皇女遊宴【宴中】
話しやすいように口元に付けていた飾りを外して
クロードに連れられて王の石段を降りる…
「第五皇女様!!」
「シェリアーナ様!!」
「姫様!」
――う、うわぁ…
リコとクロードは大量の人に囲まれた
あまりの勢いと人の多さに一歩下がって
キュッ
怖がって思わずクロードの袖を掴むリコ
パッとクロードが振り返りリコが袖を掴んで怯える姿を見る
「従者の袖を掴んで怯える主人がどこにいる」
ソッと優しくリコの手を掴み袖から離す
「ご、ごめん…」
目の前の人だかりに怯えてクロードの言葉が頭に入ってこないリコ
「何をそんな怯えている、俺がいるだろうが。皇女の命令ならこんな奴ら全員八つ裂きにしてやってもいいが?」
フッと笑うクロード
「ちょっと!そんなのダメに決まってるでしょ!!」
バッと我に返り怒るリコ
――この人達より権力ありそうなアンタが言うと冗談に聞こえないのよ!!
「姫の前だぞ、無礼者。下がれ」
近寄ってくる貴族達をクロードが凛とした声で一括して沈める
「どれと話したい?」
クロードが貴族達を見てリコに聞く
「は、話さなきゃダメなの?何話していいか…」
おどおどするリコ
「王も言っていたが第五皇女と話すのを何日も待っていた者達だ、軽く話してやれ。俺が適当に話すからお前は挨拶だけでいい」
「誰とも話したくないっ」
周りの人に聞かれないようにクロードにこっそり伝える
――やだよ!なんだこの姫とか、期待はずれだとか絶対思われるもん!!奇才がある田舎のから出てきた貴族の設定でしょ!?益々どうしていいかわからない!!
「この国と王にかなり好意的で金を寄付してる貴族が何人かいる。そいつらに絞る。これも責務だ第五皇女」
クロードが目だけ動かして人物を特定する
――さ、さすが…顔だけ見てそんな人わかっちゃうなんて…
「わ、わかりました…」
ブンブンと顔を横に振って気持ちを入れ替えるリコ
その後クロードから名前を呼び呼ばれた貴族は
「光栄です」と前に出てきて何か話していた
――なんの話ししてるか全然わからないし…緊張解けたのと舞とか慣れない場所とかでもう色々疲れたし…頭が働かない…
顔は張り付いた笑顔だけど頭はぼーっとしてるリコ
――本当に自己紹介だけしてテキトーに相槌打ってるだけで何とかなってる…恐るべしクロード…
綺麗な美人貴族達は完全にクロード狙いでアタシの事なんて一切興味なかった
けど、みんな綺麗にしてる…アタシと違って綺麗な民族風のドレスを着ている人もいれば、踊り子の衣装の人もいる…
それに髪色とか瞳の色が鮮やかでみんな綺麗だな…
自分がどれだけ地味か痛感するリコ
――なんか…惨めになるだけだし…もうアタシいらなくない?こっそりいなくなってもバレなそう…
クロードの横顔がこっちを見てないか確認して、そーっと一歩後ろに下がった瞬間
スル
「私も今日の遊宴を楽しみにしていた。姫との時間を少しもらってもよいか?」
クロードがリコの腰に手を回しグッと引き寄せて、さっきまでの厳しかった表情が豹変して、優しい表情で言う
――えっ、急にどうしたの!?てか腰!!///アタシ踊り子の衣装だから素肌にクロードの手が!!///
カァっと赤くなる顔をバッと下を向いて隠すリコ
「も、もちろんです…///」
貴族達がポッとして頷く、何故かその中には男も混ざってポッとなっていた
「そんなお顔でお願いされたら断れないです…///」
小さな呟きも聞こえた
滅多に見ない優しいクロードの表情にやられる貴族達を置いてリコの腰を抱いたまま歩き出した
「逃げようとしただろ」
さっきの表情から豹変してクロードぎジッとリコを見る
――豹変ぶりがすごい…微塵もアタシと過ごしたいなんて思ってなくて…逃がさない為の口実って伝わってくるんだけど…さっきの優しい表情はどこ行ったよ
「あはは…バレた…?」
苦笑いして目を合わせないリコ
――まず手を!コイツは女慣れしてるからってなんとも思ってないんだろうけど!///
「そ、それより私の可愛い可愛い執事、腰の手を離していただけないかしら…///」
クロードが不思議そうな顔する
「く、くすぐったいの!///」
――直接触られてるのが恥ずかしいからだけど、素肌に触らないでなんて言ったら絶対面白がるから、くすぐったいって誤魔化そう!!///
クロードが邪魔にならないスペースに移動して
スルリと指でリコの腰を優しく撫でるように触った
「ひぁっ!!///」
びっくりして変な声が出るリコ
「主人よ、こんなところで変な声を出して発情しないでいただきたい」
リコに回していた手を離し、口元に軽く握った拳をあてクスクスと笑い出すクロード
「まぢ覚えてとけよ!この馬鹿執事!///」
「随分と口が悪い姫だな」
そう言いつつ、飲み物を持って歩いている使用人に手を挙げて合図して呼ぶ
「お酒!?」
何種類か飲み物がトレーの上に乗っていて目を輝かせるリコ
――そういえばこっちにきてそんなの一滴も飲んでない!!きっと異世界のお酒なんて珍しい味とかして美味しいに決まってるじゃん!!
クロードが2つグラスを取って片方をリコに差し出して、使用人は一礼していなくなった
「ありがとう!!」
嬉しそうに飲むリコ
「……まぢ覚えてとけとよ…この馬鹿執事…」
普通の水でガッカリするリコ
「酒が飲みたいなんて強くなってから言え」
「そこまで弱くないもん!!そういうクロードは強いわけ!?」
「当たり前だ」
グラスに入った飲み物をゴクッと飲んでフッと鼻で笑われた
――持っているグラスがアタシのと違うし透明じゃないから自分だけお酒飲んでるな!?なんて酷い奴なの!?
人が儀礼の石段に集まり始める
「なにか始まるの?」
「第三皇女の歌だ」
――どうりでさっきまで散々囲まれてたのにアタシ達の周りには人が来ないわけね…そりゃ王様が認めた歌声聞きたいよね
周りに焚かれていた火がバッと消されて石段だけ明るく炎に照らされて
――うわぁ…美人…
それはそれは綺麗なお姫様が石段に立った
黄緑のサラサラストレートの髪に深いグリーンの瞳
綺麗な顔をしてるけどおそらく18歳とかそれくらいの若さだった
薄いブルーのドレスがすごく似合っていた
美しい歌声に会場にいる人達が耳を傾ける
――綺麗な歌声…これは王様も惚れちゃうかもね…
もしクロードがあのお姫様の執事だったら…
すごく絵になるお姫様と執事だろう…
アタシの横にいるよりよっぽど気品があって周りに一目置かれるだろうなぁ…
というか今更だけど、貴族の人達は従者の契りがあるからクロードがアタシの執事を致しかたなくやってるって知ってるのかな…
「クロード…」
薄暗い会場の中、横に腕を組んで立つクロードに話しかける
前を見ていたクロードがチラリと横目でリコ見て体を傾ける
「なんだ」
歌声で聞き取りづらい為リコも一歩近づく
「貴族の人達はクロードがアタシと従者の契りを交わしてるから致しかたなく執事をやってるの知ってるの?」
体を傾けたまま話を聞くクロードに言う
「お前は本当に無礼者だな、皇女の歌の最中に話すことか?」
くつくつと笑うクロード
「あっ!そうだった…ごめんなさい」
――なんて失礼なんだアタシ!!歌声にみんな集中してるから聞くなら今しかないと思って!!
「別に良い、お前も皇女だしな。俺も歌には興味ない」
「アンタも随分無礼者ね…」
――あんな綺麗な人が歌ってる歌なのに…
「従者の契りを交わしてる事は一部の王族しか知らない。俺の命を狙う哀れな奴は居ないと思うが今だったらリコを狙えば簡単に殺せる。そうなった時危険だからな、公にはしていない。」
クロードが静かに答える
「執事とも公言してないが、今日のこの状況を見たらわかるだろうな」
「そっか…」
――他の皇女のとこには行かないのにアタシの横にずっといたらそれはそうなるよね…しかもこんなポンコツな皇女の…
落ち込むリコを見て
「釣り合ってないとか気にしてるのか?」
クロードがフッと笑いをこらえて聞く
「はっ!?///全然してないんですけど?勘違いしないで貰えます?」
キッとクロードを睨むリコ
――なんでコイツは人が気にしてる事を笑うわけ!?ほんといい性格してる!!///こういう事言われると逆に釣り合わなくても隣に居てやるって嫌がらせしたくなってくる!!
歌が終わり辺りが明るくなった
飲み終わったグラスをクロードが預かって使用人に返してくれた
すると…
さっきまでふざけていたクロードの表情が一気に怖くなり、サッとリコの前に立った
「皇女同士での接近は禁じられていますが」
――えっ…皇女?
クロードの後ろからソッ顔を出して相手を見るリコ
――う、うわぁ…これまた綺麗な人…
薄い茶色の髪はゆるくウェーブがかかっていて
グリーンとブルーが混ざったような綺麗な瞳
白い肌で顔立ちは整っていて、スタイルも良く色っぽいお姉さんだけど品があった
「何のつもりですか…第四皇女…」
クロードが警戒して言う
――第四皇女!!この人が!!
さっき歌声が美しい姫様は見たから、王様が言ってた話だと…外見が美しい者、舞う姿が美しい者、知性があって美しい者どの人に当てはまるのかな…
全部当てはまりそうなんだけど…
「ご無礼をお許し下さい。第五皇女様。」
クロードの後ろにいるリコを見て深くお辞儀をする
「危害を加えるつもりはありません。クロードにお話があって参りました。」
頭を下げたまま話す第四皇女
――ク、クロードに!?
クロードの表情が一気に曇る
えっ、えっ!?と2人を交互に見るリコ
――何この…只ならぬ空気…いつものクロードなら突っぱねそうなのにこのできない感じ…この2人なんかある気がする…
「わ、わかりました…では、ごゆっくり…」
と言った瞬間クロードがキッとリコを睨みつけ怖くて固まる
――こ、怖っ!!えっ、え?ダメなの?!話したいんじゃないの!?
「第五皇女様はなんてお優しいお方なのでしょう…私が無礼を働いたにも関わらず…」
口元に手を当てて少し瞳を潤ませてリコを見る
「申し遅れました。第四皇女、ラナ・サシルフォールと申します。」
また深くお辞儀をする第四皇女
「あっ、えっと…」
リコが挨拶しようとしたらクロードがグッと押して背中に隠した
――えっ、挨拶もダメなの!?相手はしたのに!?え!?もうなんなのこれ!!
「わざわざこんな大事な日するよう話なのか、ラナ」
さっきまでの丁寧な口調が変わり静かに聞くクロード
「私はクロードに会えるかもしれないと開かれる遊宴には何度も足を運んでいました。そしてやっと今日会えたのです…」
――えええ!!ちょっ、えええ!?どういう関係なの!?クロードがこの姫の事下の名前で呼んでるし!!
この人はクロードに会いたいが為に遊宴に行きまくって!?
眉間にシワを寄せるクロード
――怒ってるっていうよりも…困ってる感じね…何があったかしれないけど…ここは姫らしく!皇女らしく!!主人らしく!!
「第四皇女様、きっと大切なお話なのですね…護衛も付き人も連れないでたったお一人でいらっしゃるなんて…せっかくの遊宴です、クロードとゆっくりお過ごし下さい」
――皇女っぽく言えたかも!!
だけど…クロードは激怒な顔になる
「失礼!!」
リコの手をグイっと引いて第四皇女から離れる
「お前はどういうつもりだ」
クロードの顔が怖い
「え、アンタの主人っぽく振舞ってあげたの」
リコもここは引けないと怖いけど負けじと言う
「俺がいつそんな事望んだ。迷惑だ」
怒った声で言うクロード
――カッチーーン
「はぁー?アンタね、見なさいよあの皇女様!今にも泣き出しそうじゃない!しかも一人でクロードのとこに来たんだよ!?女に恥かかせるんじゃないよ!!何があったか知らないけど、アンタも珍しく強く言えないし、モヤモヤしてる事があるんじゃないの?」
リコが左手を腰について、右手の人差し指でビシビシクロードを指して言う
「アンタの困惑してる顔なんて見たくもないわ!ちゃんと話してスッキリしてから戻って来なさい!これは主人の命令よ!!さっ!行った行った!!」
シッシッとクロードを追い払うリコ
「お前を一人にするわけにはいかない」
ジッとリコを見るクロード
「大丈夫だって、子どもじゃないんだから!アタシ23歳だよ!?なんとかなるって!」
「ダメだ。」
「なんでそんな頑なに嫌がるの!益々行ってこい!!話して解決して来なさい!たまには執事を思う優しいお姫様にアタシをさせなさい!」
力を入れてグイグイとクロードの背中を押すリコ
「お前は何をしている…恥ずかしくないのか」
全く動かないクロードが振り返りリコに言う
「クロード?」
リコとクロードの後ろから声がかかった
「シアン…」
クロードが少し驚いて言う
「第五皇女様にご挨拶をと思ったのですが…」
――この人は王座の左側に立っていたすごい美人の銀髪の人!!きっと偉い人に決まってる!クロードの横に並ぶ人だもん!!この人といるならきっとクロードも許してくれるでしょ!
「あ!私もご挨拶したかったんです!!クロードが第四皇女様とお話ししたいようなので、ご迷惑でなければその間お話しいただけませんか?」
パッとシアンに駆け寄るリコ
「リコ!!」
クロードが強く呼ぶ
こんなとこで…しかも偉い人の前で珍しく名前なんて呼ぶもんだから本当に行って欲しくないのかなと後ろ髪を引かれるリコ
「ああ、そう言う事でしたら私にお任せ下さいクロード。第五皇女様は私が丁重に扱って待っていますので」
ニッコリ優しく笑うシアン
「では、行きましょう姫様」
スッと手を差し伸べられる
「は、はい…」
さっきクロードに教わったように手を添えるようにして乗せた
――こ、これでいいよね…?クロードだって話したいはず…あんな困惑した顔…きっと何かあるんだよ…
第四皇女様も泣きそうだったし…クロードに会う為に何度も遊宴に参加して…
クロードに背を向けて歩き出すシアンとリコ
リコはパッと顔だけ振り返って
「頑張って!」
と口パクでクロードに言ってすぐ前を向いた
なんとも言えない複雑な表情で立つクロードを見てられなかった…




