮闘に期待する。」
インカムからそれぞれの小隊長の「了解」の返答を確認して私も身を屈め空気抵抗を最小化し、高速艇の速度妨害をしないよう務める。
「ん?」
一瞬視界の中に海中を進む人型の様な存在を見た気がしたが...そもそもこちらは高速艇だ、最高速50ノット(約90km/h)にもなるこの速度に並走出来るような生物が存在する訳もない、ましてや抵抗の大きい人型であればそれは尚更だ。
気にする必要も無いし私は今回の作戦が失敗の許されぬと言う所から来る緊張による幻視だとして、その事を頭から振り払った。
「...?」
「どうした?」
不意に部下の数人が周囲を警戒する様に首を左右に振る、それに私含めた上官が確認を取る為に声をあげる。
「いえ...何か一瞬...影が射したような...」
「影?...まさか!!」
「っ!!回避っ!!」
操舵が焦ったように舵を切る、他の数隻も気が付いたのか左右にバラける様に移動を開始した。
その直後我々の進んでいた航路に、我々が何も考えずに直進していれば居たであろあその場所に大量の水柱が立ち上がった。
「射弾観測機だとぉっ!?」
なんてアナログな...レーダーによる距離計測とセンサーによる自動追尾と弾着が確約されている現代宇宙戦闘において、宇宙にすら上がれていない原始生命体の様な戦い方をするなど誰が予測出来るものか!!
コレを知っていたのはたまたま私がそう言った戦術が有ったと言うことを知っていたからに過ぎない、こちらは友軍のレーダー観測を期待できないが故に個人携行型のレーダーを持ち歩いてはいるがそれすらも掻い潜ったと言うのか!?どう言ったステルス性なのだ全く!!
至近弾や夾叉射撃こそとられるものの、流石に数十kmは離れた場所で直撃弾はさすがに厳しいか。
砲火による水柱こそ数多く立ってはいるものの、撃沈される友軍艇が無いのはいい事だと他の高速艇を勇気付ける為にも操舵に指示を飛ばして最後尾に居た私の乗る高速艇が最前に立ち引っ張るような形を取る。
「続け!!誘導効果のない砲撃などそうそう当たりはしない!!懐に飛び込みさえすれば...どうとでもなる!!与えられた任務をこなす、それだけの事だ!!」
閉鎖したはずの通信を自らが開き鼓舞する...なんとも間抜け極まる状況だがこの場合は致し方あるまい、蛇行しながらの接近はどうしても直進に比べて時間はかかるしそれに比例して友軍の心的疲労も増していくが...目の前で仲間が砕け散るよりはマシだろう。
「進め!!我々の作戦成功が祖国の勝利に繋がるのだ!!」
「オオォォォォォォォ!!」
士気はこれで限りなく最上に近い状態に戻すことができただろう、だが依然として敵は観測機を飛ばしているだろうし接近すればする程精度は上がっていく...こんな所でチキンレースをする事になるとはな!!
「良いか!!前方から飛んでくる砲弾に警戒しろ!!迎撃など出来んが目視で何かを発見次第即操舵に報告するのだ!!直進しか出来ん砲弾を可能な限り早く見つければそれだけ生存率は上がる!!」
高速艇前方に居る部下達が頭を上げて空から降り注いでくる砲弾を警戒する、操舵担当は警戒している部下たちを見て至近弾若しくは直撃の危険があると判断された物を即座に取捨選択し舵を切る事で直撃を回避する。
「この速度では...遡上開始まで50分はかかるぞっ...」
敵の目的がこちらの迎撃だとしても、この微妙な圧の無さはなんだ?まるで...こちらを囲い込む事に最も注力している様な...この心地悪さはなんだ!?
経験から来る違和感はかなりの精度を持っている事を私は知っている、先程の海中に見えた僅かな違和感がそれを余計に補足しているように感じたのかは分からないが、少し周囲を警戒しようと後方に目を向けた瞬間...私の乗る高速艇のすぐ後ろを進む高速艇が爆破炎上し、乗員達が海に投げ出された。
「何ィ!?」
あの爆発の仕方は...間違いなく魚雷による攻撃だ!!しかも着弾は高速艇の後方...つまり我々を後ろから狙っているという事だ!!
「ふざけるなよっ!!」
海中に見えたあの影はつまり...人型のように見えたそれは屈折による錯覚!!我々が前方にしか注意を向けていないと思って注意を逸らしていた後方からの包囲攻撃ではないか!!
「全艇散開!!後方に高速潜水艇が居る!!このまま密集していては各個撃破されるのが目に見えている!!」
目に見えない敵、目に見えない攻撃が恐ろしいと感じたのはいつ以来か...普段であれば我々がその側に立っていたはずなのに...それを受ける側になった時、私の背中には身の毛もよだつほどの冷や汗が流れていた事を...私は後になって気がついたのだった。




