74本目
とうとう自粛解除ですね~。
電車に乗るとホント小説が捗りますわ。
博士はヘルメスの艦外で作業をチェックしていた。
「博士、ちょっといいか?」
「ふん、ぼくちんと話すことはないな」
…まだ怒っているようだ。
そんな博士も可愛いが、今はそれどころではない。
何せイケメン魔人が基地内に侵入し、しかもその目的が我々と共闘するための交渉だというのだ。
ここは是非博士に論破してもらい、イケメンをボコボコにして欲しい。
「やあ、ニヌ。マルファスだよ」
マルファスがウインクしながら博士に挨拶する。
え?
何それ?
初対面なのにめちゃくちゃ馴れ馴れしくないか、こいつ!!
しかも、ウインクが様になっててめちゃくちゃカッコいい。
死ね!
今すぐ爆死しろ!!
不細工ハゲの嫉妬はとどまることを知らない。
まあ、博士は男を見てくれで判断する女じゃないと思う。
さあ、博士!
このハイパーケツメドイケメンクソ野郎にビンタでも食らわしてやってくれ!!
さあ!!
「ん…誰だ?」
一瞬博士は訝しんだが、すぐに顔を赤らめパッと明るい表情になった。
「あら、マルファス! 会いたかった~」
そう言って博士はマルファスに抱き付いた。
俺を見てニヤリとするマルファス。
へ?
何これ?
何じゃこりゃぁあああ~~~ッ!?
会いたかったも何も、初対面だろ?
マルファスも、博士が美人らしいから会うのが楽しみだとか言ってたじゃないか。
一体どうなってる?
「ちょ、お前ら離れろ!!」
俺が力尽くでふたりを離そうとすると、博士の拳が俺の腹にめり込んだ。
「おぼぉッ!?」
「何だお前は!? いつの間にこの基地に侵入した?」
「は? 何言ってんだ博士!?」
「魔人か? 魔人にしては弱々しいな。今すぐ殺してやる」
「お、おい待て!! 俺がわからないのか? サトルだよ! 前世は博士の息子のトオルだったサトルだ!!」
「何言ってるんだ、お前は? 前世がトオルなのはこのマルファスだ。貴様、我々を混乱させるために来た魔人だな? だいたいお前みたいな不細工ハゲが美しかったトオルの転生した姿なわけないだろう」
はい?
何が起こっているのかわからない。
頭が真っ白だ。
「まあまあ、それくらいにしておきなよニヌ」
そう言って、マルファスは博士の肩を抱き、上から豊満なおっぱいを揉みしだく。
「あん…マルファスったらぁ」
聞いたこともないような甘えた声を出す博士。
「てめぇ!!」
カッとなり殴りかかろうとする俺を、博士がカウンターで蹴り飛ばした。
「うぶおッ!!」
息が…息が出来ない…。
博士が冷たい目で俺を見る。
「貴様は殺す」
俺に歩み寄ろうとする博士をマルファスが止めた。
「待ってよニヌ。こいつは魔王と戦うために共闘を申し込んで来た魔人なんだ。話くらい聞いてやろうぜ」
「お…お前…うぐっ…何言ってる…?」
「うん、マルファスがそう言うなら」
「じゃあ、みんなを集めてくれるか?」
博士は頷き召集をかけた。
みんな木星基地オモイカネ内の食堂に集まる。
「一体みんなを呼び出してどうしたの?」
マミムが博士に問う。
「あ、ハゲ! あたしはあんたのことまだ許さないからね!!」
「マ、マミム! お前は俺のこと覚えててくれてるんだな!?」
「は? 何言ってんの? …ところでそいつは?」
マルファスのことを指す。
「やだなぁ。俺だよマミム。マルファスだ」
「やん、あたしったら何でマルファスのこと忘れてたのかしら~?」
マミムが照れだしクネクネする。
何だこれ?
一体どうしたってんだ!?
「おい、マミム?」
「ん? 何このハゲ? 随分と馴れ馴れしいんだけど…」
「ッ!!?」
「いかん、みんな一旦この部屋から出ろ!! こいつは魔人で何らかの能力で人の記憶を操る!!!」
「ほう、気付いたか。だがもう遅い。リルレ、ワヲン、キク、シス、エオカ、俺だよマルファスだよ」
リルレとワヲンが目をトロンとさせて、マルファスに近づく。
「ああん、このゴミったら、いつもわたしをドキドキさせるんだからぁ」
「マルファス、好き!!」
「クソッ、てめぇ!!」
マルファスにまたも殴りかかろうとするが、今度はワヲンに阻止されてしまう。
「おっと」
「ワヲン、目を覚ませ! 俺だ!! サトルだ!!」
「…君なんて知らないけど?」
絶望が俺を包む。
今まで苦労して一緒に戦ってきた仲間が、こうもあっけなく敵の軍門に下るなんて…。
怒りで気が狂いそうだ。
このイケメン、マジでブチ殺してやる。
俺は近くにあった椅子をマルファスに叩き付けようとしたが、瞬間的にリルレに椅子を取られてしまう。
「貴様、マルファスに攻撃など万死に値する。死ね」
ヤバい!!
思わず目を瞑るが、いつまで経っても衝撃が来ない。
「あら~、みんな一体どうしちゃったのかしら?」
恐る恐る目を開けると、俺を庇ってリルレの蹴りをガードしてくれたキクがいた。
「キ、キク!! お前は俺のことがわかるのか!?」
「はい? 当たり前でしょ~。ツルリンのツルツル頭インパクトあるし~~~」
おーーーッ!!
なぜだかわらないが、キクにはマルファスの能力が効かないらしい。
「博士たちは一体どうしてしまったんですか?」
第二世代のエオカとシスも、有難いことにこっち側のようだ。
「チッ、お前全員の心掴んでおけよ…」
マルファスが忌々しげに俺に言う。
「なるほど、お前の能力が何となくわかったぞ。俺に好意を寄せてる女の精神を逆転させて操るのか」
つーことは、キクとエオカとシスは俺のことあんまり好きじゃないのね…。
ちょっと悲しいが、この場合それが功を奏したわけだ。
逆に言うと、博士たちはやっぱり俺のこと大好きだったのね…。
ちくしょー!!
絶対にこいつを倒して元通りにしてやるからな!
「あはは、大体合ってるよ。まあ、主要なこいつらが俺の味方になってくれたら充分だ。ニヌ、リルレ、ワヲン、こいつらはそこの魔人に操られてしまったみたいだ。魔人以外殺していいぞ」
「え? それはやり過ぎじゃないか? 仲間だぞ。しかも何で魔人は生かしておくんだ?」
ワヲンが戸惑う。
「まだ完璧ではないか…。流石は第一世代というわけだ」
マルファスが黒い顔で呟く。
こいつ、もはや爽やかさの欠片もないな。
「あぁ、冗談だよ冗談。キクたちは気絶させて、魔人には色々訊きたいことがあるから生け捕りにしたいんだ」
そう言って戦闘に参加しないマミムを引き寄せ肩を抱いた。
マミムは照れて顔が真っ赤だ。
マルファスはまた俺を見てニヤリとする。
あのクソ野郎!!
しかし…こいつが俺を生かそうとする理由は何だ?
恐らくは俺への愛情の反転なので、俺がいないと博士たちを操れないのだろう。
非常に限定的でリスクのある能力だ。
何とかキクたちと協力して、こいつを殺して元に戻してやる。
俺の心をマグマみたいな怒りが支配した。
イケメンクソ野郎が本性出してきました。
このクソをどうボコボコにするのか楽しみです!!




