62本目
更新が長期に渡って滞ってしまい、申し訳ございませんでした!!
また、これから再開です!
博士とリルレの喧嘩に巻き込まれ、重傷を負った俺は、マミムと同様生命維持装置として機能する本来はワープ中に体内の霊子の消費を防ぐためのカプセルの中で目が覚めた。
あー、よく死ななかったなー。
まだワープ可能な領域であるブラックホール・スポットに到達していないようだ。
カプセルから出て、隣のカプセルで眠っているマミムの様子を見る。
何らかの処置で強制的に睡眠させられているせいか、穏やかな顔で寝ていた。
が、手足が女王に食べられてしまい、なくなってしまっているのが何とも痛々しい。
「マミム、待ってろよ。もうすぐ地球に帰れるからな」
手足はないが、こうして見るとやはりマミムは可愛い。
こいつの性格何とかならないものだろうか…?
ブリッジに行くと誰もおらず、みんな食堂でお茶を飲んでいた。
「ゴミ、目が覚めたようですね。一体どうしてこんなことに…?」
いかにも心配してたかのような様子でリルレが言う。
お前だよ、お前!
お前がやったの!!
「死にかけてたが、何とか蘇生出来て良かった。理由はわからないが、わたしの技術力に感謝して欲しいな」
博士はなぜか誇らしげだ。
いやいや、そもそもあんたとリルレの喧嘩に巻き込まれたんだけど!?
つーか、俺死にかけてたんかい!!
まあ、言ってもしょうがない。
少し溜め息をつき、訊いた。
「なあ、あとどれくらいで地球に帰れるんだ?」
「あと1日くらいでギュナイドゥンのブラックホール・スポットに到達するから、地球のブラックホール・スポットから地球までだいたい3日くらいなので、4日といったところか」
「そうか。その間マミムは大丈夫なのか?」
「安心しろ。手足以外は完治して止血もしてあるし、生命維持に問題ない」
「なら良かった」
大丈夫だと聞いたのだが、つい心配して訊いてしまう。
安心したところで、腹が減ったな…。
「腹減ったし、料理でもするか。みんなも食べるか?」
「無論だ」
と博士。
「ゴミ料理か…。体内からわたしを汚そうという作戦ですね。興奮します」
この人何なの、ホント…。
『あ、そしたらわたしもお手伝いさせてください! こう見えて、料理が得意っぽいんですよ。やったことないですけど!!』
姫が自分の腕を叩きながら言った。
得意っぽいって何?
したことないのに、何でわかるの?
まあ、いいや。
野菜の皮剥きくらい出来るだろ。
『お前の料理なんか食いたくもねえが、仕方がねえ。食ってやるからありがたく思えよー』
クソ鳥が寝言を言う。
てめえを料理すんぞ、こら!!
さて、何作ろうかな~。
ギュナイドゥンではあまり食えなかった肉だな、肉!!
たんぱく質が不足しているのは明らかだ。
人間の乾燥重量の70%はたんぱく質である。
たんぱく質不足は、全ての器官の劣化を促してしまう。
体内で起こる化学反応のことを代謝というが、代謝するための媒介はたんぱく質から成る酵素だ。
そして、最も効率よくたんぱく質を摂取する手段は肉を食うことである。
魚でもいいが、魚は量が少ないからな。
が、魚に含まれているEPAやDHAは重要な不飽和脂肪酸であるから、もちろん両方食べることが健康への道だ。
俺はステーキの、トマトソースがけを作ることにした。
トマトでリコピンも摂れるし、俺は加熱したトマトが大好きだからだ。
地球から持ってきた、牛肉の肩ロースの塊を使う。
放牧してた牛のせいか、赤身が多く硬そうだ。
そこで、厚み5cmくらいに切った肩ロースをギュナイドゥンから持ってきた、カットしたパイナップルに似た果物で挟む。
これは勘だが、このフルーツを食べたときに喉が少しイガイガする感覚があったので、消化酵素の作用だと当たりを付けたのだ。
一部の果物の酵素は、たんぱく質を分解するため肉を柔らかくする。
しばらく挟んでる間に、別の料理を作ろう。
付け合わせの野菜である。
サラダと蒸した野菜ならステーキに合うはずだ。
こうしてる間に姫に人参の皮剥きをお願いしておいた。
別に皮ごと食っても問題ないが、姫に何か仕事を与えないと。
「姫、出来たー? …うわぁあああ~~~ッ!!!」
様子を見ると、そこには阿鼻叫喚の世界が広がっていた。
めちゃくちゃに解体された人参、天井に刺さった包丁、散乱した調理器具、そして…血塗れで倒れている姫。
「ひ、姫! 何があった!?」
『あとは…よろしくお願いします…』
力尽きる姫。
俺は慌てて博士を呼び、姫を手当てしてもらう。
姫は…姫は…少し指を切っただけみたいだ。
指を切ってパニクっただけの様子。
…うん、もう二度と姫には包丁を握らせないようにしよう。
散らかった台所を片付け、料理再開!
手際よくインゲン豆、人参、玉ねぎを切って鍋に加熱する。
そして、フライパンを加熱し牛脂で油をひく。
柔らかくなった肉を更に包丁の背で叩き筋を切り、塩と胡椒をふり熱を強めにして表面に焼き目が付くまで熱する。
これはメイラード反応といって、熱により表面のアミノ酸と糖が結び付くことにより起きる現象で、こうすることにより肉の表面を締め旨味を逃がさないようにするのだ。
両側の表面を1回ずつ焼き、皿に移して蓋をする。
こうすることにより、余熱で中まで温めるためだ。
これを人数分繰り返す。
一応ムカつくがフェニの分まで作ってやる。
あとは盛り付けして完成だ。
予め作っておいたトマトソースをここでステーキにかける。
それと、最も肝心なものを用意する。
酒だ。
博士が作ったエタノールを炭酸水で薄め、ギュナイドゥンで手に入れた柑橘類を絞って入れる。
フェニは水でいいだろ。
博士とリルレの分は薄めにしておく。
さて、食うか!!
「みんなの分あるな?」
『サトル様…足を引っ張ってごめんなさい!』
上目遣いの姫朝可愛い!!
全然許しますとも、えぇ。
これがマミムなら殺してるところだが。
…マミムにも食わせてやりたかったな。
「では、乾杯!!」
「「「かんぱ~い!!!」」」
ぐいっと特製サワーを飲む。
ぶはぁー、超うめえ!
柑橘系の爽やかな香りが口の中に広がり、炭酸の刺激とともに胃の中に入っていく。
全身が潤う感じがする。
「この酒前作ったものより美味いな。何を使ったんだ?」
博士が訊く。
「名前はわからんがギュナイドゥンで手に入れた柑橘系の果物の汁を絞ってみたんだ。正解だったな」
俺は飲み干してしまったので、すぐに2杯目を作る。
姫も飲み干したようなので、もうひとつだ。
姫は結構酒が強い。
ギュナイドゥンでは酒飲まなかったから、たまんないわ。
さて、ステーキだ。
ナイフとフォークを使い一口サイズに切って口に運ぶ。
うん、柔らかい!!
口の中にたっぷりと肉汁の旨味が広がる。
トマトソースの酸味が、肉の脂をしつこく感じさせない。
うんめぇ~~~。
「ゴミの料理があり得ないことにわたしの舌を魅了してますね。ゴミのくせに」
やめて。
何かゴミ食ってる気になるから。
『ホント美味しいです、このステーキ! サトル様はいい旦那様になりますね~。あ、わたし何言ってるんだろ!?』
顔を赤くする姫。
酔い過ぎたのかな?
あー、顔の赤い姫も可愛いなぁ。
『いい気になんなよ! 超不味いぜ!! まずっまずっ』
そう言ってガツガツ食うフェニ。
じゃあ食うんじゃねー!!
今度はお前を食卓に出すぞ!
まあ、そんなこんなで久しぶりに楽しい俺たちだけの宴だった。
マミムが復活したら、また料理してやろう!
俺はそう心に誓った。
料理好きなので、たまには料理話を!




