皇女遊宴【開宴】
――その後は慌ただしく…舞の通しを何度か練習したんだけど…本番のとこでやりたいって言ったら、神聖な場所らしくて本番でしか使っちゃいけないとか…
お昼ご飯もあんまり食欲なくて食べれなかったし…
舞の練習が終わると侍女達が走って迎えに来て…
「姫様!!もう時間がありません!!」
「えっ、まだ昼過ぎじゃん…夜からだよ?遊宴始まるの…」
「姫様は今日の主役ですよ!?そんな呑気な事言ってる場合ではありません!!」
その後はスペシャルコースで、
湯浴みもいつもより気合い入れてピカピカされたし…髪の毛もサラサラになるオイルを塗りたくられ…
全身マッサージを念入りにして…顔のパックも泥やらなにやら色々やられて完璧に仕上げた後に
お、恐るべし…皇女遊宴…何時間かけてんのよ…
「姫様ー!ステキですー!!今日の遊宴で1番美しいですよ!!」
念入りに化粧した顔を見て侍女のアンが騒ぐ
「いやいや…アタシみたいな、茶色の髪に茶色の瞳なんて…この国だと超地味で目立たないから…」
――ここの世界の人達って、基本髪色は明るいし、緑やら青だったり綺麗な色した瞳だし…
と期待しないで鏡に映る自分に驚くリコ
「な、何という技術…さすが姫に仕える侍女達…」
ただ綺麗にするだけじゃなく舞を踊る為に眉間の少し上のところに金色に光る石を貼ってあったり、目元もかなりキラキラしていた
――神聖な儀式メイクって感じ…
髪の毛はハーフアップにされて、かなり細かい技術で編み込みされた
「髪の毛伸びたな…」
肩ぐらいしかなかった髪は切るのを禁止されてからずっと伸ばしていて鎖骨あたりまで伸びていた
がっつりおへそが出てる踊り子の衣装に着替える
上は胸にあまり自信がないリコはそんなに開いていない胸元のデザインでオフショルダーの形
下は下に向かってフワリとたるみのある長いパンツスタイルで足首のところがキュッと締まっていた
全体的に綺麗な真っ白にシルバーの複雑な刺繍が入っている衣装を選んだ
頭にはシルバーの冠のような形をしたもの深くかぶり
後ろに半透明なシースルーの薄い布がマントのようについていて、左右の端を手の甲に留める
リコが手を広げる度にひらりと揺れる
シルバーアクセサリーを首と手首につけて
透明な綺麗な石がキラキラと光る
口元にも半透明なシースルーの薄い布をかけて耳で留める
――さすが…今日の主役…とんでもなく華やか…アタシじゃないみたい…綺麗な別人みたい…キラキラしててお姫様みたいだし…あっ、お姫様か。
その後は王族の人に連れられて会場に向かった
遊宴の会場は野外でかなり賑わっていた
星空の下、場所はかなり広く取られていて、飲み物な豪華な食事が並び、ライトの代わりにたくさんの火が焚かれていた
舞を踊る《儀礼の石段》とその向かいにある《王の石段》は儀礼の石段より高くできていて、遊宴の会場を一望できるようになっていた
中央に数段ある階段がついていた
何人もの王族の人に囲まれるように歩くリコ
――やばい…緊張してきた…
人の目につかないように儀礼の石段に向かう
緊張してうつむいて歩いていると…
女の人の興奮する声や小さな悲鳴、ざわついてるのが聞こえた
ゆっくり顔を上げると
「…っ///」
遊宴バージョンのクロードが立っていて
思わず小さな悲鳴をリコも漏らした
――いつもは白かクリーム系のインドの民族衣装みたいな服を着ているくせに…今日はそれの黒バージョンって…反則でしょ!///これは女性陣の悲鳴も上がるわ!!
足元まである長い裾に胸元が開いていて引き締まった体がチラリと見える
黒い民族衣装の縁がシルバーとブルーの複雑な刺繍で縁取られていた
首元には青い石が埋め込まれたシルバーの大きな首飾りに、手首や指にもシルバーのアクセサリーをつけていた
胸下まであるサラサラな黒髪をおろしているクロードは儚げで綺麗だった
整った顔に白い肌、ブルーの瞳が良く映える
いつもと違うクロードにドキドキしてしまうリコ
パッと目が合い少し驚いた顔をするクロード
――別人で驚いたかな…うわっ、こっち来る…
「緊張しているのか?」
想像していた第一声と全然違くて拍子抜けするリコ
――見た目の事言われるかと思ってたけど全然違った…なんか逆に期待してたみたいで恥ずかしいじゃん…
「緊張してるに決まってるでしょ…」
チラッとクロードを見て目をそらすリコ
――髪下ろしてるクロード初めて見るかも…ほんとやだ!///これ以上こっち来ないで欲しい!心臓がうるさい///舞に集中したいのに!
「最悪なんとかしてやるから気軽に舞え」
リコの目の前に立つクロードが鼻で笑う
「なんとかしてやるって何?なんとかなるわけないでしょ…」
――舞台にはアタシしか上がらないのに…
クロードがズイっと顔を近づけできてリコの耳元で
「俺の為に舞うのだろ?」
楽しそうに囁いた
今日の朝クロードに言った言葉を変な捉え方されたのを思い出す
リコは顔を赤くしてフリーズする
「ち!!違う!!///アンタほんといい性格してる!!こっちはめちゃくちゃ緊張してるのに本番ギリギリで普通からかう!?///」
リコはクロードの肩をバシっと叩いてやろうと手を上げる
パシッ
サラリと黒髪が揺れてクロードの大きな手にリコの手がすっぽり収まる
――手、手が!///触んないでよ!///
更に心臓がバクバクうるさくなる
「こんなすぐ手が出る皇女がいるか」
「アンタが毎回変な事言うからでしょ!?///他の人はそんな事言わないから手なんて出ない!」
「変な事など言ってない、事実だ」
馬鹿にしたように笑いリコを見る
いつの間にかいつものように言い合いをしてる2人
「第五皇女様…出番でございます。」
王族の人がリコに声をかける
「は、はい!!」
「後でな」
クロードがひらりとと羽織を揺らし背を向けていなくなった
リコが石段の舞台の中央に移動する
――何しに来たのアイツ!!クロードのせいで全然なんも考えれなかった!!イメージトレーニングしようとしてたのに!!
緊張する暇もなかったし!!あっ…もしかして緊張…ほぐしに来てくれたとか…いや、そんなわけないかっ!
クロードとのいつものやり取りで緊張してたのすっかり忘れていたリコ
儀礼の石段の周りに集まる人だかり、
目の前の少し高い王の石段には真ん中に豪華な大きな椅子に足を組んで座る可愛い王様、
その少し右後ろに腕を組んだクロードが立ち、
王様の左後ろには前に王座の間にいた長いシルバーの髪を下ろした中性的な顔の男の人が立っていた
リコが王様に向かって丁寧にお辞儀をすると太鼓や笛、鈴などの演奏が始まる…騒ついて会場が静まった
リコはゆっくり顔を上げると王様がニッコリ優しく笑い、頑張れと応援してくれているように見えた
思わず釣られて優しく笑うリコ
――よし!!やってやろうじゃないの!!
音楽に合わせて舞いを始める
――右、右、右、左、半端下がって、回る…
鈴の音に合わせて飛んで着地…
いいテンポで体が動いて舞を進めて行くリコ
けど、だんだん…
――足が痛い…素足だし…この石の舞台、飛んで着地した時に結構痛い…動きが少しずつ鈍くなってきてる気がする…
そして、痛い足を庇おうとして反射的に体が動いてしまい、修正しようと焦って足を出したら…
――やばいッ!!踏み外した!!倒れる!!
焦りとピンチで頭が真っ白になった瞬間に何故かクロードの顔をバッと見るリコ
――クロード!!!!
リコの不安そうな顔を見てクロードは満足そうに笑い、組んでいた腕から右手だけ出しリコに向けると
――風…?
フワッと風が吹いて足がうまく着地した
体制を整えて倒れずに済み、そのまま軽くなった足取りで舞いを続ける事ができた
――クロードの神力…?
そのあと、優しい風がフワリとリコを包み軽やかな足取りで最後まで儀礼の舞を踊り終えた
王様に向かって深く頭を下げるとたくさんの拍手が送られた
リコが儀礼の石段から降りるとクロードが立っていた
パタパタと駆け寄って
「クロード!風が助けてくれた!ありがとう!」
嬉しそうにニッコリ笑うリコ
「助けて欲しそうに見てきたからな」
フッと意地悪く笑うクロード
「よくあの一瞬でわかったね…」
「なんとかしてやるって言っただろ」
「最後まで風が助けてくれたから体が軽くて上手くできたよ!!」
えへへと笑うリコ
「何を言っている、俺が助けたのは転びそうになった時だけ、後はお前自身の力だ」
――えっ…そうなの?てっきりずっとクロードが助けてくれてたとばかり…
そっか…最後は自分の力で…練習頑張った甲斐があったかな?
ふふふと1人でこっそり喜んだ
その後は王族に言われて場所を移動し、王座の石段の前に立つリコとクロード
王座の石段は高さがある為、正面には数段の階段があった
クロードがリコに手を差し出す
「…?」
不思議そうにクロードの綺麗な手を見るリコ
「姫、お手を」
顔はニッコリ笑ってるけど声が怒ってる…
「えっ、あ!そういう事?」
――まさかクロードがエスコートしてくれるなんて思ってないからこっちは!///
ギュッ
ちょっと緊張してるリコがクロードの手を握る
「おい、握り過ぎだ子どもじゃあるまいし」
「え、そそそうなの?///」
「添えるだけいい」
手の力を抜くリコ
――エスコートなんてされた事ないからそんなのわからないよ!!恥かいた!!///
アワアワしてるリコを見て口元が緩むクロード
そのままクロードが階段をゆっくり上がるそれに合わせてリコも上がった
「背筋をもっと伸ばせ、皆見ているんだぞ」
クロードが真っ直ぐ前を向き、何事もないような顔で周りにバレないよう小声で言う
「はいっ」
ピンと背筋を伸ばすリコ
「顎を引け」
「はいっ」
言われるがまま言う事を聞くリコ
「まったく…世話の焼ける主人だ」
呆れてるけどどこか嬉しそうなクロード
王の前に連れて行かれクロードは下がり
リコは深々とお辞儀をしてそのまま片膝をついて下を向く
――顔を上げろって言われるまで上げちゃダメって教わった…こういうちゃんとした時だけ片膝ついて王に跪くらしい
「顔を上げろリコ」
顔を上げて王様を見る
「儀礼の舞、素晴らしかったぞ。まるで風に舞う羽のように軽やかだった」
優しく笑う王様
――上手いこと言うね王様…実際、風に助けられてましたよ…真っ白な衣装に、クロードの風で確かに羽みたいになれたかもねアタシ
「ありがとうございます」
えへへと照れて笑うリコ
10歳くらいの子どもの王様は首元が開いていた裾の長い民族衣装で、クリームがかった白色にゴールドの綺麗な刺繍で縁取りされていてかなりゴージャス
ゴールドの大ぶりアクセサリーを首元にしてはめ込まれている赤い綺麗な石が輝いていた
頭にはゴールドのキラキラした布のターバンを巻いていた
「リコ・シェリアーナ。そなたを第五皇女として歓迎する。
今宵は我が独り占めしたい気分だが、お前と今日しか会えない者がたくさん来て、この日を心待ちにしていた者達に譲ろう。我は会おうと思えばいつでも会えるからな」
優しく言う王様
「はい…」
静かに返事をするリコ
――こちらとしては、全然その知らない人達と関わりたくないですが…王様が言うからそうするしかないよね…
「今夜はリコの遊宴だ。存分に楽しめ」
ニッコリ笑う可愛い王様
「ありがとうございます」
リコもニッコリ笑って言った




