月の贈り物
絨毯から降りる
「待って待って…まさか…海の見える一軒家ではないよね…」
リコは恐る恐る辺りを見渡す
薄暗い家の中は白を基調としたシンプルだけどリゾート感もあり広くて新しい綺麗な家だった
――人がいる気配はしないけど…まさか人の家ではやいよね…?
「絨毯…やばいよ…怖いから一緒に来て…」
絨毯がリコの後ろについていく
カーテンが閉まっているので恐る恐る開けると…
「う、海だ…」
大きなガラス張りのドアから静かな夜の海が見えてバルコニーもついていた
リコはバルコニーにで夜風に当たりながらバルコニーの柵に肘をついて
海の上で遠くで光る満月を見ながら…
「完全にやっちまった…」
遠い目で静かに呟く
――月の位置的に全然違う場所に来てるよね…これ…
しかも、海しか見えないし…砂漠見えないけどどこまでみたのアタシ…
絨毯がそっとリコの肩にかかる
「ねぇ、もししてアタシは月に願えばなんでも叶う力でも持ってるの?」
絨毯の角がブンブン左右に揺れて否定する
――すごい全否定じゃんよ…
「ちょっと試してもいい?絨毯に乗って月に願えば叶うのかもしれない…」
絨毯にまた乗せてもらい月に向かう為、静かな夜の海が広がる空をを飛んだ
後ろを振り返ると砂漠が広がっていたのでまた違う異世界ではなく、同じ世界の違う場所に来たのだと考えるリコ
さっきよりは遠いけど月の前で…
――さっきまでいた元の場所に戻りたい!!!
目をつぶって強く祈って見たけど…
「だ、ダメだ…」
変わらず月の前にいるリコと絨毯
――さっき祈った時よりも全然月が小さい…もしかして…月との距離が遠いからダメとか?さっきと違うところはそれくらいなのに…
「ねぇ絨毯、さっきのお城の近くで見た月くらい近づける?」
ブンブン絨毯の角が左右に手を振るように動く
「だよね…やっぱり月の距離が関係してるよね…すごく近くまで満月が来た時に強く願えば願いが叶うのかな…」
絨毯の角が縦に頷くように揺れる
「えっ、本当に!?てかなんでそんなこと知ってるの絨毯!!」
バタバタ動くけどリコは何を伝えたいかまったくわからなかった
「何を言いたいのか全くわからない…とりあえず戻ろっか」
さっきの海の見える綺麗な一軒家に戻った
「今更だけど、この家誰も居ないよね…」
絨毯はコクコクと頷くけど、リコは不安になり家の中を見渡す
さっきバルコニーに出た時に思ったけど、
バルコニーにつながっているガラスは天井から床につくところまでガラス張りで景色がよく見える作りだった
その横に天蓋付きの豪華なベッドが置いてあってそこには夜なのに誰も寝ていなかった
大きな一軒家は1階建で広いダイニングキッチンに4人がけのテーブルと椅子
バルコニーにつながる大きな窓の前には天蓋付きの大きなベッドが置いてあり
その先にはL字に置かれた大きな白いソファに足の低いテーブル
白を基調としたリゾート感のある豪華な家だった
――何というお洒落で贅沢な家だ…
「これさ…アタシの願い叶ってるって事なのかな…?理想の家なんですけど…ここに住んでいいと思う?」
絨毯がコクりと頷くけど不安そうだった
「なんにも言わないで来ちゃったけどさ…絶対心配されてるよね…」
ブンブンと縦に揺れる絨毯
「けど帰りたくない!!アタシはここに住む!!!」
バッとびっくりする絨毯
「アタシお城には戻らないからね」
腕を組んでフッと笑うリコ
「せっかく願いが叶ったのに利用しないのはもったいないでしょ!こんな綺麗な家なのに!」
絨毯がリコの手を引っ張ってバルコニーに出ようとする
「帰らない!絨毯は戻っていいよ!無理矢理連れて行こうとするなら絨毯の上から飛び降りるから」
絨毯の動きが止まってパッとリコの手を離した
「ふふふっ!!この一軒家でのんびり幸せに暮らす!!」
両手を広げて家の中を見渡すリコ
絨毯は心配そうにリコに寄る
「大丈夫だよ!何とかなるって!アタシ元々は一人暮らししてたし!」
新しい環境に不安よりも楽しさに胸を膨らめ初めていた
「けど、みんな心配してるかな…王様は絨毯がアタシのところに行った事は知ってるの?」
コクコク頷く絨毯
「それじゃあきっと誘拐されたとかは思ってないから安心だね!絨毯と一緒に居なくなったからきっとどこかに出かけてると思ってるよね?けど、当分は帰らないからどっちにしろ大騒ぎかな…そうだ!!手紙を書こう!心配しないでね!って」
絨毯がフワリと浮かび上がって賛成する
「とりあえず家の中に何があるか見てみよ!」
生活に必要な家具系は全て揃っていたけど中身が何もなかった、食料とかはないし、クローゼットの中も空っぽで洋服とかもなかった…けど、
「え…すごい…」
豪華なタンスの引き出しを開けると大量の金貨とお札が入っていた
「こ、これ使って大丈夫なのかな…」
コクコクと絨毯が頷いた
「えっ、本当に!?」
絨毯がビシビシ月の方を指して次にリコを指す
「アタシの願いを叶えてくれたからいいってこと…?」
コクコク頷く絨毯
「なんかとても複雑だけど…このお金ないと今のアタシは生きていけないし…申し訳ないけど使わせてもらってダメだったらちゃんと返すわ…アタシはこれからドレスで一儲けする予定だし!」
えっへんと笑うリコ
そして、その後はリコは部屋の中をくまなくチェックして大きなベッドに入る
「絨毯も一緒に寝る?」
布団をまくって中に入れてあげるリコ
絨毯は喜んでリコの隣に入ってきた
「てか、睡眠って必要なの?」
首を傾げるような動作をする絨毯
「とりあえず、おやすみなさい」
リコはふっと笑って眼を閉じた
『頼むから俺の目の届くところにいてくれ…』
リコはふと、誘拐された時に弱々しくクロードに言われた言葉を思い出した
――心配してるかな…いや、してないか。それよりも幸せそうだったもんね…
噴水で第四皇女と嬉しそうなクロードの顔がまた思い浮かんでズキっと心が痛んだ
――もしかして、婚約し直したのかな…きっとそうだよね。嬉しそうだったしクロード…
散々アタシにも思わせぶりな事してドキドキさせといて!
勘違いして好きになったアタシの気持ちどうしてくれんだ…あの馬鹿執事!
アタシはもうあのお城には居たくない!!
本格的に帰る方法探して見つけて帰ろ!その前に従者の契りを解く方法見つけなきゃね…
大丈夫…なんとかなるよ。
明日からはもうお城の事は考えないようにして、アタシはカンザキ リコになろう。
新しいアタシの家で新しいマイライフがスタートするんだから!!
リコは不安を押し切ってギュッと目を瞑り眠りについた
・
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次の日…
明るい朝日が差して目が覚めるリコ
「お腹空いた…」
いつもだったら運ばれてくる朝食はもう出でこない
「絨毯!街に買い物に行こう!!」
バタバタ絨毯が嬉しそうにする
――アタシ何だかんだずっとお城に居たから外出るの初めて!!楽しみ〜!!
お金の使い方はお城で勉強したから大丈夫だけど…問題はこの服だよね…
完全に寝間着だし…しかも、お姫様感否めないフワフワな感じ…
靴はかろうじて履いてるものの…
スリッパみたいなサンダルだし…
とりあえずまず服から揃えて、食料調達、手紙も買って生活に必要なものをもろもろリストアップしよう!!
幸い、ペンとメモはあった為書き出していく
「アタシ街に出るの初めてなんだよね…てか、外に出る自体初めて…ドキドキする!」
リコは昨日の夜に絨毯と月の近くまで飛んだ時に近くに街があることに気づいていた
「って待って、王様に仕えてる空飛ぶ絨毯がいたら完全に驚かれるよね!?」
絨毯がリコの顔を隠すように頭から肩にかかり首回りで緩く端と端を縛る
「おお!ローブのフードみたいになってアタシを隠してくれるの?けどこんなゴージャスな柄の絨毯巻いて寝間着ってかなりトンチカンな格好…まぁいっか!」
リコは昨日見つけた家の鍵とカゴを持って家を出た
長い長い階段をひたすら降りる
――アタシの家だけの為にある階段だ…
リコの家の周りには何もなく、草が生えているくらいで斜面になっていってた
階段を登り終えると
「うわぁ…!!すごい!」
大きな一本道を両サイドに沢山の出店やお店があって、商店街のようになっていた
「エジプトとかそういう街並みみたい!!映画とかよく見る綺麗な街並み!!」
丸みを帯びた屋根や黄土色のレンガや壁でできた建物、明るい布を屋根代わりにして出してる出店など人が賑わっていた
「待って絨毯…大変な事に気がついた…」
リコの顔周りにある絨毯が少し揺れる
――アタシってばお城育ちだから絶対に肌を焼くなって言われてたし…それに元々、お城から出てないから焼けてないんだよね…目立つよねこれ…
街の人はみんな肌が黒く焼けていた
この国は太陽の日差しが強い為、外で働く人はみんな焼けてるけどそれは働き者の証拠で肌が焼けている事が愛されていた
逆に、お城に住まう人達は城の中で生活している事を誇りに思い焼かない事がステータスとされていた
貴族達も王宮の人達に憧れて肌を焼かない人が多いとか…
――前に侍女のアン達から聞いたけど、肌が白いのはお姫様必須条件とか言ってたわ…アタシ元々そんな色白じゃないし大丈夫かな…いや、周りと比べたら白い方だわ。目立つ前に買い物を済ませよう!!
まず、洋服屋を探し回り…
案の定リコは変な格好をしていた為かなり目立っていた
いい感じのたたずまいの洋服屋を見つけた為何着か試着し何枚か購入した
衣類系で必要なものは全部揃っていた為一通り買い占めて
「これはそのまま着ていってもいいですか?」
「もちろんです!!お客様!!」
久しぶりの大口のお客さんだったのかリコは定員にかなり気に入られた
街の人たちが着ていそうなクリームぽい色の麻のような軽くて柔らかい素材のロングワンピースに着替えた
――民族衣装ぽい刺繍がたまんないね
胸元から足元にかけて中心にゴールドの刺繍が入っていた
洋服だけでかなりの大荷物になってしまった為、今日の分の食事とレターセットを買ってすぐに帰った




