幸せな欲
リコは今日もテーブルの上に本をたくさん並べてぼーっとしていた
いつもと違うところは家にルイがいないということだけ…
ルイはあの体格もあってかすぐに力仕事メインの大工の仕事が見つかった
毎日、砂やら丸太やら石やら建設で使うものを運ばされてる
――そして今日も監禁…
ルイが絶対に誰も入って来られないようにとドアはまったく動かないし、家の前にはいくつもの大きな岩があって近寄れないようになってるとか…見せてもらったことはないけど…いくら力があると言え、普通はそんな事できるものなのか…
そこまでしなくていいって言ったのにそしたら仕事は諦めるとか言うから…
ルイが人と関わるせっかくのチャンスをアタシのせいで無駄にして欲しくないから承諾したけど
さすがに心配性過ぎるでしょ
しかも、ベランダまで封鎖されそうになって、さすがにアタシのお気に入りの場所だからそれだけはやめてとお願いして封鎖されずに済んだ
まぁ、ベランダ側は海が広がっていて人が入って来ることはないしね
そして、アタシはもう従者の契りを解く方法と元の世界に戻るのは満月の夜に絨毯に乗ってお願いするかしかないと探すのを諦めてかけていた
なんで満月に願えば叶うのかはわからないけど…
叶うのならそれでもういい…
とりあえず絨毯がきっと条件を知っているから
話はそれからだ
こっちの世界に来たての時に王様は絨毯と意思疎通ができるって言ってた…だからその条件を王様に聞いてもらって願いが叶って、そしたら全部丸く収まってパッピーエンド!!
もしかしたら今はないけど、願いが叶う代わりに大きい代償を払わないといけなかったりしてとか、不安な部分も勝手に妄想してたけど…
そんなことは考えてもしょうがない!!
暗い思考を追い払うように首を振り
ペラペラと目の前の本をめくった
・
・
その後…いつものように岩が動く音でルイが帰ってきた事に気づくリコ
――毎回毎回…大変そうだよね…
「リコ様!!ただ今戻りました!!」
すごく嬉しそうにいうルイ
「おかえり〜お疲れ様〜」
その顔に毎回癒されるリコ
仕事終わりは絶対に近づいて来ないルイはすぐさまお風呂場に向かった
――仕事終わりは土埃がたくさんついてるからって気にして、一息もつかずすぐお風呂入るんだよね…
しかも、夕食の支度があるからって急いで済ませるし…ゆっくりで大丈夫なのに…言っても聞かないんだから…
その後、ルイがすぐさま夕食を作り、今日の出来事や仕事の話を聞きながらのんびりご飯を食べた
ルイは人と関わる事が増えてから益々明るくなっていった
そして、夕食を済ませてソファでのんびりしてるリコの元に来るルイ
「リコ様、今日初の給料が出ましたので少しですがお返しさせていただきます。」
サッとテーブルにお金の入った袋を置くルイ
「えっ、初給料くらい自分で使いなよ!」
アワアワして言うリコ
――あんなに頑張って働いてやっと出た給料なのに自分の為に使わないなんて…悲し過ぎるでしょ!
「リコ様にお渡しする為に稼いだお金なので」
嬉しそうに言うルイ
「えっ、ルイはなんか欲しい物とかないの!?」
「欲しい物…欲しい物はないですね…」
考え込むルイ
「せっかく稼いだお金なんだから自分の為に使いなよ!前にも言ったでしょ?出世払いって、たくさん稼ぐようになってからでいいって!」
リコはルイが一人で働く事にとても喜んでいた
ルイは今まで自由に生きてこなかったせいか、歳の割に人生経験が無く、心配になるくらい純粋過ぎで…だから働く事はとてもいい経験値になると思っていた
そんなルイのやる気を削ぐような事はしたくなかった
「私はリコ様以外の人と関わるようになって少し変わりました。すべてリコ様だったらこうしてると思って行動して、良いことばかりなんです。もちろんの私のやり方悪くてたまに失敗する事もありますが、それも私にとっては大切な経験だとおっしゃってくださいました。なのでリコ様には感謝しかないのです。リコ様に受け取って欲しいです。」
嬉しそうに話すルイ
「えっ!!アタシなんかの真似したら失敗ばかりだよ!ルイが正しいと思ったり、こうしてみたいなって自分から思った事も大切にしてなよ!もちろん間違ってたらアタシが言うし、怖がらないで自分の気持ちも大切にしてみて欲しいな…だから、心を許せる相手にはたまには我儘言ったりしていいんだよ?」
リコは困ったように笑って話した
――きっと教えてもらってない事ばかりだから、身近なアタシの真似から入っているのだと思う…
ルイは我慢強くて優しいから、きっと我儘なんて言えない…自分の事を押し殺して相手を優先してしまう…
無理矢理そうさせられて生きてきたから…
前に仕事の話を聞いてて、ルイはうまい具合に仕事を押し付けられてる時があったり…悪くないのに怒られてたり…もちろんそれは違うって言って訂正したけど…そういう節がある
だから、時には自分の意見や気持ちを突き通さないといけないって、この初給料も自分で使いたい事があるならちゃんと伝えて、使わなきゃダメって教えてあげなきゃ
「我儘ですか…?」
ルイがジッとリコを見つめる
「そう、わがまま!本当はあるでしょ?」
ソファに座るリコがルイを見上げて優しく笑う
「前までは全て我慢させられて生きていました。自分の意見を発言する事すら許されず、ただ道具のように扱われ…けど、最近私は少し変わってきてしまいました…だんだん欲が出るようになってきて…それが正しいのか不安になります。」
困ったように話すルイ
「いいんだよルイ!それは自分を大切にしてる証拠だよ!自分にご褒美があるからこそ、頑張って生きていけるんじゃん!何もご褒美がない人生なんてつまらないし、少しくらいルイは欲があった方がいいよ!」
嬉しそうに話すリコ
「本当ですか?では、これからは欲を出していきます…もし間違ったりしていたら」
嬉しそうに笑うルイがなぜか座るリコに近づいてきたそして…
「たまには怒って下さいね、リコ様」
とルイが少し意地悪く笑った
見た事のないルイの表情を見てソファに座って固まったリコが
スッ
軽々と抱き上げられた
「えっ!?///」
気がつくとルイは真っ直ぐ立ち、リコは足が宙に浮いた状態で優しく抱きしめられていた
ギュッ
少し力を込めるルイ
「る、ルルルイさん!?///なにしてんの!?///」
顔を赤くしてパニックになるリコ
今みでルイからリコに触ってくることなんて絶対に無かったので驚きと密着する体の恥ずかしさでパニックになった
「大切な人とは抱き合うとと聞きました。なのでリコ様をずっと抱きしめてみたかったです…ですが…こんなに感情が高ぶるとは思っていませんでした…離したくなくなります…」
ルイがリコの首に顔を埋める
――っ///ち、近いよルイ!!///てか誰だよ変な入れ知恵した奴!!
いや、まって、勘違いしちゃダメだよリコ。
ルイのこの抱き締めるっていうのは、ハグってことで決して変な意味じゃないから!普通の家族とか親友とかにもする愛情表現だから!///
けど、なんか恥ずかしいんですけど!!///
「リコ様の細い体はあまり強く抱き締めると壊れてしまいそうですね…今までずっと我慢していましたが、リコ様が許してくださったので」
嬉しそうなルイ
――へ、変な伝わり方してるー!!///
欲ってそういう事!?何か欲しいものがあるとかじゃないの!?
いや、大丈夫。これはただのハグ。落ち着けアタシ
「ルイ、そろそろ離してはもらえないだろうか…」
「まだ嫌です。」
即答して更にギュッと抱き締める
――急にわがまま出してきた!ちょっと可愛いけども!さすがに恥ずかしい!!
「ちょっ、///いくらハグでも流石にこれは長過ぎる!!」
バタバタ暴れ出すリコ
「リコ様にずっと触れてみたかったんです。やっと叶いました…リコ様は夜の手伝いは必要なさそうだったので…奴隷としても触れる事ができず…」
――ん?んん?!何を言ってるのかなルイ君!?
「夜のお手伝いってなに…」
聞くのが怖いけど一応確認するリコ
「性欲の処理のことです」
「…………えっ。なに平然ととんでもないこと言ってんのルイ!!」
一瞬固まって驚くリコが更に暴れるがピクリとも動かないルイ
暴れたからか更に腕の力を強めて抱きしめて、更に近くなったルイの唇がリコの首筋にあたっていた
ピクリと反応するリコ
――ちょっと…///これはアウトでしょ!!
「ルイ、そろそろ離さないと本当に怒るよ!///」
アワアワしてリコが言うと
「申し訳ありません…」
シュンとして丁寧にソファにリコを下ろした
「不快でしたよね…」
落ち込んだまま立ち尽くすルイ
「…不快とまでは言ってないし!まだ怒ってないから!ほらルイも座って」
自分の横に座るように手ソファを叩きルイを座らせるリコ
――アタシはこのシュンと落ち込むルイに弱いんだってー!!怒りたくても怒れなくなる…
って、ちょっと待ってそれどころじゃなくて!!
とんでもない爆弾発言したじゃんよこの人!!
この純粋さからそんな大人の行為なんて未経験ですっみたいな雰囲気出しといて性欲の処理とか言ったよね!?どう言う事!?
「ルイ…話したくなければいいんだけど…さっき言ってたのは…」
リコがおずおずと聞く
パッとリコを見てルイがうつむいて話し出した
「よくジャージルの妻や何人もいる娘達にやらされていました…その時は触れたいとも思いませんし、ただただ不快で言われた事をこなすだけで…それもあって私は奴隷なのにしっかり食事を与えられ、痩せ細ってはいなかったのです…もちろん護衛という事もあって体を鍛えさせられていましたが…」
静かに話すルイ
――そんな…酷い。ルイが可哀想…。
なんて恐ろしい家なの…
旦那は道具のよう扱い…妻と娘達はそんな仕打ちを…
それに、ルイは良い体してるし…顔も整ってるしね…
それは人に心を閉ざすよ!最低だよ。どこまでしてるか知らないけど、相手の気持ちも考えずそんな事して。
落ち込んだ様子のルイを見るリコ
――もしかして、アタシが聞いたから嫌な事思い出せちゃったかな…
「ルイ、ごめんね?変なこと聞いて…嫌な思いしたよね…」
ソッとルイの腕に手を置いて、うつむくルイの顔を覗き込むような体制で言うリコ
「いえ、嫌な思いなどしていません。それよりもリコ様に私と同じ不快な思いをさせたかと思うと…先ほどの行動に後悔しかなくて…」
「えっ、そっち?」
驚いて思わずツッコむリコ
「ルイ、さっきのは全然大丈夫だから、ハグって言って仲良い友達とか知り合いとかに挨拶でしたりするし!」
慌てて励ますリコ
「そうなのですか…?私とリコ様は親しいですか…?」
顔を上げて不安そうにリコを見る
「もちろん!!だから全然平気!!」
「リコ様が不快に思っていなければ良かったです、それに親しいと言っていだけてとても嬉しいです。」
嬉しそうな顔をするルイ
「そりゃ、毎日一緒にいるんだもん!仲良しだよアタシ達は!」
二人で顔を見合わせて嬉しそうに笑った
二人にとってとても暖かい時間が流れた…
「アタシもお風呂入ってくるね」
ルイがさっきお風呂の準備をしてくれてたのすっかり忘れてて思い出したよう言うリコ
「はい」
ルイも立ち上がった
リコがルイの横を通り過ぎると…
「リコ様」
背中きら嬉しそうな声がして振り返ると
「ハグは挨拶ならば毎日できますね」
少し頬を染めて嬉しそうに笑うルイがいた…
――アタシはこれから毎日あの褐色肌イケメンの逞しい腕に抱きしめられる事になるかと思うと…
…………心臓がもたねーわ!!!
そう思って余計な事を言った自分を恨み
「そ、そうだね!」
無理矢理笑ってお風呂場に入った




