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64本目

イウが両手を勢いよく前に突き出すと、エネルギーの奔流がヘルメスを襲った。


艦内を衝撃が走る。


「止めろイウ!! 俺たちは何もしてないぞ! さっきギュナイドゥンから帰ってきたばかりなんだ!!」


「貴様~~~、地球をめちゃくちゃにしたうえシスやエオカたちを殺した張本人のくせに、何を言うか!!」


何を言ってるんだこいつは?


完全にイカれてしまったのか…。


「イウ、わたしだ。我々はホントに帰ってきたばかりで、何で地球がないのかもわからない。説明してくれ」


「この魔王の手先がぁ~~~ッ!! おかしいと思ったんだ! 自分たちだけ地球を脱出したのは、こういう事態になるのを知っていたからだろう!!」


また艦内に衝撃。


ヘルメスは全長1000mはある巨大な惑星間機動戦艦だが、あんな小さな女の子の攻撃で翻弄されている。


これが第二世代(ヴァーチューズ)の力か…。


「話にならないな…。ヘルメス、グラヴィティ・プリズンだ。100ペタパスカルに固定。イウを閉じ込めろ!」


「ヒュポスタシス・ネームをお願いします」


いつもの女性の機械音声だ。


第一世代(ドミニオンズ)ニヌ・セアルティエル」


「声紋、位格、霊紋照合。ドミニオンズ、ニヌ・セアルティエルを確認しました。グラヴィティ・プリズン作動します」


モニターを見ると、イウの周囲の空間が歪んでるような感じだ。


「ぐ、ぐぉおおお…」


イウが立方体の何かに囚われてしまう。


以前魔王の衛星兵器であるコカビエルに受けた、重力波攻撃と似たようなものか。


「時間が経てば、イウはモード『ストラティオティス』を保つことも出来まい。頃合いを見計らって回収し、月に向かおう」


イウを回収しようとすると、ヘルメスのはるか頭上に巨大な魔法陣が現れる。


そこから見覚えのある全長20kmはあるであろう剣が出てきた。


これって!?


「魔剣ティルヴィング!! 荷電粒子カッターだ!」


「ヒュポスタシス・ネームを」


第一世代(ドミニオンズ)ニヌ・セアルティエル!! 急げ!」


亜光速で迫るティルヴィング。


荷電粒子カッターで攻撃しようとすると、今度はヘルメス近くに魔法陣が発生。


またティルヴィングか!?


この距離では間に合わない!!


しかし、魔法陣からは黒い巨大な手が現れる。


『これは貰っていくぞ』


どこまでも黒い低い声が脳に響く。


「まさか! 魔王イブリース!?」


博士が困惑した様子で言う。


イウはグラヴィティ・プリズンごとその手により奪われてしまった。


迫るティルヴィング。


が、間一髪荷電粒子カッターがティルヴィングを粉砕した。


あっぶね~~~!!


「今の手は何だったんだ!? イウが奪われてしまったぞ!」


「恐らくは魔王だ。…やつめ、復活したのか」


博士が吐き捨てるように言った。


あれが魔王…。


とうとうおでましか。


気付くと体が震えていた。


恐怖か…?


くっ、収まれ!!


俺は太ももを拳で叩いた。


それがきっかけのように、またヘルメスを中心として、周囲に魔法陣が出現する。


中から出てきたのは、衛星兵器のコカビエルだ。


そしてヘルメスの前に黒い人物が現れる。


一瞬イウかと思ったが、今度は間違いなく魔人だ。


泣いてる骸骨のような仮面を被っている。


イウのように華奢な体をしているので、女性なのかもしれない。


極炎のオリエンスも笑ってる骸骨の仮面を被っていたが、これはもしや…!?


四天(リゾーマタ)のひとり、(ゼロ)のアリトン…。わたしの後釜だ」


博士が言う。


博士も元は四天(リゾーマタ)のひとりだった。


確か、華水のアリトンとか呼ばれていたようだったが、四天(リゾーマタ)のアリトンとかオリエンスとかは称号なのかもしれない。


『先輩先輩先輩ぃ~~~。会いたかったですよ先輩ぃ~~~。オリエンスさんが死んじゃったので、また戻ってきてくださいよぉ~~~』


声からするとやはり女の子か。


泣き骸骨の(ゼロ)のアリトンがくねくねしながら言う。


「エギュン…いやアリトン。久しぶりだな。戻るわけにはいかない。お前もこの場で倒させてもらうぞ」


『やだなぁ~~~。ボクを倒せるのは偉大なイブリース様だけ。イブリース様の加護から抜け[魔]の力を失い、中途半端にしかモードを変えられない先輩にボクを倒せるわけないじゃん。もうひとりのリルレってのもボクの敵じゃないし、これって絶望的じゃないですかぁ? 悪いこと言わないから戻ってきてくださいよぉ。戻って来るなら、他の人たちは見逃してやってもいいんですよぉ~~~』


「荷電粒子カッター撃て!」


「ヒュポスタシス・ネー」


第一世代(ドミニオンズ)ニヌ・セアルティエル!!」


ヘルメスが近距離で両腕から荷電粒子カッターをアリトンめがけて発射した。


容赦ないな、博士は。


しかし、泣き骸骨は何ともない様子でその場にいた。


『全ての粒子の運動を意のままに止めることの出来るわたしの(ゼロ)の能力を忘れましたか~?』


何だその反則的能力は!?


しかし、極炎も恒星の熱を右手だけという縛りがあった。


高い能力には、必ず何か代償のようなものがあるはずだ。


「お前の弱点は既にわかってるぞ、アリトンよ。グラヴィティ・プリズン作動」


なるほど、波である重力波を利用した攻撃ならアリトンの(ゼロ)の能力でも防ぎようがないはず。


『先輩ぃ~~~。可愛いなぁ。そんな幼稚な攻撃への対策なんて練ってるに決まってるじゃないですかぁ~~~』


ヘルメスから発せられる重力波による牢獄がいつまでもアリトンを閉じ込めることがない。


「コカビエルの重力波攻撃で中和しているのか!?」


『あはは~、そーゆーこと。じゃあこちらからも攻撃するねぇ~~~』


アリトンがヘルメスの腕に接近し触れる。


「不味い!!」


急に艦内の電源が落ち、ヘルメスが停止する。


これもやつの能力なのか!?


触れただけで!?


艦内に強烈な連続的衝撃が来る。


「コカビエルからのレーザー攻撃だ! このままだとバリアが張れずにヘルメスは破壊されてしまう!!」


段々異様に寒くなって来てないか?


息が白い。


そこら中凍ってる!?


そうか、原子の振動も恐らく止めてるので、絶対零度で凍ってきてるのか!!


いまだかつてない戦慄に襲われる。


しかも、エアコンダクターも止まってるってことは、息が…。


間違いない!!


こいつは最強の敵だ。


一体…一体どうやってこの絶望的な状況を打破する!?


俺は必死に思考を巡らせた。

ヤバい…。

どうやってこんなやつ倒すんだろ…?

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