悲しみランデヴー
――失恋をしたんだ。
こんなに好きになってしまった相手に…
それがこんなに辛いものだとは知らなかった。
相手は非の打ち所がないないお姫様で敵うわけなんてなくて…
というかクロード自体アタシが手の届くような存在じゃなかったよね…
なんかもうアタシ、ボロボロだよ…
「シアン…っ。ありがとう…もうだいぶ落ち着いた…」
泣きながらシアンから離れるリコ
「どこが落ち着いているのですか…」
心配そうに見るシアン
「ねぇ、アンタはいつからそんな優しくなったの?キャラ崩壊してるよ、シアンの言う通りもっと早くクロードから離れてれば良かった!!」
なんとか元気に見せようといつものように悪態をつくが、落ち込んだ顔で無理して笑うリコの表情は切なかった
「私はクロードの横に立てる女はこの世にいないと思っています、ですが…第四皇女のように腐った女が隣にいるのなら貴方の方まだマシだと思います。」
シアンがリコの涙を優しく親指で拭う
――安定のクロード愛…
「ねぇ…それ慰めてくれてるの?それに、第四皇女様が腐ってるって…あんな完璧な美女が腐ってるわけないでしょ、しかも頭が良いんでしょ?尚更クロードとお似合いじゃん」
何度も流れる涙を拭ってくれるシアンがなんだか優しくて少し笑顔になるリコ
――【知性があり美しい者】そう言われて王様に選ばれている第四皇女様だから…国をまとめている頭が切れる右大臣様とは大変よくお似合いかと…
「知性?悪知恵の間違いですよ。あの様子をリコに見せる為に随分と手の込んだ事をしている、侍女の配置から私達の動ける時間の把握、クロードの呼び出すタイミング、掘り起こせばいくらでもあります。いつから考えていたのやら…性根が腐っている…気持ちが悪い。」
軽蔑して嫌そうな顔をするシアン
「なので、貴方がそんなに気にする必要はありません。二人の自然な行動ではなく、わざわざ変なものを見せられたと思っていなさい。」
「けどシアン…たまたまでもなんでクロードの顔が嬉しそうだったの…だから、そういうことだと思う…シアンも見たでしょ?」
諦めたように笑うリコ
「それは…」
シアンも見ていたのか何も言えなかった
そのかわりに服の袖でゴシゴシとリコの顔を拭く
――前にちょっと服が汚れただけで嫌がるくらい、潔癖症なところがあるのに…アタシの涙そんなゴシゴシ拭いてくれて…
「ありがとうシアン。一人じゃ耐えれなかったけど、シアンがいてくれたからもう大丈夫だよ!!」
リコは精一杯の笑顔で笑う
「お腹すいた!!」
もう何も考えないように違う話題にするリコ
「そうですね…夕食にしましょうか。」
シアンもそれに合わせて夕食を取りに行ったと思ったらリコを一人にしないようにかすぐに戻って来た
少しすると使用人が夕食をテーブルに並べてくれて、シアンと向かい合って夕食を食べた
「リコ…勝手に消えたりしないでくださいよ」
急に食事を口に運びながら言うシアン
「えっ、なんで急に」
少し驚いてシアンを見る
「今の貴方は今にも消えてしまいそうです」
心配そうにリコを見るシアン
「はははっ。最近よく一緒にいるだけあってよく分かってるね、あながち間違いじゃないよシアン…」
力なく笑って静かに言うリコ
「ほんと、消えちゃいたい。このお城から居なくなりたいよ…ねぇシアン、アタシの事早くお城から追い出してよ」
ふっと笑うリコ
――ここにいたらクロードの事を忘れたくても忘れられないし…辛いだけだよ…
「貴方の事は追い出すつもりだったのに…何故でしょうね。居なくなると思うと退屈な気がして…」
シアンが静かに言う
「そして、貴方の苦しむ顔を見て。私以外が苦しめるのは納得いかなくて、早く立ち直って欲しいとも思いました…」
「いや、シアンも苦しめるのをやめてよ」
真剣に話すシアンにすかさず突っ込みを入れるリコ
――アタシが居なくなるは少しは寂しいと思ってくれてるのかな…
けど、それでも…
「シアンがダメなら直接王様に言うからいい」
リコはきっぱり言い切った
持っていたナイフとフォークを置いた
――クロードを好きって気づいて全部わかった。
アタシ、ダラダラ此処に居た理由も何も行動に移せてなかったも全部全部…
アイツと離れたくなかったんだ…
だから、帰る方法も従者の契りを解く方法も全然見つけようともしないし、見つける見つけるって口ばっかで…何にも行動に移してなかった。
けど、今はもう違う。
心の底からここから出たい。
アイツに会いたくない。顔ももう見たくないんだよ…
早く忘れて元の世界に戻りたいの。
あの思わせぶり女ったらしキス魔男なんてもう…
会いたくない。
正直、自分が好きになってしまった人を自分で悪く言うのは悲しいよ…
けど今の自分には相手を悪く思って恨む事で離れる事しかできなくて…
綺麗な思い出にとかそんな余裕なんてなくていっぱいいっぱいなんだよアタシ…
ダッさいなぁ…アタシ…
「王様にお願いしてみる。まだアタシを襲った犯人捕まってないんでしょ?そしたらまた襲われるかもしれなくてお城にいるのが怖いでもなんでも言って出て行く」
リコは真っ直ぐシアンを見る
「貴方一人で何ができるのですか?」
シアンもハッキリと言い切った
「アタシが死んだら困るでしょ?右大臣が死んじゃうもんね、だから脅させてもらうよ。何不自由ない生活できるような家を城から離れたところに準備してくれって」
ふっと笑って言うリコ
「シアンも協力して欲しい。本気で探すから…従者の契りを解く方法、アタシも元の世界に戻りたしさ…王様を元に戻す方法はみんなで探してるんでしょ?アタシに協力できることがあったら協力するし…お願いシアン。」
リコが真剣な声でお願いする
シアンは黙ったままナイフとフォークを置いた
「いきなり消えるよりはマシでしょ?」
「リコ…貴方のその気持ちはどうなるのです?」
シアンに静かに聞かれて少し戸惑うリコ
「なかった事にするだけだよ、その為にここから居なくなりたいし…」
リコがうつむいて答える
「なかった事にできるんですか?」
シアンの言葉に何も返せないリコ
――できるよ…できなくてもやらなきゃダメ。辛いのは自分なんだから…
「と、とにかく!!前向きに検討をお願いします!!」
リコは明るく振る舞い夕食を食べた
・
・
その後シアンはリコが寝るまで部屋にいると言ったが無理矢理追い出して
リコはお風呂に入りベッドにいた
――泣き過ぎて目が腫れそう…今日はもう寝よう…何も考えずに…
そう思って目を閉じると…
コンコンコンコン
その音に驚いてリコがベッドから飛び起きる
「な、何!?」
――バルコニーのガラスの窓が叩かれる音…もしかして久しぶりにトトが来たの?
恐る恐るカーテンを開けると…
「絨毯!!!」
絨毯が嬉しそうに飛び回りバルコニーにいた
鍵を開けて窓を開けるとバッと中に入ってきてリコに飛びついた
「久しぶりじゃん!!どこに行ってたの!?王様が心配してたんだよ!?」
リコもぎゅーっと絨毯を抱きしめる
バタバタ動きリコを指す
「もしかしてアタシを探してくれてたの?」
リコは誘拐された時に絨毯も探しに行って帰って来なくなっと王様に言われた話を思い出した
抱きしめてた腕を緩めるとコクコクと頷く絨毯
「ありがとう絨毯!!なんとか無事だったんだよ!」
スリスリ擦り寄る絨毯
「ははっ、今日ね、すっごい悲しい事があったの、だけど絨毯が可愛いからなんだか元気出たよ」
擦り寄る絨毯を撫でるリコ
絨毯が心配そうに首を傾げていきなり…
「えっ、ちょっと待った!」
リコをサッと乗せて浮かび上がった
「どこ行くつもりぃぃぃい!!」
とんでもないスピードで外に出て夜空に飛び上がった
ある程度高く飛ぶとリコを乗せてゆったりと飛ぶ
「ほんとさっきは怖すぎて死ぬかと思ったけど…すごい綺麗…」
満点の星空に囲まれながらゆっくり飛ぶ
リコは絨毯の上に寝転び星を見上げた
「癒されるよー傷ついた心がー」
自然と笑顔になるリコ
「聞いてよ絨毯!アタシね失恋したの!!」
角がバタバタと動いて驚いたリアクションをする絨毯
「けど、絨毯がこんな綺麗な星空を見せに連れてきてくれて、こんなに広い空にたくさん星空が輝いてて、アタシの悩みなんてちっぽけに思えてくるよ」
キラキラ光る星達を見るリコ
「絨毯との夜デート最高ー!!」
と叫ぶとバタバタと喜ぶ絨毯
そして気がつくと…
「綺麗……綺麗な大きな月……」
リコは思わず体を起こして目の前の満月に見惚れる
「なんか思い出すね、絨毯があっちの世界に迷い込んで、アタシに出会って綺麗な満月を見せてくれてさ…綺麗な満月に祈ったら願いが叶うんだよとか言ってたらほんとに叶っちゃって…こっちの世界に来てさ…」
夜風が優しく吹いてリコのまた少し伸びた髪を揺らす
「また願い叶ったりしないかなー」
なぜかバタバタ暴れ出す絨毯
満月の真ん前で
「綺麗な海の見える一軒家で何不自由ない生活がしたーい」
と言いリコがボスっと絨毯に倒れ込んだ
絨毯は落ち着きなくバタバタ暴れていたけどリコは気に留めず
「なんか砂漠ばっか見てたからさー久しぶりに海見たくない?これがアタシの今の一番の願いなのーお城出たくてさ!」
はははって目をつぶって笑って
目を開けると……
「えっ!!!!」
夜空だと思って見上げるとそこには全く見たことない天井が見えて大きい声を出すリコ
「こ、ここどこ!?!?」
ガバッと起き上がって辺りを見渡すと見たことのない綺麗な家の中にいた




