91本目
俺たちは階層を段々と下って行った。
その間何回も魔人たちによる襲撃を受けたが、全く問題なく撃滅させている。
ちなみに母さんはずっと背中だ。
ちょっと暑苦しい。
移動中は高速で走りながらも、リルレとテトナに腕を取られているので、走りにくいなんてものじゃない。
ピクニックじゃないんだからホント勘弁して欲しいが、全員俺の言うことなんか聞いたことがない。
そこへ強烈な霊子の圧を受け、全員止まる。
全身黒ずくめの哭いている髑髏の仮面の男がひとりと、憤ってる髑髏の仮面の女がひとり唐突に現れた。
髑髏の仮面…。
間違いなく四天だ。
「アリトン…。いや、裏切りのニヌよ。そしてその子であるトオル。ふたりともここで滅して貰うぞ」
哭き髑髏が静かな声で言った。
背は俺より少し大きいくらいで中肉中背。
所作が落ち着いている。
俺たちを前にして、全く構えることなく自然体なところから、相当な実力者であることがわかる。
「パイモン、アマイモン…。久しぶりだな。昔のよしみだ。見逃してやろう。去れ」
俺におぶられたまま言っても全くカッコつかない。
さすがの俺も四天相手となると本気を出さなければならない。
ホントにいい加減降りて欲しい…。
「相変わらずふざけた女だ。死ね」
瞬きよりも100倍くらい速いスピードで、俺たちのいたところに重厚そうな金属の立方体が出来ていた。
魔方陣もなしに。
周りの壁などがなくなったり凹んでおり、恐らくは瞬間的に周囲の物質を取り出して固めているのだろう。
あの立方体に閉じ込めるつもりか?
さすがに全員反応し避けているが、技をかける際の予備動作が全くない。
「みんな気を付けろ。パイモンの力は個体の分解と再構成だ。目に魔方陣を仕込んでおり、見ただけで魔法を発動出来る」
「関係ないよぉ~~~」
超高速でパイモンに攻撃を仕掛けるテトナ。
だが、攻撃をことごとく避けられ右腕を立方体に捕らわれる。
瞬間躊躇せずにテトナは自分の右腕を斬り落とし攻撃の手を緩めない。
パイモンの視線上に入らないように高速で移動しながらの猛攻撃に、対処しきれていない。
時間の問題でパイモンはテトナに八つ裂きにされる。
その間1秒ほどの攻防だ。
「くっ、なんてやつ…。アマイモン!!」
「お待たせ」
テトナの動きが急にスローモーションになる。
足元にはアマイモンのものらしき魔方陣。
「空間をねじ曲げる能力だ。だが、テトナのパワーで動きを完全に止めることは出来ていないようだがまずい。致命的だ」
「普通なら体がネジ切れているはずだが、恐ろしいやつ…。固めて恒星にでも投げ入れてやるか」
「させるか」
俺とリルレが荷電粒子砲を撃つ。
惑星を破壊出来るほどのフルパワーだ。
こんな船どうなったって俺たちは知ったことではない。
射線上にいる味方は何とか避けるだろう。
今回の仲間で巻き込まれるような弱いやつはいない。
「む?」
何と、俺たちの荷電粒子砲までねじ曲げ、やつらの手前で上方へと軌道が変わっている。
そのせいで俺たちのいる区域が消し飛んでしまった。
「何て威力なのかしら…。お返しするはずが、パワーがあり過ぎて方向を変えるだけで精一杯だった」
「それだけで上出来だ。あいつらは最強七人だ。オリエンスも呼べば良かった」
「モード『ドラゴン』」
「何ッ!?」
テトナが見る見る大きくなり、4mほどの黒い竜となり、足下の魔方陣を引きちぎった。
「ッ!!! こいつ!?」
テトナは俺たちと違い、高次元知的生命体ではなく魔獣と融合している実験体だ。
モード『ドラゴン』となり完全融合を果たし、魔獣の力を解放出来るのだ。
「アマイモンッ!! 合結界だ!!」
「了解」
一瞬でやつらとテトナの間に何重もの金属の分厚い壁が出現し、その壁と壁の間には恐らくアマイモンによる空間を歪める魔方陣を挟んでいる。
更にテトナの胴体をパイモンの立方体が包み、その周りにも魔方陣が複数出現した。
さすがは四天だ。
もしかしたら、このパワーは機動戦艦であるゼウスをもペチャンコにしてしまうかもしれない。
それくらいのパワーを感じる。
だが、ドラゴンとなったテトナの動きを完全に封じることは出来ていないようだ。
さすが暴虐だ。
「グォオオオーーーッ!!!!」
テトナが咆哮し口から超高出力の荷電粒子砲を放射した。
俺やリルレのよりも強力だ。
テトナは普段は荷電粒子砲を撃てないが、モード『ドラゴン』になると何でもありになってしまう。
次々と結界の層を破壊していく。
デタラメなパワーだ。
俺たちも黙ってはいない。
敵の上空の左右に俺とリルレで挟み込み、俺たちも荷電粒子砲を放つ。
ビッグバンのような強烈なエネルギーの奔流の嵐。
さすがの四天でも消滅は免れないだろう。
…と思ったが、あれだけの攻撃の中生き残っていやがる。
なるほど四天とは、ここまでか…。
テトナが何と、自分を封じている金属の立方体を引きちぎり、敵に切迫する。
「いつまでもこいつらだけに時間は割けられない。トオル、リルレ、やつらはテトナに任せて我々は魔王のところに行くぞ」
ちょっと後ろ髪引かれたが、またテトナなら何とかするだろうと思い直し、俺たちは足下の装甲を突き破り、更に深い階層へと下って行った。
超絶な戦いはまだまだ続きますじゃ。




