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秘密の晩酌



コンコン



ノックの音で目が覚める



「おはようございます。第五皇女」



「……おはよ」


目をこすりながら体を起こすリコ



「最近は毎朝見てますが寝起きの姿は本当に醜いですね」




「まぢで朝から殺意しか湧かない。」


はぁ……とため息を吐くリコ



――最近朝の日課になりつつあるシアンの誹謗中傷、醜いなんて言うか普通。



キラキラの笑顔で毒を吐く


そりゃ自分はサラサラの長い銀髪を下ろしてグレーの瞳に女顔負けのそんな綺麗な顔してたらアタシの寝起きなんて醜いでしょうけど…



「てか、そういう自分の寝起きは美しいわけ?朝から美しい奴なんているわけないじゃん」


リコがベッドから降りてシアンに言う



「他の皇女達はいつでも美しいですよ?醜いのは貴方だけです。それに私は寝起きを見られた事ないので知りませんが、貴方よりは美しいかと」


ふふふといつもの笑顔で言うシアン



「自分が美人だからってまぢでムカつくーー!!!」


――この男女!!ドレスなんて着せたら絶世の美女だわ!!ってこれは褒めてるみたいなもんか…



「私は美人ではありません。貴方が醜いだけですよ?」



いつのまにか目の前にいたシアンが屈んでリコのアゴに人差し指を突き立て

クイッと持ち上げてニッコリ笑う



「朝から勘弁してよ…」


目の前の美しい男に目が眩むリコ



侍女達がノックをして部屋に入ってきて湯浴みの準備を始める



リコが椅子に座るとシアンがお茶の入ったカップを目の前のテーブルに置いてくれた



――シアンがクロードの代わりに朝起こしに来て、一日のスケジュールを言ったり、ちょこちょこ面倒を見に来るようになって5日くらい経った…


初日は何事かと思って本気で怖くてかなり警戒してたけど、意外な事にシアンから王様に頼んだらしい…


右大臣の次は左大臣が面倒見てくれるってどんだけVIP対応?って思ったけど…

クロードの命がかかってる以上その辺の奴に任せられないと言う理由らしいけど…アタシはできるのならばその辺の人が来て欲しかった。すぐ首絞めてきそうで怖いんだもん…

けど、酷い悪口は言うけどそれ以上は何もしてこなくて何だかんだ面倒見てくれるシアン



クロードは…



様子がおかしいと思ったあの日から、

アタシの前に一切姿を見せていない。



なんでも、第四皇女が冥王の残党に襲われて呪いにかかってしまったらしい…

毎日高熱を出してかなり苦しんでいるとか…

クロードの神力を込めると高熱を抑える事ができるとかで、発熱したらすぐに抑えれるようにつきっきりで第四皇女の側にいるって聞いた



よりによって元婚約者の第四皇女…

きっと仲睦まじく過ごしてんでしょうね。



第四皇女が冥王の残党に襲われたのは王様に許可を得て街に出かけいた時らしい…


…てか、街にお出かけしていいの知らなかったんだけど!!お姫様だから城から一切出ちゃいけない暗黙のルールかと思ってたんだけど!!

そりゃアタシはそんな出かける余裕ないくらいこの世界の勉強とか遊宴の舞の練習づくしだったけどさ!?

たまには頑張ったご褒美的なのあってもよくない!?



「ねえ!!シアン!!」


「ダメです。何度言えばわかるのです?貴方は記憶力が皆無なんですか?」


笑顔で酷い事を言うシアン


「まだ何も言ってないし…」


――確かにこれを言うのは何回目だろう…


「どうせ出かけたいと言うのでしょう」


――むむっ…図星…


「だって気分転換したいんだもん!!」


ギャーギャー叫ぶリコ


「朝からやかましいですね…第四皇女が襲われてから姫の警備は厳重になり、外出は深く禁じられています。」


はぁ…とため息を吐くシアン


リコが侍女達がいないか確認してから…


「従者の契りの解き方まだ見つかってないんでしょ?外に探しに行きたいな〜なんて…」


「ダメです。その件は私が引き受けますので貴方は大人しくしていなさい。」


「えーやだーつまんない!勉強なんてもう飽きたの!!てかこの世界の歴史とか知ってどうすんのーアタシには意味ない!」


――いつかは元の世界に帰るし!!それに、勉強の歴史とか本当に苦手で毎日教わってるけど何にも頭に入ってない…こっちは渡された教科書の文字を読むので精一杯だし…



「はぁ…では今日は城の中でも散歩したらどうです?」


「おお!!城内探検!?いいね!!楽しそう!!」


一気に目を輝かせるリコ


「城の中を案内させます。くれぐれも脱走したりしないで下さいね。」


呆れて言うシアン


「するなと言われるとしたくなるのが…」


ニヤニヤしてリコが言いかけていたのに


「そんなに首を絞められたいですか?」


キラキラの笑顔でシアンが言った



「しません!!」


リコの態度が豹変した





その後は城内を案内してもらった

凄まじい広さで一度で全部覚えきれる部屋の量ではなかった


皇女同士の接近は禁止されてる為、

皇女の部屋はそれぞれかなり離されていると言う事しか言われなくて場所すら教えて貰えなかった



客人をもてなす大広場に

右大臣執務室と左大臣執務室とか王族の仕事部屋、

近衛隊の寝泊まりしてる宿舎に稽古をつける広場、

広い調理場も無理を言って覗かせてもらって、

手入れの行き届いたお庭を見てから噴水のある静かな場所などなど…



城内ツアーを終えてソファでくつろぐリコ



「アタシはこんな素晴らしいところに住んでいたのに一度も徘徊した事なかったなんて…」


――庭なんて綺麗なお花だらけで最高に癒されスポットだったよ!!



そして、広い図書室があった!!あんだけ本があるなら調べものには最適じゃない!?!?

今度行ってみよーっと!



とその前に…



「ふっふっふっ…」



かなり悪い顔をして一人でニヤニヤするリコ



この時間は完全に一人で夕食を待つ時間

夕食が来るまで少し時間がある



リコはこっそり部屋を抜け出して



「すいませ〜ん!」


広い調理場に来ていた



リコを見た瞬間に大騒ぎをする使用人達


「だ、だ第五皇女様!!!いかがされましたか!?!?」


ものすごくテンパって驚いてる

周りの使用人達は頭を下げて整列する



「ちょっ…そんな!!仕事を邪魔するつもりはなかったんです!!すぐ戻りますから!!皆さんお仕事続けて下さい!!ここで一番お酒に詳しい人はいますか?」


リコもアワアワして答える



その後は使用人に無理を言って1本だけこの国で有名な超高級らしいお酒を貰って急いで部屋に戻った


――今日調理場を無理矢理覗いた時にお酒があるの見ちゃったんだよね〜クロードがいなくなった今、やりたい放題やらせて貰うわ!!


くっくっくっ、と笑うリコ




その後は、何事もなかったかのように夕食を済ませ

お風呂に入りベッドに入った



誰も居なくなった事を確認してから…



「やっと来た!!お楽しみタイム!!」


ベッドから飛び起きて



こっそり隠しておいた綺麗な瓶に入ったお酒を持って部屋についてるバルコニーに出た



満点の星空に綺麗な大きな三日月


砂漠が広がる景色は最高だった


「なんか最近ずっと人がいて、こうやって一人でゆっくり過ごす時間なかったからなぁ…」


バルコニーにある小さなテーブルにお酒とグラスを置いて椅子に座る



「んん!!美味しい!!」


超高級なお酒は今まで飲んだ事のないような香りと味でお酒がそこまで強くないリコもグイグイいけてしまった



「あの馬鹿執事…前に言ってたのはなんだったわけ…」


リコがほろ酔いでテーブルに肘をつきグラスを揺らしながら呟く



――お前は俺のものだとか、他の男のとこに行くなとか言っといて自分は他の女のとこ行ってんじゃん。なんなの?

それに、恋人でもなんでもないのにアタシを束縛ですか!?え、もしかしてアタシのこと好きとか!?



…………。


いや無いわ。それが一番ないわ。



まるでそんな風に聞こえるけど自分の主人が他の奴といて何かあった時は不安なだけでしょ…


はぁ……まったくさ、恋愛経験のないアタシからすればさ、そう言う言葉にドキドキしちゃうわけ、

アイツはそんなつもり一切なくてもアタシは勘違いしそうになるわけ!!


ほんと厄介だわ従者の契り!!

シアンを待ってらんない!早く解いて、早く元の世界に戻ってやるんだから!!



グイっとお酒を飲むリコ



――てか、こっち来てどれくらい経ったのかな…

もうみんなアタシの事忘れてそうだよね…逆に…


お母さん心配してるかな…


アタシは小さい頃に親が離婚して母子家庭で、お母さんが一人で大学まで行かせてくれた

上京して一人暮らしして…そしたらお母さんは再婚して、幸せそうな二人の時間あんま邪魔したくないからって実家にも顔出さなくなってたな…そういえば…

全然会ってないのにこっちに来ちゃった…



リコは静かにお酒を飲む



――本当に元の世界に戻れるのかな…どうやって…?

毎日過ぎてく日々に流されて何にもしてないやアタシ…



何してんだろ…



時間ばかり過ぎている事に今更気づいて不安になり落ち込むリコ



「あーあー」


ため息混じりに呟く



――最近じゃ、こっちの生活に慣れてきちゃって…

正直、お城での生活は最高だし…一人暮らし戻れるかな…

毎日豪華な服を着て、侍女のアン達とくだらない話ししながらアロママッサージやらなんやらされてどんどん綺麗になってくし…肌なんて今じゃツヤツヤだし…

美味しいご飯を食べて…毎日シーツを変えられてる綺麗なベッドで寝て…働かなくてこんないい生活して…



もう戻るのは諦めてこっちの世界に居ようかな…



…………!!



「そうだ!!アタシとりあえずこっちで手に職つければいいじゃん!!」


ガタっと椅子から立ち上がるリコ



――ないかもしれない戻る方法探すよりも、こっちでも生きていけるようにしておいて、探した方がお城を追い出された時も安心じゃん!!



よっしゃーー!明日早速シアンに相談しよう!!



何をどうしていいかわからなかったリコはやっと目的を見つけて、少し希望が見えてきて明るい気持ちになった



座って上機嫌で飲む



――にしても…第四皇女様大丈夫なのかな…冥王の残党に襲われたって…

そろそろ王様の力が戻らなきゃヤバいんじゃないのこの世界…

月の姫がどうとかも、なんも進展してなさそうだし…

きっとアタシが知らないところで動いてるんだろうけど…


というか!乙女ゲームの世界なんじゃないのここ!?

早く仕事してよー主人公!!



アタシ、乙女ゲームの世界なら転移じゃなくて、せめて転生したかったな…


主人公…早く現れないかな…まぁ、現れてもアタシにはわからないのだけど…



またお酒をついで飲むリコ



――今日、城内探検して思ったけど…あれだけ広いとたまたまお城の中ですれ違う事もなければ、会うこともない…


今までクロードはアタシの部屋に来てくれてたから会えてただけだったんだって実感した

実際、第四皇女につきっきりになってから一度も会ってないし…会おうと思わなければ会わない



つまり、アイツはアタシに会おうとは思ってないってこと



リコはそれに気づくととても悲しい気持ちになった



――俺のだのなんだの言っといて、主人の事は心配じゃないわけ!?

そんなに元婚約者がいいか!じゃあ早く結婚しろ!!


第四皇女様は一瞬しか会ってないけど、すぐ思い出せるほどの美人だったしね!!

薄い茶色の髪にグリーンとブルーが混ざったような綺麗な瞳に綺麗な顔で…

あんな美人なら誰だって惚れるわ!!


あの女ったらし!!嘘つき馬鹿執事!!


拗ねてグイっとお酒を飲むリコ



――あーもう寝よ寝よ!!眠くなってきたし…



少しフラフラした足取りで部屋に戻り、飲みかけのお酒の瓶をグラスを引き出しに隠した

そのままベッドに飛び込んで布団もかけずに眠りにつく





リコは気づいていなかった…毎晩クロードが眠った頃に会いに来ていた事を…




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