貴方の為の自由
カランカランっ
リコが持っていた荷物が地面に散らばる
リコは驚いてルイと呼ばれる体格の良い男を見る
そして命の危機を感じて自分の首に回る大きな手を両手でで掴み暴れた
「な…んでっ…」
グッと手に力が入り上手く声が出せないリコ
「ぐっ…」
苦しむリコの顔を見て、男は更に苦しそうな顔で耐えるように声を出しなんとかリコに回る手の力を緩める
――どうしてこの人はこんな事するの!?さっきまでアタシの事庇おうとしてくれてたのに…
けど、この人もすごい苦しんでる…もしかして、あのおじさんに魔力で操られてるのかもしれない…
リコは掴まれた手から逃げようと抵抗する
「ジャージル様…おやめ…ください…この方は…関係ないです…」
ルイは苦しそうに途切れ途切れに話す
「黙れ!!お前は私の道具だ!!道具が私に意見するな!!私が殺せと言っているのだ、早くしろ!!何故そんなに時間がかかる!!」
ジャージルと呼ばれる偉そうな叔父は怒鳴りつけ、かざしていた手に力を込める
魔力を強めてルイの体を更に蝕んだ
「ぐっ…あっ…!!」
ルイの首や手首、足首についた鉄の輪にはめ込まれていた薄紫の石が光り出す
「っ…!!!」
リコは急に思い切り首を絞められて小さな悲鳴を上げる
――もしかして…前にクロードが言ってた…魔法石…?魔力で体を操られているのかもしれない…
今はそれどころじゃない…苦しい、息ができない…このままじゃアタシ死ぬ…
ダメダメダメ!!それだけはダメ!!
アイツは助けに来てくれないし、自分で何とかしなきゃ…けどどうやって…
嘘…アタシ死ぬの?それだけはそれだけは絶対にダメ…死ぬならアタシだけにしてよ!!アイツは…
クロードだけは絶対にダメ…!!!
あまりの苦しさにと思い浮かぶ顔にポロッと涙が流れルイの手に落ちた
手にかかる涙にピクリと反応してルイの手の力が少し緩む
「やめて!!!アタシだけの命じゃないの!!!」
ルイを真っ直ぐ見て泣き叫ぶリコ
「貴方はこんな事する人じゃないでしょ!?なんで言いなりになっているの!?しっかり自分を持って!!」
泣きながら怒るその姿を見て
「初めて救ってくれた恩人を自分の手で殺すわけにわ…」
ルイは自由の効かない自分の体に言い聞かせるように苦しそうに言葉を放つ
「貴方は優しい人でしょ!!人を傷つけたりしない!!そうでしょ!?」
苦しそうに泣きながら叫ぶリコ
――さっきだって、自分が水を奪ったからアタシは関係ないって庇ってくれようとしてた…優しい人でしょ!?
ハッとして真っ直ぐなリコの目を見るルイ
ゆっくりと魔力に抵抗するように手に力を入れてリコの首から手が離れた
その場に座り込み苦しそうに首を抑えて咳き込むリコ
リコの苦しい悲鳴と強い思いがルイの体を動かした
「嘘だ…何故だ…何故、魔法道具が機能していない!!お前は俺の奴隷だぞ!?主人にの言う事を聞け!!」
信じられない光景を見て更に癇癪を起こし怒鳴るジャージル
ルイにかざす手にまた力を入れて魔力を込めるが…
ルイがジャージルと向き合いリコを庇うように背を向ける
「この人を……傷つけるな!!」
リコからは見えていなかったが、ルイの瞳がキラリと光った
バキッ!!!!
ルイが全身に思い切り力を入れて手首と足首の鉄の輪を粉々に砕いた
「嘘だ……代々我が家に伝わる…魔法道具が…壊されただと…相手の自由を我がものにできるはずなのに…何故だ…」
恐怖と絶望から足の力が抜けて立てなくなったのか後ろに倒れるかのようにドサッと音を立ててその場に座り込むジャージル
「二度とこの人に近づくな」
ルイは首についていた鉄の輪も両手で思い切り引っ張り壊して外し
カランッ
ジャージルの目の前に放り投げた
「貴様!!お前のような奴隷がこれで自由になれたと思うなよ!!奴隷は一生奴隷だ!!」
ジャージルは叫び声を上げ、目の前の壊れた魔法道具を持って逃げて行った
ドサッ
力尽きたようにその場に膝をつくルイ
「大丈夫!?」
リコが駆け寄ると
「嘘だ………」
信じられないと両手を震わせて鉄の輪がついてない自分の両手を見るルイ
「何を使っても…何をしても外れなかった魔法道具が…外れるなんて…」
「自分の力で外してたね」
「私の力…」
不思議そうに言うルイ
「そうだよ!バキバキって!貴方には本当はとんでもない魔力があったんだね」
リコはさっきの光景を見て普通の力じゃない特別な魔力だと思った
「私は王族でも貴族でもありません…そんな魔力が宿るわけが…」
頭がついていかないのか言葉に力がないルイ
「まぁ、とにかくお互い無事で良かったし、アタシの事殺さないでくれてありがとう、アタシの言葉を聞いてくれてありがとう」
リコが優しく隣で笑う
その笑顔に泣きそうになるルイ
「大変申し訳ございません!貴方を殺すつもりは無かったんです!私を拘束していたあの鉄の輪は主人の魔力を込めると自由が効かなくなり、首や手首足首が締まるのです!だから!!」
必死に説明するルイ
「わかった、わかったから落ち着いて、私はこうやって生きてるし、その話だと貴方はもう自由の身だし、よかったじゃん」
ニッと笑うリコ
「やはり…女神様…なのですね…」
静かに言うルイ
「いや、だからそれやめて!女神じゃなくてアタシはリコって…」
ハッとして思わず口を抑える
――つ、つい、名前を言ってしまった!!
珍しい名前だから第五皇女と一緒なんて思われてバレたらどうしようとか色々考えて誰にも言わないつもりだったのに!!!
「リコ…様、リコ様と言うのですね、私はルイ・アルドと申します。ルイとお呼び下さい。」
ルイがサッとリコの前に片膝ついて頭を下げる
「よ、よろしくルイ…….」
――んん?!ちょっとまずくないかこの展開は…知り合い作って大丈夫かな…
ま、まぁなんとかなるか!!これ以上余計な事を話さなければいいし!!
「というか、跪かなくていいから!顔上げてよ!」
「そういうわけには…」
不思議そうに膝はついたまま顔を上げて聞くルイ
「むしろやめて!立って!!」
「リコ様は奴隷の私に水を与えて下さったり、他の方と同等に扱おうとしてくださったり本当に心が広い方なのですね…」
スッと立ち上がるルイ
――随分と虐げられてきたのか、奴隷根性みたいのがすごい…てか奴隷とか許されてるのこの国は!!王様は何してんのよ!そんなのダメに決まってるでしょ!
「ねぇ、ルイはさっきの…なんだっけあのおじさん…ジャージルだ!ジャージルのとこにまた戻るの?」
リコが不思議そうに聞く
「いえ、もう二度と戻りたくありません…魔法道具が外れた今、戻る必要もありませんし…」
思い返すように静かに答えるルイ
「じゃあ、もうルイは自由の身だし!!自分の事奴隷なんて言っちゃダメだよ!!」
リコがバシバシとルイの肘を叩くいて笑うと
何故か
ポッと顔を赤くして叩かれた肘を抑えた
「女神に…触られました…///」
呟くルイ
「だからやめてって、その女神って言うの」
反応に困って突っ込むリコ
――話が噛み合ってないし!
しかも、なんで嬉しそうに若干照れてるの…
「申し訳ありません、リコ様」
シュンと落ち込むルイ
「いや、別に怒ってはないからね」
――ルイは感情の落差がすごいな…
リコは落とした荷物を拾い集める
幸い買ったものは少し汚れてるくらいで全て無事だった
ほぼルイに拾われたけど…
「私がお持ちします。」
リコが両手で必死に運んでた重い荷物を軽々と片手で持つルイ
「ありがとう!じゃあお言葉に甘えて途中まで持って貰おうかな!重過ぎて全然家までたどり着けなかったからさ」
はははって笑って言うリコ
「これが…重いのですか…リコ様は繊細なんですね…」
片手の荷物を見て驚いた声を出すルイ
「いや、ルイが力があるだけだからね」
――そんな筋肉あったら軽いでしょそんな荷物
リコとルイは家に向かって歩き出す
「ルイはこれからどうするの?」
ふと疑問に思って聞くリコ
「まだ何も決めてません…」
少し落ち込むルイ
「もう自由なんだから自分がやりたい事、好きな事をやっていいんだよ?そう思うと落ち込んでる暇なんてないよ!むしろ楽しみじゃん!!」
ニッコリ笑って励ますリコ
「自分がやりたい事…」
リコを見て小さく呟くルイ
長い前髪に隠れていてどんな表情をしているのかはあまりわからなかった
「そうそう!!決まったら教えてね!荷物ありがとう!ここで大丈夫」
家に続く長い階段の前で荷物を受け取るリコ
「リコ様、私はやりたい事が見つかりました」
急に真剣な声でリコの名前を言うルイ
「え!なになに!!」
リコが興味津々にルイを見る
「私はリコ様のお側にいたいです。そして貴方様をお守りしたいです。」
リコは目を見開いて驚く
「さっき会ったばかりで急にこんな事言われて、恐怖に感じると思います…私は操られていたとは言え、リコ様を殺そうともしました。」
リコは驚いたまま固まってルイの言葉を聞く
「ですが、この想いは本気です。貴方様を傷つけたくないという一心で今まで壊せなかった魔法道具を自ら壊す事ができ、自由を手に入れました。リコ様が下さった自由をリコ様の為に使いたいです。」
ルイが急な跪いて…
「救っていただいた私の命を貴方様に捧げたいです。」
真剣な強い声で深く頭を下げて言った




