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82本目

マルフェス編が終わって少し一息。

あのクソ魔人の件で俺はすっかり疲弊してしまい、しばらくはゆっくりすることにした。


洗脳された博士に破壊されたヘルメスの修復作業もあり、どのみち俺たちは動けないでいた。


俺たちの故郷である地球を何とか取り戻さないといけない。


そして、俺は一刻も早くマミムの体を元に戻してやりたかった。


サイボーグの技術で日常生活に支障はないようだが、生身の元の体がいいに決まっている。


…そういや、フェニは体を元に戻したとか言ってたな。


あいつの能力ならマミムの体を元に戻せるんじゃないか?


俺はベッドから起き上がり、重い体を何とか奮い立たせ、フェニを探すために部屋を出た。


どうせ姫と一緒だろうと、姫の部屋に行きノックしたが反応がなく、食堂に向かう。


食堂には、姫、エク先生、コサさんが3人で談笑しながらお茶を飲んでいた。


フェニは姫の足元でおとなしく丸くなって寝ている。


『あら、サトル様、もうお体は大丈夫なのですか?』


エク先生がいつものひまわりのような笑顔を向けて、俺に言った。


あー、癒される。


ペッボレゲセ人のエク先生は取り分け美人というわけではないが、笑顔が可愛くて守ってあげたくなる人だ。


…まあ、実際には俺なんかよりもはるかに強く、第一世代(ドミニオンズ)でも格闘戦なら勝てなかったりするわけだが。


「だいぶ良くなったよ。心配ありがとう」


「何やらわたくしたちもせっかく駆けつけたのに、全然お役に立てなかったようで申し訳ございませんですわ」


コサさんが丁寧にお辞儀しながら謝る。


ホントに上品な人だ。


「淑女」のふたつ名があるだけのことはある。


「いえいえ、コサさんたちが来てくれたおかげで凄く心強かった。ありがとう」


コサさんが照れて顔を背ける。


モデルみたいな超美人な黒人だが、可愛い。


『わたしもサトル様には大変ご迷惑をかけてたみたいで、申し訳ございませんでした!!』


姫がペコペコ俺に謝る。


まさか、記憶が…?


ちらっとフェニを見ると、フェニはかぶりを振った。


ホッと安心する。


記憶はないが、俺が怪我していたので頭のいい姫は何か想像したのだろう。


「姫、全然迷惑なんかかけてないぜ。安心してくれよな」


嬉しそうな悲しそうな顔をする姫。


可愛いぜ、姫!!


『何か用があったんじゃねえのかー?』


フェニがどうでもよさげに訊くが、こいつはこいつで気を使ってくれてるってことか。


「あぁ、お前と話があるんだよ。ちょっといいか?」


めんどくさそうに立って、珍しく飛んで俺の肩に止まった。


俺たちは食堂を出て、特に目的地も決めずにブラブラ歩きながら話す。


「なあ、お前さ、みんなの体を元通りにしたって言ってただろ? あれって治療したってことなのか?」


『正確にはそうじゃねえ。俺には宇宙の記憶…つまりアカシック・レコードにアクセスする能力があることはわかっただろ?』


「あぁ。そのおかげで真実を見抜いたり未来を予知することが出来るんだよな?」


『未来は一方向じゃねえから完全に予知するというわけじゃねえが、まあそんなところだ。俺は対象が生体なら、肉体の過去を読み込んで元に戻すことが出来る。だから俺はフェニックス…不死鳥なんだよ』


「マジか…。すげぇ……」


『この能力ははっきり言って反則だ。俺には他にも色々能力がある。だから、お前のことを見極めたかった。…今までお前に意地悪したりして悪かったな』


素直に頭を下げるフェニ。


え?


こいつ、こんな殊勝でいいやつだったの?


マジ?


「あのさ、訊きたいこと…というか、頼みたいことがあるんだ。マミムの体を元に戻せないか? あいつギュナイドゥンで手足を女王に食べられてなくなってしまったんだ」


『もちろん出来るぜ。ただな、俺の能力は代償が伴うんだ。例えば、みんなをあのいけ好かない魔人に犯される前の肉体に戻したろ? そのあとあいつは死んだ。あれはあいつがしたことに対する代償なんだ。そして、あいつは存在したことすらなくなる。だから、分岐の選択に関わった俺たちだけがかろうじて覚えてるんだ。それも既に忘れかけてる』


そういや、俺はもうあの魔人の姿や名前が思い出せなくなっている。


あいつ…何て名前だっけ?


どうしても思い出せない。


「ちょっと待て。あいつを殺したのは俺だぞ?」


『過程はな。仮にあのときお前が殺さなくても、あいつは死んでいた。未来の分岐はどこに進んでもあいつは死んでいた。みんなを元に戻した代償なんだ。何にもなく世界を変えることなど不可能だ。物質保存の法則ってのを知ってるか? あれと似たような原理だ。なので、マミムの体を元に戻すには何かを代償にしなければならない』


少し恐怖を感じた俺は、音を立てて唾を飲み込んだ。


「代償って…例えば?」


『お前の手足だ。お前が昆虫に食われたことになる。あとな、あれから今まで起こったことがガラリと変わってしまうぞ。分岐が遠すぎる。お前がその後の戦いに参加出来ないせいで何人か死ぬし、オススメはしない。悪いことは言わねえから、マミムの手足は地球を取り戻してからにしとけ』


リスクがさすがに大き過ぎる。


ここはフェニに従うとするか。


フェニの能力を使うときは、何かが起きてすぐの方がいいようだ。


歩いていたら、何となく修理中のヘルメスのあるドックまで来ていた。


そこに、博士やリルレ、ワヲン、エオカやシスもいて修理を手伝っていた。


原因となったあの魔人の存在が消えるなら、ヘルメスも直るのでは…?


疑問をフェニに投げかけた。


『俺の能力は過去を改変するのに近いが、完全じゃない。元に戻せるのは霊子のある生体だけだ。なので、この戦艦は別の理由で壊れたことになっている。えーと、これは……博士とリルレの喧嘩で壊れたことになってるな』


「何じゃそりゃ!?」


『あー、くだらない理由で、お前が原因だ』


あー。


そーですか。


詳細は聞きたくもない。


まあ、とにかく一件落着だ。


フェニの能力のおかげで、俺たちに平穏な日常が戻ってきたわけだ。


あとはヘルメスの修理が終わり次第、地球を取り戻しに行かなくては。

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