最高の褒め言葉
次の日、今日は王様と面会の日だった
「リコ、シアンから聞いたぞ。服を作りたいと」
ソファに座る王様が楽しそうに聞く
「そうなんです!!アタシの元いた世界にあった要素とか諸々入れたりして、ついに噂の鬼才を発揮しますよ!王様!!」
向かい側に座るリコが目をキラキラさせて言う
「それは楽しみだ、その件承諾しよう」
優しく笑う王様
「王様〜!!!ありがとうございます!」
バッと立ち上がって喜ぶリコ
――純粋に嬉しい!!自分がやってみたい事でもあったから!!
「第五皇女、王の前で無礼ですよ。」
横に立っているシアンが笑顔で言う
「シアンもありがとう!!王様に言ってくれたんだね!!」
怒っていたのに拍子抜けするシアン
「軌道に乗ってきたら王様にとっておきの一着をデザインしてみせます!!」
リコは固く拳を握り王様を見る
「楽しみにしているぞ」
王様の横にフワフワ浮いていた絨毯が嬉しそうなリコに寄ってきて覆い被さる
「絨毯も応援してね!!」
バタバタと喜ぶ絨毯
その後も軽く世間話をして王室を後にした
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その後、リコは早速ドレスのデザインを始めた
紙にザッとイメージを何枚も書いた
シアンと話し合った結果、
この国でも有名な仕立て屋を城に呼んでリコのデザインしたドレスを仕立ててもらい、売り出す事に決まった
凄腕の仕立て屋はファンがついているのでその人が作るというだけで売れるらしい…
数日後、シアンが手配した仕立て屋と打ち合わせをすべく、客室でリコとシアンはソファに座って待っていた
手配するにも第五皇女がドレスを作りたいと言うと仕立て屋が殺到してシアンは大変な思いをしていた
「なんで私まで…」
とても嫌そうなシアン
「難しい話は全部シアンがするんだから当たり前でしょ!アタシはドレスを仕立て屋さんと考えるだけだもん!」
「それでよく仕事したいと言えましたね」
呆れるシアン
「難しい事は徐々に覚えていきますので…」
へへと笑うリコ
すると…
コンコン
「失礼致します。本日お呼び頂きました、ニーナ・ラチアダと申します。大変貴重なお時間を本日は誠にありがとうございます。」
入るなり深々とお辞儀をする仕立て屋
ニーナはウェーブしたネイビーの髪の毛をまとめて後ろで縛り、グリーンの瞳に透明な丸メガネをかけていた
「あー!どうぞどう…っつ!!」
明るい声でリコが立ち上がり言いかけるとシアンに思い切り引っ張られて座らせられた
「貴方には姫として品格はないのですか。こういう時は貴方は座ったままでいいのです。声をかけられるまで相手は顔を上げません。」
頭をずっと下げたままの仕立て屋
その後もリコが喋ろうとするとシアンが遮り
挨拶を済ませて仕立て屋は連れてきた従業員に何種類も布が入った箱を運ばせた
さっそく、リコは雑に書かれた図を見せながらイメージを口頭で伝えていき、素材を触りながら自分が考えているものに近いものを選ぶ
「第五皇女様…こんなドレス見たことがないです…これは革命が起きますよ!!!」
大興奮する仕立て屋を見て喜ぶリコ
――いや、元いた世界の時、映画とかで見てきたドレスをそのまま再現してるだけなんだけどね…
よくプリンセスが着てそうなウエストが締まってAラインのフワフワな奴とか…
内心複雑な気分になっていた
普段お城の中で着れそうなシンプルなドレスも何着か提案した
隣にいるシアンは金額や作成日数、次の打ち合わせなどを細かく決めていた
仕立て屋が帰った後、リコの部屋に移動した
「あ〜疲れた〜!!」
ドスっとソファに座ってくつろぐリコ
「意外にも事がうまく運び驚きました」
シアンがくつろぐリコを見下す
「まっ、一様前の世界ではそれなりに働いてたからね〜相手とやり取りするのは得意かも〜」
ソファの背もたれに両腕をかけて上を向いて言うリコ
「姫としては最悪ですがね」
その姿を見て呆れるシアン
「けど、シアンがいなきゃビジネスとしては成り立たなかったけどね〜助かりましたよ〜感謝してるよシアン君、まぁ座りたまえ」
リコが偉そうに言ってソファを叩き隣に座るように言うと
シアンが少し距離を取って座った
――えっ、アタシの隣なんて嫌がって座らないと思った…意外!!
もしかしてちょっとは心開いてきてくれてんじゃないのぉ〜
ニヤニヤしてリコがシアンを見る
何だかんだ言って最近はシアンと居ることが多かった為、もしそうだったらちょっと嬉しいと思うリコ
――けど、ちょっと調子狂うから嫌がらせしてみよ!
「スキありーー!!」
リコがふざけて隣にいるシアンの膝に飛び込んで
膝枕されてる状態でシアンを見上げる
――さぞ嫌そうな顔を拝める…
と思って見たら
ジーっと無表情でリコを見下していた
――あ、あれ…
銀色の髪がサラリと揺れてリコの顔にかかる
シアンの美しい無表情にグレーの瞳から目が離せなくなるリコ
「シアン…もしかして体調悪いの…?」
嫌がらないシアンを見て不安になるリコ
――お、おかしい…
「いえ」
無表情のままリコを見つめるシアン
――えっ…なんかいつもと違う…
リコが起き上がろうと思ったら
スッ
膝にあるリコの頭を優しく撫で初めた
「ちょっ///ちょっと待って!!///え!?嫌じゃないの!?」
シアンの嫌がらせに失敗して
急に自分がした事が恥ずかしくなってくるリコ
「嫌ではありません」
相変わらず無表情のシアン
リコの髪に指を通して優しく髪を触る
「疲れてるよシアン!!判断が鈍ってる!!もう今日は休んで!!///」
――アンタはこんな事するキャラじゃないでしょ!?逆に優しくされると怖いわ!///
「貴方が月の姫なのですか…」
リコの髪の毛を触りながら考え込むようにぼっーと言うシアン
「えっ…何で急に…」
シアンから離れようとしたリコの動きが止まる
「私は第一皇女が月の姫だと思っていました…見る者を魅了するこの国一番美しい姫でしょう…人を惹きつけます」
考え込むように静かに話し出すシアン
「ですが…貴方は美しくなくても…人を惹きつける力がある…その方がすごいのではないかと…」
――本気の顔で美しくないって言っててまぢで失礼なんだけど…
けど、
「シアン、アタシは月の姫なんかより、嫌われてたアンタにそんな事言ってもらえる方がよっぽど嬉しいけど」
クスクス笑うリコ
ハッとしてリコを見るシアン
バッと起き上がり
――今なら馴れ馴れしくしても怒られないかも…
「最初はほんとに怖かったけどさ〜すぐ首絞めるし…けどシアンには感謝してるんだよ!」
シアンを笑顔で見るリコ
「アタシは執事のクロードしか頼れる人が居ないのに、アイツは居なくなっちゃって…けどシアンが来てくれて、アタシの面倒見るのなんて本当はすごく嫌だと思うけどなんだかんだ助けてくれて…たから、ありがとう!!」
少し照れつつ嬉しそうに笑うリコ
リコは嫌々ながらも色々やってくれていたシアンに感謝していた
クロードが居なくなってかなり不安になっていたけどそんな時に助けてくれて、きっと1人だったら耐えられなかったと思う
「そうですか…」
ポツリと呟くシアン
「私はクロードと比べて劣っていますが、代わりになれたのなら執務を全うできましたね」
シアンは少し嬉しそうに言うと…
「いやいや、元々比べてないし。シアンはシアンの良さがあるでしょーが!」
ニッコリ笑って言うリコ
目を見開いて驚くシアン
『何を恥じる事がある、お前はお前の良さがあるだろ』
クロードに言われた言葉を思い出すシアン
何をするにもずっと右大臣のクロードと比べられてきたシアンは「右大臣の劣化版」やら、「力に差があり過ぎる」など散々陰で言われて比べられてきた
クロードの横に並びたくて必死に努力をしてきたが、心が折れた時があった。そんな時にふとクロードに愚痴をこぼした時に言われた言葉が忘れられずにいた。
その言葉をきっかけにシアンはクロードと違ったやり方や自分にしかできない方法で差を埋めてきた
まさかそれを目の前の気に食わない姫に言われるなんて思ってもみなくて…
「いや、調子乗んないでね、良さがあるのはたまにだから、すぐ首絞めようとするとこ本当に直して欲しいから!!」
とぶつくさ言ってるリコを見るシアン
「本当に貴方が月の姫なのかもしれませんね…」
聞こえないようにソッと呟くシアン
シアンにとって月の姫は敬意を払う最高の褒め言葉だった
グイッ
「ひぃっ!!」
横に座ってるリコを思い切り引き寄せるシアン
銀色の髪が綺麗に揺れる
そして、思い切りリコを抱き寄せて抱きしめた
「し、シアン!?///」
驚いてシアンの胸に収まるリコ
クロードと比べると細い体だったが力が強くて驚く
「第五皇女様にそのように言っていただき大変光栄です」
シアンがリコの耳元で囁く
「…っ!!///」
急にシアンの綺麗な声で耳元で囁かれてピクリと反応するリコ
そして…
「痛ぁっっ!!!」
意地悪く笑ったシアンがガブッとリコの耳を噛んだ
「この馬鹿病み左大臣!!!!///耳噛むか普通!!」
驚いてバッとリコがシアンから離れて
顔を赤くして左耳を抑えて立ち上がった
「リコ、ではまた」
シアンはとても嬉しそうに笑いリコの部屋を出て行った




