88本目
暑い…。
毎日めちゃくちゃ暑いですね。
おかげでデコが光って目立つんですよ。
そんなキラキラしてアクセサリーかっつーの。
電車の向かいに座ってる女子、頼むからあまりデコばかり見ないでくれますか…?
「やめろ!! テトナ、もうやめろぉ!!!」
いくら叫んでもテトナには聴こえてないようだ。
見えない檻…恐らくテトナの張った結界のせいで、俺の声は届かないのだろう。
このままでは、みんな殺られてしまう…。
しかし、テトナは博士が何とか抑えているから拮抗しているが、イウのやつ…魔剣を使って次々と元仲間の第二世代たちを殺してやがる。
もうエオカを含め、第二世代は6~7人しか生き残ってない。
あいつ…エオカやシスが殺されたと洗脳されてるみたいだが、それにしても容赦ない。
「イウ、止めて!! わたしは無事だ!! わたしもシスも死んでなんかいない!!!」
エオカは今にも飛び出してイウの凶行を止めたいようだが、リルレと協同して姫やマミムを守るために結界を張っているので動くことが出来ない。
イウにはエオカの必死の訴えも耳に入らないようだ。
どうする?
俺はどうすればいい!?
必死に頭を回転させる。
が、今の俺には物理的に何も出来ない状態だ。
すると、また別の所の空間が裂けた。
そこから、黒ずくめの魔人たちやバスターデーモン、それと大量のゾンビたちがわらわらとこの空間に入ってきた。
上空にはいつの間にか現れた衛星兵器であるコカビエルが10機ほど見える。
最悪だ!!
コカビエルから強力なレーザー攻撃が雨のように降り注ぐ。
「うわッ!!!」
俺の結界にも当たるが、今のところ何ともない。
心臓の鼓動が激しくなる。
死の恐怖が俺を支配し、涙と震えが止まらない。
だが、戦いを見続け何とかチャンスを掴まなければ…。
必死で歯を食いしばり、頭を抱えてうずくまりそうになる自分を理性で抑える。
魔人たちはコカビエルがなければ存在が難しい。
それに気付いた生き残った第二世代のうち3人が、コカビエル目掛けて飛んでいった。
が、その前に魔人ふたりが立ちはだかり、超速の戦いが始まる。
第二世代の能力は、パワーこそ第一世代に劣るものの、チャクラに埋め込まれた霊子力エンジンにより魔法が使えたり飛べたり、更にリルレほどではないが荷電粒子砲を放ったりと、かなりオールマイティだ。
それだけの力を秘めた3人の第二世代の攻撃を、たったふたりの魔人で凌いでしかもその残忍そうな顔に余裕が見える。
まさか…四天か!?
超絶な力を持つ四天の力は、第一世代の圧倒的なパワーをも凌ぐ。
不味い…不味いぞ。
テトナ対博士。
イウとバスターデーモンたち、及びゾンビ軍団対第二世代たち。
更に魔人ふたり対残りの第二世代たちの戦いの構図が出来上がっていた。
その天変地異の戦いは、一見して拮抗して見えるが、徐々に確実にこちらが押されているのがわかる。
そして、気付くと魔人ひとりとバスターデーモン一体が俺に近づいて来た。
こ、こえ~~~!!
そのバスターデーモンにゾンビたちが群がり、次々と吸収され更に大きく凶暴な感じとなる。
俺の結界にスーパーバスターデーモンが憤怒の表情を浮かべ、咆哮とともに巨大な拳でメガトン級のパンチを打ち付けてきた。
凄まじい衝撃が結界内にも伝わってくる。
「うぎゃぁあああ~~~ッ!!!」
恥も外聞もなく、恐怖のあまり叫ぶ俺。
結界のおかげで怪我はないが、それもいつまで持つことやら…。
テトナか博士が俺の危機に気付いてくれることを期待しているが、ふたりは惑星くらいなら破壊せんばかりの超絶戦闘中で、守ってくれそうにない。
「おいおい、お前か、あのトオルの生まれ変わりってやつは?」
魔人が俺を覗きこみ、ニヤニヤ笑いながら話しかけてきた。
身長はそれほど高くないものの鍛え上げられ、圧縮されたような筋肉を纏ったなかなかのイケメン魔人だが、性格は悪そうである。
「なっさけねーなぁ。俺は敵ながらトオルの凄まじい強さと決して退かない根性に、尊敬の念を抱いていたんだぜ~」
知るかーーーッ!!
俺は好きでトオルなんかの生まれ変わりやってるわけじゃねえんだよ!!
だが、相手に完全に飲まれ反論も出来ずに震えていた。
「やれやれ、めちゃくちゃビビってやんの。俺はお前みたいに弱いゴミが大嫌いでな。何でお前をイブリース様が警戒するのかわからねーが、ま、取りあえず死んでくれや」
俺から少し離れ、魔人はスーパーバスターデーモンに指で指示する。
またもや、メガトンパンチだ。
強烈な衝撃。
「ひぃッ!!!」
股間から液体が…。
敵に情けない姿を晒したくないが、俺だって死にたくない!!
怖い。
超怖い…。
さっきイウの手によってバラバラの肉片にされた第二世代たちのことを思い出す。
勇敢に戦って死んだ彼女たちを称える余裕も同情する余裕もない。
ただただ、もうすぐ俺の番だという恐怖だけだ。
よく見ると、空間にヒビみたいなのが見える。
多分次の一発で結界は壊れて、俺はたはだの肉塊と化すだろう。
ふざけんな!!
死にたくねえ!
やれることはやってやる。
出来るかどうかわからないが、結界が壊れる瞬間に前に転がればもしかしたらパンチの直撃を避けられるかもしれない。
俺はスーパーバスターデーモンの拳を注視した。
ミスは死だ。
ヨガで集中しろ!!
俺は急に冷静になっていた。
「ほう…」
魔人が感心したように顎に手をやる。
俺は弱い。
弱いが、それは仕方のないことだ。
だが、弱いからただ黙ってやられるのとは違う。
サイボーグ化された地球人たちのように強くはないが、俺には考えて工夫出来る脳があるんだ。
それに、これまでだって絶望的な死地を乗り越えてきたんだ。
出来る。
俺ならこの場を生き残れる!!
「おい、殴るのは止めろ」
魔人がスーパーバスターデーモンに命令する。
え?
もしかして、俺の勇気を称えて見逃してくれるのかな?
期待が俺の胸に広がる。
「パンチじゃなくて、荷電粒子砲にしろ。こいつ何か策を練ってやがる」
はい?
荷電粒子砲?
ダメじゃん。
もう死ぬの決定じゃん。
亜光速の攻撃なんか見切れるわけないよね。
スーパーバスターデーモンの両手の間にどんどんエネルギーが溜まっていく。
「お、おい!! お前、俺のことがそんなに怖いのか!?」
思わず俺は口走ってしまう。
こんなこと言っても無駄だろう。
こいつはかなり冷静な魔人だ。
俺の言葉には耳を貸すまい…。
「はぁ!? お前何言ってんだぁ? お前みたいな弱っちいやつが怖いわけないだろ」
おっ!?
意外にもかかったぞ!!
何とか話を続けるんだ!
「ははーん、さてはお前口ほどにもないだろ。俺と戦うのが怖いから、あのバスターデーモンに代わりにやっつけてもらうんだろ?」
「ちょ!! んなわけねーだろ!! このレライエ様は強い! それは本当だぞ!!」
「あー、はいはい。じゃあさ、証明してくれよ。口では誰だって何とも言えるからさ。な、レライエ様よ」
「この野郎…。どうしろって言うんだ?」
「俺と正々堂々と戦えよ。この結界を壊してくれ。おっと、あの頭の悪いバスターデーモンは黙らせな。レライエ様自らの手でこの結界を軽く壊してから、俺と殴り合いの勝負しようぜ。まさか怖くて怖くて出来ないってんじゃないよな? まあ俺が怖いのも仕方ないさ。魔王だって俺のことビビってるんだからなぁ~」
「この野郎!! 面白え! お前なんか瞬殺してやるよ!!」
レライエが拳を結界に叩きつけ、見事に破壊した。
確かにこいつの筋肉は伊達じゃないようだ。
が、俺の方が一枚上手だぜ!!
俺はレライエの隙をつき肛門に手をやり、腸内の消化物をひり出してそれをやつの顔に叩き付けた。
「ぐぉッ!? な、何だこれは!? くさッ!! 目が!! 目がぁあああ~~~ッ!!!」
一目散に俺は比較的安全そうなリルレたちのいる方へとダッシュする。
わーい、バーカバーカ。
やったぞぉ~~~ッ!!
取りあえず命の危機を乗り越えた俺は、完全に油断していた。
次の瞬間、俺の腹から下が消失する。
レライエか!?
確かめる術もなく、俺は………。
え?
何この展開?
どーすんだよ、このあと。
全部思い浮かびません。
どうしよう…?




