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45本目

『ようこそ、聖地アステへ』


エク先生は、ひとりひとり丁寧に握手した。


とても温かくて柔らかい手だ。


『なるほど…皆さん素晴らしい素質をお持ちですね。ただ、その素質を活かしきれてないのも事実。外に出て、ひとりひとりの特質と課題をきちんと確認しましょうか』


「特質…?」


個性みたいなものか?


『はい、その通りですよ、サトル様』


うわっ、ペッボレゲセ人って意識で話すから、俺の意識を読んだのかな?


「エク先生は、読心が出来るんです。驚きましたでしょ? ペッボレゲセ人だから出来るというわけではないのですよ」


コサさんがにこやかに言う。


確かに姫やモジャ首相と話していても、思ったことを読まれるということはなかった。


それに、俺はまだ名乗ってなかったな…。


『ふふ、いたずらが過ぎましたね。さて、皆さん外へどうぞ』


エク先生とコサさんに連れられて、全員外に出る。


修行してた人たちも一旦中止して、興味深々で俺たちの様子を見ている。


『では、わかりやすく、ひとりひとりわたしと勝負していただきましょう。武器の使用は控えてくださいね』


「面白いですね。では、わたしから参りましょう」


リルレがエク先生の前に立つ。


俺たちは、勝負を邪魔しないためふたりを囲むように移動した。


先日、魔人相手に圧倒したところだ。


ペッボレゲセ人は、ノーマルな俺みたいな地球人の俺よりもはるかに弱い。


大丈夫だろうか?


見た感じ、エク先生は普通の…いやどちらかというと華奢な感じの女性だ。


『あなたの荷電粒子砲を使わなければ、本気で構いませんよ』


「わかりました。死んでも知りませんよ?」


穏やかに頷くエク先生。


そこに驕りのようなものは見えない。


あくまで自然体だ。


「では…」


瞬間リルレが消えたかと思ったら、轟音とともにエク先生の足下に腕を取られ叩きつけられていた。


「なッ!!?」


俺たちも驚いたが、投げられたリルレ自身も信じられないといった様子だ。


第一世代(ドミニオンズ)の超スピードの攻撃を、かわすだけでなく投げた。


リルレは接近戦は得意ではないらしいが、それでも通常の魔人では全く歯が立たないほどのスピードとパワーがある。


しかも、相手は貧弱なペッボレゲセ人の華奢な女性だ。


ちょっと意味がわからない。


『リルレさんの霊子特質は[風]ですね。でも、いつも[火]のように戦っているので、もっと右腕の強力な武器に囚われず自由な発想を拡げながら戦うといいでしょう。風は自由なものですから』


「ッ!! わ、わかりました。ありがとうございます」


リルレが立つのを手伝おうとして、よろけてしまうほど非力な先生だが、あのリルレを倒してしまったのな紛れもない事実だ。


「では、次はわたしが行こう」


博士だ。


ん?


何か博士がブレて見える。


ゆっくりエク先生に歩み寄ってるように見えるが、いつの間にか博士が3人…5人と増えている。


分身の術か?


『ほう、面白いですね』


なるほど、エク先生はどういうわけか相手の動きを先読みしていると考えられる。


そうじゃなかったら、リルレの超スピードに対応出来ないだろう。


博士は自分の分身を作ることにより、エク先生の感覚を混乱させようとしているのかもしれない。


博士の分身がエク先生を囲み、ゆっくり近付いていく。


エク先生に超スピードは通じないのと同時に、相手の力を利用して倒すので、いい作戦かもしれない。


博士なら…いや、俺でもペッボレゲセ人であり華奢な先生なら、勢いよく攻撃というよりは、こういった間合いの詰め方をしてからの低威力の攻撃の方が有効だろうと思う。


何せ、向こうは耐久力の低いペッボレゲセ人だから、手打ちのパンチでも倒せるだろう。


ましてや、博士は第一世代(ドミニオンズ)である。


もしかしたら、デコピンでも致命傷だ。


エク先生を囲んだ博士が間合いに入り、スッと抜き手を放った。


四方八方からの攻撃だ。


隙がない。


が、いつの間にか博士の輪からエク先生が抜け出し、分身のうちのひとりの博士の後ろに立ってる。


分身が全て消え、一体のみとなった博士がすぐさま後方に裏拳を放った。


しかし、リルレと同様またもや轟音とともに博士がエク先生に投げられてしまう。


「す、すげえ…!! あの博士を相手に…」


「くっ、しまった!!」


『ニヌ博士、あなたは[地]と[水]の混合ですね。地に足の着いた考え方もしつつ、流れを読んで応用が利き、非常にバランスがいいです。ただ、今は[地]の割合が多いので、決めつけを止めて[水]の部分を伸ばすといいと思います』


「…なるほど。心がけよう」


リルレに次いで博士までやられてしまった。


エク先生はとんでもない達人である。


「わたくしは以前先生に手解きを受けましたから、次はサトルさん、マミムさん、パニ姫の誰かでお願いしますね」


そっか、コサさんはここでそもそも修行してるからな。


するとマミムがしゃしゃり出てきた。


「ふっふっふ、わたしの出番のようね」


だから何でお前はそんな自信があるのよ?


リルレと博士が勝てなかった相手だぞ!


「武器は使っちゃいけないのよね~武器は」


『はい、そうですね』


エク先生がにこりと笑う。


エク先生は美人というわけではないが、笑顔が魅力的だ。


マミムが無防備に後ろに手を回して近付いていく。


え?


こいつ、背中にバール隠してやがる!!


注意する前にマミムがバールを振りかぶった。


「往生せいやぁ~~~ッ!!」


「ちょッ、おまッ!!」


『あらあら…』


エク先生が苦もなくマミムを投げ飛ばす。


「いったぁ~~~い! インチキしたでしょ!? 絶対そうよ!! じゃなきゃわたしは負けないもん!」


うわ~、超恥ずかしいから黙っててくれない?


お前がインチキだよ!


武器使うなって言ってるのに、何で使うんだよ!?


『マミムさんもお母さんと同じで[風]ですね。ただ、本能のままに動くのではなく、周りの状況とか読むといいのではないでしょうか』


武器を使ったマミムにもエク先生はにこやかにアドバイスしてる。


うわー、こんな優しい人いるのね。


つーか、マミム死ねよ!!


「お前、武器禁止っつったろ!! 何考えてるんだ!?」


「えー、だってさ。殺し合いにルールなんてないじゃん? 何であたしがこの人の決めたルールに従わなきゃいけないの?」


殺し合いじゃなく、レクチャーしてもらうためのテストとしてエク先生が相手してくれてるだけなんですが…。


こいつは完全サイコパスだな。

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