白い羽根
ガタガタガタガタ………
「ん…」
頭をぶつけたような痛みを感じながら目を覚ますリコ
ハッとして目を見開く
――えっ……嘘…ここどこ!?
辺りを確認すると荷馬車のようで貨物がたくさん積まれていた
そこには人はいなく、リコと貨物だけがガタガタと揺れる馬車
リコは手と足に手錠がかけられ、手錠は鎖で繋がれ馬車に大きいな杭で打ち込まれて逃げれないようされていた
口も布で縛られていて声が出せない
――完全に…誘拐…
馬車の出入り口は布が被され明るい日差しがさしていた
――アタシ昨日の夕食前に変なお茶飲まされて倒れて…日が昇るまでずっと気絶してたんだ…
かなり時間が経っていた事がわかった為、同時にかなり移動している事を予想するリコ
――何これ…アタシ…どうなるんだろう…
皇女誘拐すると言ったらやっぱり身代金かな…
それとも異世界から来た情報がバレて珍しいから人身売買…?
怖い怖い怖い……
どうしよう…殴る蹴るの暴行されたりしたら…
不安ばかり頭をよぎり体に力が入らず怖くて震えだすリコ
ハッとしてリコは目を見開く
――馬鹿…自分の事しか考えてる場合じゃない
もしも…もしも殺す目的で誘拐していたら
クロードも死んじゃう…
更に不安と恐怖でボロボロ泣き始めるリコ
――何とかしなきゃ…捕まった時はどうにかして逃げる映画や漫画をたくさん見てきたでしょ
と思っていたら…
馬車が止まった
そして…
「おおーこれが第五皇女かー」
焼けた肌に目つきの悪い顔、ガタイのいい体は上半身裸で傷や刺青が体に入っていた
柄の悪い怖い男が馬車の出入り口の布を思い切りまくってリコを見た
怖くて震えるリコ
「茶色の髪に茶色の瞳か、珍しいけど酷く地味だな。まぁ、いい女には違いねぇ」
リコを見るなりニヤリと笑う
男を見て怖くて涙を流すリコ
手首と足首にされた手錠はしたまま鎖だけ外された
腕と足をロープで縛られ一切身動きが取れない
そのままその男に茶色の麻のような布でグルグル巻きにされて担がれた
――脱走する間もなく連れてかれる!!考えろ考えろ考えろ!!
リコはパニックになるけどで全く体を動かせないし、どんな状況かも布のせいでわからない
そんな中男達の会話が聞こえた
「上からは事故に見せかけて処理しろって言わされてるけどよ、第五皇女だぜ?金儲けに使えそうなのにもったいねえな」
「上から貰える金の金額で充分だろ」
――うそ…でしょ…
なんで、なんでアタシ殺されなきゃならないの……
事故に見せかけて処理って…アタシ殺される!!
アタシだけの命じゃないの!!やめて!!お願い!!
胸が締め付けられるように苦しくなりガタガタ体が震えボロボロ涙を流すリコ
「中々珍しい見た目で、皇女なだけあってかなり手入れの行き届いたいい女だったぜ、どうせ殺すならすこし味見してもいいよな?」
「けどよ、約束の時間があるぜ」
「少しくらい遅れても平気だろ」
「そうだなっ」
会話と足音から男は二人だった
楽しそうな男達の声がした瞬間頭が真っ白になる
――どうせ殺されるから楽しむって…
恐怖に絶望するリコの涙が止まった
ドサッ
思い切り地面に降ろされて布を引き剥がされる
「おーおー、確かに手入れの届いたいい女だ。肌なんてスベスベだし」
さっきの柄の悪い男と違って商人のような格好をしている細い男がリコの腕を触る
あまりの気持ち悪さに全身鳥肌が立つ
怖くて声すら出なくてひたすら震えるリコ
腕と足のロープを解かれる
「ささっと済ませようぜ」
息の荒い気持ち悪い男二人を見て絶望する
――人気のない路地裏で誰も来るわけがない…
日だってあんなに登って青い空が広がってる…
きっとかなり遠くまで連れて来られてるはず…
夜の時点で見つかってなきゃもうダメだ…
何してんの馬鹿クロード
ちゃんと、ちゃんと見つけてくれないとアンタの命まで無くなっちゃうよ…
ナイフでいきなりドレスを裂かれて上に身につけていた下着も胸の中心から縦に引き裂かれた
――その前にアタシ…犯される…
ガタガタ震え出すリコ
空見を上げると太陽が眩しい
この国では【太陽は人々を光へ導く神】として崇められていて、何かあると太陽にお祈りするのが風習になっているとお城で習った事をふと思い出した
お願い…お願い…
助けてクロード!!!!!
リコは太陽ではなくクロードにギュッと目を瞑り強く強く願った
――なんてね…アイツも神様の力宿ってるから願えば叶わないかなって思っちゃった…
叶うわけないよね……
ドレスを無理矢理脱がされている時に逆光で見えなかったけど太陽に一瞬何かが被った
その瞬間…
ハラリっ
――えっ……この羽根は…
リコの元に一枚の白い大きな白い羽根が落ちてきた瞬間
壁が爆発したような音と共にリコの両サイドにいた男達が吹き飛び壁にに思い切り打ち付けられた
あまりの衝撃の強さに一瞬で意識を失った
「リコ!!!」
神力を使った翼の生えたクロードが舞い降りた
――クロード!!!!
その姿を見て目を見開き嬉しくて安心してボロボロ涙が流れる
クロードが手錠を無理矢理魔法で壊し、口を塞がれていた布を解いて
リコを抱き上げて強く強く抱きしめる
「馬鹿!!遅い!!死ぬかと思ったじゃんよ!!」
うわぁ〜とボロボロと子どものように泣くリコ
「悪かった。遅くなって…」
クロードがリコの後頭部に手を回し撫でながら謝る
「アタシが死んだらクロードが死んじゃうんだよ!?なんでもっと早く来てくれないの馬鹿!!」
ボロボロ泣いて怒るリコ
自分のせいでクロードが死んでしまうと思うと怖くて怖くて仕方がなかった
「悪かった…俺はどうでもいいが、お前が傷つけられると思うとおかしくなりそうだった」
クロードが聞いたことないような弱々しい声でリコの肩に顔を埋めて言う
「うぅ…っ。怖かった…怖かったよ…」
グスグス泣きクロードの背中に回していた手の力を強めて更に抱きつくリコ
「すまなかった…」
クロードは悲しい声でリコを抱きしめ返す
「昨日の夜、変なお茶を飲まされてね、気絶しちゃったの…起きたら荷馬車の中でね、そしたらあの気持ち悪い男達が事故に見せかけて殺すって話してて…」
リコが一人で怖かった為、話を聞いて欲しくて話し続ける
クロードはリコをこんな目に遭わせた奴等に苛立ち静かに聞く
「怖くて怖くて…クロードまで死んじゃったらどうしようって、そしたらその前にこんなとこに連れてこられて酷い事されそうになって…」
クロードが怒りに震えて目を見開く
バッ
急に抱きついていたリコを引き剥がし
リコの体が傷つけられてないか確認する為に、足に腕を回しクロードの腕に座るような体勢になり、倒れないように背中を手で支えられた
「あっ…///ちょっと待って…///」
リコはとっさにほぼ見えてしまっている胸元を両腕で隠して恥ずかしそうにうつむいた
ドレスを引き裂かれて脱がされ、上の下着はナイフで切られてほぼ胸元が見えていた
下の下着は身につけていても薄いレースのパンツの状態で…
クロードはその姿を見て一瞬で深く眉間にシワがより、神力の金色の瞳の色が濁った
「殺す…」
リコは聞いた事もないようなクロードの低い怒りに満ちた声に驚く
急に片手で抱えられたのでとっさ胸を隠しつつクロードの肩に掴まるリコ
ゆっくりと歩き出しリコを拐った男達の元へ向かう
男達はすでに酷い状態で頭から血を流して気絶していた
その男達に向かって空いている片手をかざす
――まさか……魔法を使うつもり…?
「待って!待って!!これ以上やったら死んじゃうよ!!」
リコは驚いてクロードを止める
「お前を傷つけたんだ。生きる道などない。」
クロードは低い声で静かに言う
「確かに酷いことされそうになったけど、殺すまではしなくてもいいでしょ!!」
必死にクロードを止めるリコ
「生かす必要もない」
クロードは意識を失って血を流してる男達を見て言う
リコは別人のように冷酷で残酷なクロードを見て怖くなった
「やめて!!クロード!!アタシはクロードが人を殺すところなんて見たくない!!アタシの優秀な執事はそんな事しない!!」
リコがクロードの首に腕を回してしがみつくようにギュッと抱きつく
少し震えて抱きつくリコに気づき、クロードがハッとする
空いている手をリコの背中にそっと回した
「俺は主人を困らせてばかりだな…」
クロードが呆れて笑い悲しい声で言った
「アスファ様!!」
少し離れたところから近衛兵達の声がする
バタバタと足音がして近付いて来ていた
クロードの後を追っていた近衛兵達が続々と到着する
「ちょっと!待って来ないで!!///」
リコがほぼ裸の自分の姿を恥ずかしがって両腕で胸元を隠して縮こまる
「来るな」
クロードが凛とした声で言い
バサッ
リコをお姫様抱っこして翼で体が見えないように優しく覆った
「全員目を閉じろ、こちらを少しでも見たらその場で目を潰す」
クロードの恐ろしい声に近衛兵達が固まってサッと目を閉じた
「そ、それはやり過ぎ…」
リコが思わず呟いた
「死にかけている男2人を城に連れて行け」
一番偉そうな近衛兵に命令するクロード
「承知致しました!!」
近衛兵が目をつぶったまま返事をした
翼で隠しながらリコを抱えて近衛兵達の横を通り過ぎて行く
「酷い事をされそうになったと言ったが何かされたのか」
低い声で聞くクロード
「ドレスをナイフで切られたくらいだからとりあえず未遂…」
怒ってるクロードの顔を見て言うリコ
「怪我は」
「特にないよ…」
「体調は」
「別に平気…」
「頭痛とか吐き気は」
「ないよ、体調は大丈夫ってさっき言ったでしょ」
思わず笑うリコ
その後もクロードに運ばれながら、怪我や痛いところはないか、具合は悪くないかなど何度も何度も同じ事を聞かれて思わずリコは笑っていた
そして、クロードに抱えられたまま止められていた馬車に乗り込んだ




