新たな名前
そのあとクロードにソファに座らせられる
「今日の遊宴の事だが、舞の後は俺が迎えに行く」
立ったまま腕を組んでリコ見る
「おそらくお前に少しでも関わろうと貴族やら王族が殺到する、俺がそいつらを捌くから絶対離れるなよ」
「わ、わかった!けど大丈夫!!そんな知らない人達と話したくないもん!むしろクロードの後ろに隠れてるよ!」
両手で小さくガッツポーズするリコ
その姿をみてフッと笑い出すクロード
「本当に変わった姫だな、普通は王と婚約できなかった場合に備えて権力があるものには関わるべきだぞ、第五皇女」
皇女を強調して意地悪く笑うクロード
「普通はそうかもしれないけどアタシには関係ないし…けどそれって、もしかしてアタシ達月の姫候補は王が婚約したら用無しで捨てたられちゃうの!?」
――アタシは権力がある人とかどうでもいいけど、住む場所が無くなるのは困る!だとしたら益々早く帰る方法を見つけないと…月の姫が見つかる前に…王が婚約する前に…
「この国では皇女は王の愛人みたいなものだ、残すも消すも王次第。その中で王と婚約できるのはたった一人だけだ、婚約したら皇女から王女になる、まぁ確かに歴代の王女は皇女などいらないと王に頼んで城から追い払う事が多いいな…
自分の旦那の愛人が堂々と城の中をうろついていい気はしないだろうからな」
「確かに…けっこうアタシ、ピンチじゃん…」
――月の姫候補はまだ婚約してないから愛人扱い。けどそれって急に婚約が決まったらアタシの場合かなりマズいよ!!他の人は実家とかあるだろうし帰れるけどアタシはこっちの世界に身寄りないし!!王様優しいから頼めばなんとかしてくれそうだけど…元嫁候補のアタシに援助なんてするなって王女に言われたらそれまでだし…
「だから皇女達は良い縁がないか、しょっちゅう遊宴に参加しては目を光らせている。もちろん王様が一番だと念頭に置いているが、不安にはなるだろうからな。」
クロードが淡々と話す
「ねぇ、クロードけどそれじゃあさ、皇女って権力あるのかと思ってたけどその場しのぎで王女に選ばれなかったらなんにもないじゃん!」
「それは違う、皇女に迎えられた時点で王族だ。城から居なくなっても皇女は王族として扱われる。その皇女と婚約すれば王族として王の下で働く事ができる。だから皇女は王族になりたい貴族から婚約の申し出をかなりされるぞ」
リコを見て馬鹿にしたように笑う
「ねぇ、その笑いめっちゃ失礼なんですけど。絶対お前みたいのでもなって意味込めてるでしょ。」
イラっとしてクロードを見るリコ
――王族になる為ねえ…
「権力権力って、そんな大事ですか?ある程度安定して暮らせれば自分の好きな相手と恋愛結婚したいもんですけどね、アタシは」
リコが自分の膝の上膝をついて悪い姿勢で言う
「王族になりたいって理由もあるが、皇女は優れた者しかなれない。貴族や王族の娘はより優れた家柄と血縁になる為に大切に育てられる。容姿端麗なのもそうだが皇女に選ばれるよう努力をしている者ばかり、そんな中から選ばれた皇女達は男なら誰もが嫁にしたい憧れの存在」
――なるほどね、お金持ちの家に産まれたお嬢様は自分の家を繁栄させる為に好きでもない男と結婚させられるのね…大して好きでもない男の為に自分磨きして努力して…だけどきっとそんなの当たり前で受け入れているんだろうなぁ。アタシが元いた世界に比べると悲しい世界ね…
リコはふと思った
――今の話全部聞いてて思ったけど、アタシの目の前にいるこの男は皇女達から…いや、今日の遊宴に来る女達からしたらかなりの良物件では?
しかも顔も抜群に良いし、体格だって良い。神力なんてなくたってモテるでしょ…
まぁ、悪口を直接本人に伝えるって点では性格にちょっと問題あるけどね。いや、これはアタシに限ってかな?
ジーッとクロードを見て考えるリコ
――……………。アタシはここの人間じゃない。
クロードはアタシと従者の契りなんて交わしちゃったからアタシの面倒ごとばかりで縛り付けちゃってる…
クロードにはクロードの人生がある、もしかしたら今日の遊宴で良い人がいるかもしれない…
アタシはここでクロードばかり頼ってたからいつのまにか会えないと寂しいとか、話せると嬉しいとか思うようになって…かなり懐いちゃってたけど…
クロードとどうこうなるつもりはない。
アタシは元の世界に戻るし、別世界の人だから…
それよりなによりまずコイツに相手にされるはずないか。
「そういえばクロードは婚約者いないの?」
あえてふざけてニヤニヤして聞くリコ
「婚約者か…探してる暇がない。俺には手のかかる主人がいるからな」
意地悪く笑うクロード
――なっ……!!なんでそうなるのよ!!
「ならちょうどいいじゃん!今日は仕事の一環で遊宴に出るでしょ?いい人見つけたらどーですか?」
フンッとそっぽを向くリコ
「おい、なんでわざわざいつもより早く起こして、こんな話ししたと思ってる。全く危機感がなくて、人ごとのように聞いているが、お前は色々な奴から狙われているって事だ。俺は遊宴に女を探しに行くつもりはない。」
――確かに…いつもより朝早いかも…結構話してるのに侍女達がまだ来ない…
「えっ…どうゆう事…」
――さっきのクロードの話は優れた皇女の場合でしょ?アタシなんかなんにも優れてないパッと出皇女だから興味持たれる事なくない?
「権力が欲しくてお前を利用しようとする者、お前をよく思わない者も出てくる。皇女同士の争いや揉め事だってよくあることだ、だから皇女同士接近は禁止されているが当の本人に何も危機感がなければ俺も守りきれない」
「そ、そんな危ない宴に参加するんですかアタシは…」
「お前の立ち回り次第だ」
「クロードの横で大人しくしております…」
「正しい判断だ」
フッと鼻で笑うクロード
「後、異世界から来た事は誰にも話すなよ。今その事を知っているのは極一部の王族だけだ。侍女達にも確認したが幸いお前は誰にも話してないらしいからな」
「話すも何も…信じてもらえないと思って言ってないだけ…」
――アタシがこの城で話すのはクロードとたまに王様、侍女のアンくらいで、アンはそう教え込まれてるからか、アタシの散策は一切してこないし、クロードは今日もカッコいいみたいな当たり障りの無い話ししかしない。
それなのにいきなりアタシ異世界から来たの!なんて言ったら頭がおかしくなったんじゃないかと思われると思って話してない
「他の奴等に異世界から来たなんて事が知れたら混乱を招く。だから遊宴の参加者達は王に鬼才が気に入られて皇女に選ばれた、田舎の貴族出という事になっている。」
――え?え?
「今日からリコ・シェリアーナと名乗れ。」
――アタシの…この世界の名前…?カンザキって言うのは珍しいから?てか、奇才とか田舎の貴族とか突っ込みどころ満載なんだけどそれよりも…
「えっ…それどういう事…嘘の名前?大丈夫なの?皇女がそんな事して…」
リコが驚いて固まる
「この偽名で実際にある貴族にリコは属している事になっている。手配をするのにどれだけ時間がかかったことか…俺が全て根回ししたんだ、見破れる奴はいない。それにこれは王の命令だ誰も逆らえない。」
クロードが悪い顔をして言う
「だから最近ずっとお城に居なかったの…?」
「あぁ、ほんとは昨日の夜に言うつもりが寝ていたからな」
――王の命令とは言え…そんな動いてくれてたなんて…
コンコン
侍女達が来てリコの朝の湯浴みの準備を始めた
「さて、俺はまだやる事がある。さっき言ったこと全部言ってみろ」
クロードがじーっとリコを見る
「全部!?え、えっと…リコ・シェリアーナって名乗る事、奇才があって王様に気に入られた、田舎の貴族で…あとなんだっけ?」
「お前…一番重要なのを忘れている。遊宴の時は俺から一歩も離れるな。お前は一言も喋らなくていい。挨拶だけしてろ。」
呆れて言うクロード
「あ、そうだった!ごめんごめん」
えへへと笑うリコ
クロードが部屋から出て行こうとする
――ここまで色々やってくれて結局アタシに害が及ばないようにしてくれてる…王様の命令とは言え、クロードには感謝しかない…クロードは本当にすごい人なんだね…アタシをここの世界の貴族にしちゃうなんて…
「クロード!!」
リコがソファから立ち上がってドアを開ける背中を呼び止める
振り向いてリコを見るクロード
「アタシ、少しでもアンタの主人として立派に儀礼の舞やってみせるから!下手かもしれないけど、ちゃんと踊りきってみせる!」
――なんにも優れてない皇女の執事なんてきっと周りに笑われちゃう…けど、アタシに出来る事はちゃんとやるからね…
クロードは思い切りため息をついて
空いているドアに右肩をつけて腕を組み寄りかかる
「儀礼の舞は皇女に迎えてくれた王に感謝を込めて舞うものだ」
――それ…先生も言ってたけど…それが何?
「さっきの言葉だとまるで俺の為に舞うように聞こえるが?」
クロードが意地悪く笑った
「なっ!///違う!!」
顔を赤くして焦るリコ
「別に舞などどうでもいい。失敗しようが途中で止まろうが好きにしろ」
「えっ…どうでもいいって…」
――アタシあんなに練習したのに…
「ただ怪我だけはするな、それだけだ」
クロードは真っ直ぐリコを見てそう言うと部屋から出て行った
儀礼の舞の本番は硬い石でてきた舞台の上を裸足で舞う。先生にも緊張して上手く体を動かせなくて足を痛めてしまう人がいるから気をつけてと言われた事を思い出した。
リコはパタンと閉まるドアを見てから走ってベッドにダイブして大きなフカフカの枕に顔を埋めて
――な、なんなのそれ!!!///
アタシは大勢の前で踊るから結構緊張してて、失敗したらクロードまで恥かくと思って言ったのに!!///
どうでもいいって!!///それよりもアタシの怪我の心配!?
しかも、アタシを守るだの離れるなだの…自分の命に関わるからやってる事であってアタシの為じゃないのに…トキメクな!///トキメクなアタシ…///ホント嫌な奴!!///
その後、準備を終えた侍女達がベッドでジタバタ悶えるリコに声をかけて湯浴みをした




