溢れる醜い感情
クロードに抱えられて飛んで移動した為すぐにつたが、街の外れと言っても結構離れた場所に馬車は止められていた
そして少し前にもひと暴れしたリコ
リコはどうしても抱えられて運ばれるのはイヤ!とものすごく拒否したが、眉間にシワを寄せたクロードに無言で無理矢理腕を掴まれて抱き上げられた為、
逃げる事ができず大人しく持っていた荷物を胸に抱えて上空を移動した
お互いに口をきかないで険悪ムードのまま馬車の前につくと降ろされ、リコはクロードから逃げるように馬車に乗り込んだ
するといきなり扉を閉められて鍵まで閉められた
――どんだけ疑われてんのよアタシは…
抱えていた荷物置いて、窓から外を見ていると
クロードが連れてきた護衛兵や使用人達に何か指示を出していた
さっきまではパニックになってそれどころじゃなかったので何も考えていなかったが改めて久しぶりに見るクロード
――あー。最悪だ…
最近充実した平和な毎日で、アイツの事なんかすっかり忘れてたのに…
蓋をしていたはずの気持ちがざわつく
足元が隠れる裾の長い黒の民族衣装のような服に、大きな黒いローブを羽織り
大きく開かれた胸元から引き締まった体が見えた、首元にはシルバーの大ぶりの首飾りをして手元にはシルバーのリング、バングルをしていた
そのアクセサリー達にはすべて神力が込められた綺麗なブルーの魔宝石が埋め込まれていた
顔まわりの顎あたりまであるサラサラの黒髪はおろしていて、後ろは細く一本に縛られている髪
綺麗な白い肌にブルーの瞳に整った顔
リコは久しぶりに見るクロードをいつのまにかじっくり観察してしまった
――相変わらず…黒髪碧眼で随分と完璧なお姿なことで…
まぁ、けど性格最悪だからね!惑わされちゃダメ!
アタシに思わせぶりな態度とっといて第四皇女が好きな最悪男だからね
ひっかかるアタシも馬鹿だけど、面白がってかなんだか知らないけど変なこともしてきたし…
まぁ、従者の契りなんてややこしい契約があるから、クロードはアタシに必死になるし、そばに置いときたくかってるだけだし
それじゃなきゃ連れ戻しなんて来ないし…
もうこれ以上傷つきたくない。従者と主人としてそれ以上の感情を抱いちゃダメだよ…リコ
全部なかった事に……
窓の縁に肘をついてぼーっと見ていたら、リコのその姿をパッと振り返ったクロード見て
目が合う二人
――急にこっち見んな!!あんな集中して仕事してたじゃん!!気づかれる事がないと思ってガン見してたのに…///
クロードが馬車に乗るリコに歩み寄る
パッと下を向くリコ
「さっきから視線を感じて仕事がしにくいんだが?」
窓を開けてリコの顔を見てフッと鼻で笑い言うクロード
「なっ!!///全然見てないんですけど!自意識過剰なんじゃないの!?///」
――嘘でしょ?!///いつから気づいてたの!?最初から気づかれていたなら死ぬほど恥ずかしい!!///
「俺がお前を気にかけないわけないだろ、近くにいれば何をしているか把握している」
当たり前のように言うクロード
――そういうの!!そういうのが本当にイヤ!
わかってるのにドキッとする自分も本当に嫌になる…
アタシの執事だから、従者だからだからこれは…
リコはクロードの顔を見ないようにグッとこらえた
「もうすぐ出る、大人しくしていろ」
うつむくリコの頭を優しく撫でて
窓を閉めていなくなった
――だ、ダメだアタシ…気付いちゃったから…自分の気持ちに…アイツの顔が見れない…
考えないようにしてたのに、忘れてたはずなのに
なんにも忘れられてないじゃん。
「ははっ、」
思わず自分に呆れて笑うリコ
――本当に呆れる。あんな最低男でしかも背中から翼が生える異世界の男だよ?
好きなる意味がわからないのに…
アイツの落ち着いた声聞くだけでドキドキするし…
触れられると心臓がバクバクうるさいし…
ダメってわかってるのに…諦めたはずだったのに…
グッと着ていたシンプルな庶民ワンピースの裾を掴んで苦しくて切ない気持ちになるリコ
ガチャッ
心の準備もままならないままクロードが馬車に乗り込んで来た
クロードの合図でゆっくり馬車が動き出す
――あわよくば違う馬車に乗ってくんないかなって思ってたけど…そうはいかないよね…
って、
「えっ……」
驚いて思わず声が出るリコ
クロードが向かい側の席ではなくリコの真横に座った
そして、なぜかぴったりとくっついて座るのでリコは少し窮屈になる
「ねえ、狭い!!///あっち座ってよ!なんでわざわざアタシが座ってる狭い方にくんの!?///」
バッと横見て文句を言うリコ
――こっちの気も知らないで好き勝手してくれんじやんよ…
ドキドキしながらイラッとするリコ
「どこに座ろうが俺の勝手だ」
腕と足を組んで堂々と言うクロード
――ち、近いんだって!!///左半身が全部クロードくっついてる!!つめて距離とりたくてもアタシ隅っこに座っちゃったからこれ以上動けないし…
あーもうほんとイヤ。ドキドキするな、落ち着けアタシ。いつも通り、いつも通り…
「勝手だけどもっと広い馬車を有効活用できないわけ!?この馬鹿!」
いつものように言い合いになりそうだったが…
「その前にお前は俺に言う事はないのか?」
クロードが横にいるリコを見て静かに言った
「ある!!近寄るな!あっちいけ!狭い!馬鹿!」
クロードに向かって子どものような悪口を言うリコ
グッとクロードの大きな手がリコの顔を掴んだ
「相変わらず減らない口だな…」
フッと何故か優しく笑うクロード
少し懐かしむような、少し嬉しそうな優しい表情から目が離せないリコ
――っっ…///
その珍しく優しい表情に蓋をしていた気持ちが溢れ出しはじめた
「は、なっへ!///」
顔を掴まれてうまく喋れないリコがクロードの手首を両手で掴んで剥がそうとする
「本当にお前に甘いな…俺は。これも従者の契りが結ばれているからなのか?」
クロードがリコの顔をジッと優しく見つめて呟く
――人の顔を掴んで言う言葉か!どこが甘いわけ!?
「お前を見つけたら、泣かすほど叱って反省させてやろうと決めていたのに…目の前にいるだけで怒りを忘れるほど安心するとは…」
――や、やめてってば…///そういうの…
自分の気持ちに気付いちゃったアタシはアンタの言葉ひとつで簡単に浮かれて、嬉しくて嬉しくて胸が苦しくなるんだってば…どうしてそういう事簡単に言うの?人の気も知らないで
クロードのこの言葉に深い意味なんてなくて、違うってわかってる。
だって、コイツには第四皇女様がいるんだから…
「ほら、まず俺に謝れ」
子どもの相手をするかのようにわざと優しく言うクロード
「や、らっ!」
素直になれなくて暴れて拒否するリコ
「お前がいなかった約1ヶ月間、俺はどんな思いで城にいてどれだけお前の事を探してた思う?過労で倒れたんだぞ?」
と言うわりに何故か楽しそうなクロード
「うっそら…」
――え…うそ…そんなに心配してくれてたの…?
いやいや…まさかね…
「お前が安心して城に戻れるように誘拐した犯人を捕まえて、その他の時間はずっとリコを探し、右大臣の仕事もこなしたらそうなるだろうな」
「…………」
――確かに、もしそれが本当なら忙し過ぎて倒れちゃうかもしれない…もしそうだったら…
「ごめらひゃい…」
クロードに顔を掴まれていてうまく話せないリコ
「ん?なんだ」
顔を傾けてしおらしいリコの反応を楽しむクロード
クロードの手が緩んだので無理矢理引き剥がすリコ
「だから!もしそうだったらごめんって言ったの!!」
少し怒りながら言うリコ
「嫌だ」
クロードが自分の膝に肘をついて、なんとも楽しそうに意地悪く笑いリコを見る
その表情ににドキリと心臓が跳ねる
「は!?///なんで素直に謝ったのに許してくんないの!!」
「お前のせいで散々な目にあったからな、もう振り回されるのはごめんだ」
――うっ……確かにクロードからしたら大迷惑かも…
アタシそういえば自分のことしか考えてなかった…
けど、アタシもクロードに散々振り回されたもん!
お互い様じゃない!?勝手なことばっかして…言って…アタシの気持ちを散々振り回してる!!
「それはお互い様でしょ!?」
リコがムッとクロードの横を無理矢理すり抜けて向かいの席に座った
腕を組んで足を組む態度のでかいクロード
それに対抗するようにリコも腕を組んで足を組み偉そうに座る
「ほう、俺がいつお前を振り回した?何か迷惑をかけたか?」
不思議そうな顔で聞く
――は!?少しは思い当たる節ないわけ!?全部なんとも思ってなくてキスとか変な事言ってきたわけ!?
それだったら本当にムカつく。この際だからわからせてやる
「アタシはクロードのものとか言っちゃって、本当に自分のものは第四皇女でしょ!?デレデレしちゃって!!このチャラ男!!最低!!大してカッコよくないのに調子乗んな!!」
ムカついて少しでも攻撃したくて、カッコよくないとか思ってない事も言うリコ
「…チャラ男?なんだその言葉は。」
眉間にシワを寄せるクロード
「気が多いって事!!この女好き!!」
「ほう、それをお前が言うか、男好きのお前に一番言われたくない」
「はぁ!?アタシのどこが男好きなわけ!?」
余裕で挑発的な態度のクロードに対して、座りつつも身を乗り出して怒るリコ
「王の皇女でありながら、俺と契りを交わし、シアンとも随分と親しくして、アルに色目を使っているではないか?」
イラッとしながら鼻で笑うクロード
「はぁ!?別にアタシ王様と結婚するつもりないし!とりあえず身寄りがないから皇女になっただけだし!アンタとは意味もわからず契り交わさせられたんでしょ!?シアンはどっかの馬鹿執事がいなくなったから面倒見てくれてたんですー!アルとは最近全然会ってないわ!」
リコもイライラしながら全部言い返す
「よくも王と結婚する気はないのに皇女になったなどと言える…」
呆れるクロード
「王様だって、異世界から来たアタシが月の姫の可能性があるから置いときだけでしょ?お互い利害が一致してるからいいじゃん!アタシは元の世界に帰るまでお城で贅沢暮らしさせてもらいますぅー」
フッと悪い顔して笑うリコ
リコが元の世界に帰ると言った瞬間クロードの顔が少し怖くなる
「王を利用するとは…低脳なくせにそういう頭は働くんだな」
「はぁ!?まぢで失礼!!ムカつく!!そんな酷い事言ってアタシの事嫌いならもうほっといていいから!!いなくなっても探さなくていいんですけど」
ヒートアップするリコ
――アタシだって、そんな人を利用するような事したくないけど、仕方ないじゃん!!
お城に来てからずっと気にしてたよ…何もしてなくてタダメシ食べて…何も王様の力になれないし…
お城出たいからって手に職つけようと、ドレスデザインするとか言っても結局、王様の力で仕立て屋呼んでもらって…
久しぶりに会ったのに優しくしてくれないクロードに苛立つリコ
ふとクロードが第四皇女と幸せそうにしていた噴水での出来事が頭を過る
第四皇女と自分の扱いがあまりにも違くて、急に胸が苦しくなった
「大体ねぇ……第四皇女の事好きなんでしょ?」
――ダメ、ダメ…
「両思いなんだから、早く結婚すれば?」
――ダメ…止まんない…
こんなのただの僻みで、嫉妬で、クロードに対して溜まってた汚い感情垂れ流してるだけ…
「そして今すぐアタシの前から消えてよ」
フッと笑って言うリコ
――本当に可愛くない。最悪だよ、こんな自分が本当に嫌いだ。こんなんだからコイツにいつまでも冷たくされて、馬鹿にされて、女として見られないんだよ…
「いつ俺がラナの事を好きになった」
「ずっと前からじゃない?元婚約者なんでしょ?引き離されても忘れられなかったなんて、まぁ素敵な大恋愛な事で」
羨ましいと馬鹿にして笑うリコ
「別に俺は今も昔もラナを好きなった覚えはない」
真面目に答えるクロード
「王様に気を使ってるの?別にアタシは誰にも言わないし、主人に嘘つくなんて従者失格なんじゃない?」
――もういいや、もうどうとでもなれ…
アタシはコイツに嫌われる道を選ぶ、どう思われようがなんだっていいや…もう
傷つきたくないから…
「アタシ見ちゃったんだよね、噴水のところで嬉しいそうに笑うクロードと第四皇女様をね、キスまでして…見せつけてくれるじゃん?」
感情なく笑うリコ
クロードが少し驚いた顔をした
馬車がガタガタ音を立てながら進む音が静かに二人の間に響いた




