42本目
俺と王様が密談している映像が浮かび上がる。
『ペッボレゲセの国民全て死んでも構わない。わたしと姫の命だけ助けてくれれば…』
『安心しろ、魔王様は寛大だ。ペッボレゲセを明け渡せばお前と娘の命だけは助けてやろう』
『ありがとうございます』
王様が俺に土下座している。
何だ、この茶番は?
あり得ねえだろ、こんなこと!!
『バカな…!! 王であるわたしが国民を裏切ることなんて命に換えてもするわけがありません!!』
王様の絶望の声が聴こえる。
が、俺はそれどころではない。
首のワイヤーがどんどん絞まっていく。
頸動脈が切れ、血が吹き出る。
「か……は……」
も、もうダメだ!!
最後にマミムのおっぱい揉みたかったぜ…。
マミムを見ると寝てる。
あいつらしいや。
俺が死んだら少しは悲しんでくれるかな…?
博士もリルレも動じてないようだった。
助けてくれると思ったんだけど、俺が思ってたほどあいつらは俺が大事じゃなかったのか。
死……ぬ……。
「ふう、間に合いましたわね。遅れて大変申し訳ございませんわ」
ペッボレゲセ駐在のドミニオンズ、コサさんが俺の首のワイヤーを爪で切った。
「やっと来たか。間に合うとは思っていたがヒヤヒヤしたぞ!」
博士の声。
俺にすぐ寄ってきて、治療用ナノマシンを注射する。
あー、そっか。
博士もリルレもコサさんが来るのを待っていたのか。
『何だ貴様! 邪魔するな!!』
叫ぶジー。
「証拠不十分で、この裁判は無効ですわ」
『何だと!?』
「これをご覧ください」
コサさんが手を振ると、そこに魔法陣が現れ、中から真実の鏡そっくりの機械が出てきた。
あれ、これって魔法?
第一世代は使えないんじゃ?
そんなことよりも、真実の鏡だ!!
なぜ、ふたつあるんだ?
「こちらが本物の真実の鏡で、裁判で使っていたのは魔人が作った偽物です。本物はペッボレゲセ星系の太陽の中に隠されてました。探すのに苦労しましたわ」
『その真実の鏡が本物であるという証拠でもあるのか!?』
「もちろん、ありますわ。真実の鏡は霊子力を使ってアカシック・レコードにアクセスする機械ですが、本物には高次元生命体である未来予知の聖獣フェニックスがパンドラロックにより封印されております。なので、サトル様の血を両方の真実の鏡に垂らしてみればいいのです」
まず俺は、裁判で使われた方に垂らしてみる。
が、しばらく経っても何も起こらない。
次にコサさんが持ってきた真実の鏡に俺の血を垂らした。
『トオル様のDNAコードを確認。パンドラロック解錠。モード『フェニックス』解放。再構成開始』
フェニックスは鳥だからか、ペッボレゲセ人同様意識に語りかけてくる。
真実の鏡が分解され、再構築が始まった。
人間以外でも、パンドラロックってあったんだな。
1mほどの黄金色に輝く美しいサイボーグの鳥が現れた。
その美しさに、全員見とれてる。
すると驚くことに、ペッボレゲセ人たちの容貌が変わっていく。
みんな容姿が美しくなり、触角も長くなる。
モジャ大臣がめちゃくちゃマッチョに、そしてよりデカくなってる!!
姫が大きくなって、え、何これ、スレンダーな美人になっちゃってるんですけど!?
『こ、これは…!?』
ほんわかした雰囲気だった王様も、逞しく頼りがいのありそうなダンディなおじさんへと進化してる。
「あなたたちペッボレゲセ人は、高次元より飛来したフェニックスの影響で、触角が生え危険予知能力などを得るように進化しました。この宇宙のために更なる進化をフェニックスが促そうとしたところ、魔王に封印されてしまったようですわね。このことからも、裁判で使われた真実の鏡が偽物だとおわかりでしょうか?」
『こんなのトリックだ! あのサイボーグは嘘をついている!!』
そのとき、フェニックスがジーの頭の上に乗る。
ちなみにジーも何だかイケメンになってる殺してえ。
『な、何だ!?』
先ほどまでの映像の空中投影とは、比べ物にならないくらい臨場感のある景色が広がる。
そこには、ジーと黒ずくめのフードを被った人物が何やら話していた。
『ペッボレゲセの国民全て死んでも構わない。わたしと姫の命だけ助けてくれれば…』
『安心しろ、魔王様は寛大だ。ペッボレゲセを明け渡せばお前と娘の命だけは助けてやろう』
『ありがとうございます』
ジーがフードの男に土下座している。
これって、さっきの俺と王様のシーンにそっくりだ。
『こ、こここ、こんなの嘘だ!! あり得ないあり得ないあり得ないぞぉーーーッ!!!』
明らかに狼狽えるジー。
『ジーよ、まさかお前は父親のわたしまで…。わたしを王にする約束ではなかったのか?』
『パ、パパ、これは嘘の映像なんだ!! こいつらもわたしらと同じく捏造したんだ!!!』
『やはりそうか!!』
ダンディな王様が怒りを露にする。
「語るに落ちるとはこのことだ! 観念しろジー!!」
俺もジーに詰め寄る。
ジーが突然、偽物の真実の鏡に抱き付いた。
『お願いです! お助けください!! お慈悲を…お慈悲を~~~ッ!!』
どうしちゃったんだ、こいつ!?
「いけない! 離れるんだ!!」
博士の言葉に従い俺たちはジーから距離を取る。
すると、真実の鏡から巨大な昆虫のような足が無数に出てきた。
『ジー!! 離れなさい、ジーーーッ!!!』
ナー首相が叫び狂う。
裏切られても親なんだな。
だが、ジーはその足たちに取り込まれ動くことが出来ない。
『た、助けて!! 助けてパパァ~~~ッ!! 痛い痛い痛いぃーーーッ!!!』
骨の砕ける音や肉を咀嚼する音が聴こえる。
ジーは完全に偽の真実の鏡に喰われてしまった。
「魔素を確認。パンドラロック解錠。モード『デーモン』解放。再構成開始」
「ッ!! 魔人だ! まずい」
博士とリルレが俺の指を咥え、パンドラロックを解除する。
「モード『ソクラテス』」
「モード『ハルマゲドン』」
「わたくしは、もうあなたの血は必要ありませんわ。モード『ハルマゲドン』」
コサさんは自力でパンドラロックを解除出来るようだ。
第二世代と同じ能力である。
「ふぁ~、みんな何騒いでるのぉ~?」
マミムが起きてきた。
つーか、この騒ぎの中ずっと寝てたの?
逆にすげーよ!!
「マミム!! 魔人だ! みんなを連れて逃げろ!!」
「え? あ? 魔人!? わ、わかった!!」
マミムがみんなを外へ誘導してくれている。
「俺の名はヴァッサーゴ。イブリース様の命により、この星を内部から支配するつもりだったが、失敗してしまった。どうせアスーラの霊子の薄い場所では俺は長く存在出来ぬ。ひとりでも多く道連れにしてやる」
黒ずくめの、背中から無数の昆虫の足の生えた魔人だ。
オリエンスは笑った骸骨の仮面を被っていたが、こいつは素顔をそのまま出している。
肌も漆黒のように黒く皺だらけで、目が青く輝いている。
「ふたりは下がっていて。こいつはわたしがやるわ」
リルレが前に出る。
「わたしの可愛いゴミをよくも散々いじめてくれたわね。ゴミ未満のくず未満のクソ未満の灰にしてあげるわ」
ゴミに可愛いとかあるの?
「簡単にはやら…」
瞬間リルレがヴァッサーゴの頭を掴み、法廷の壁をその掴んだ頭でぶち抜いてどこかに行ってしまった。
いくつもの壁を破壊する音が聴こえたので、外に出たのだろう。
そして、地を揺るがす轟音が聴こえてきた。
右腕の荷電粒子砲だろうか。
ヴァッサーゴは蒸発したことだろう。
これが第一世代の実力か。
オリエンスやテトナは異常に強過ぎたのだ。
博士とコサさんが目を合わせて満足そうに頷いている。
こうして、俺たちはペッボレゲセでの危機を乗り越えた。
今回はホントにホントにヤバかった。
ヴァッサーゴは狡猾な魔人だった。
だが、俺たちは魔王にホワイトホール・エンジンの技術を盗まれることを見事防いだのだ。
とうとう10万文字越えました!
うおぉ~~~ッ!!
今日はお祝いに飲もうっと。
まあ、毎日飲んでますけど…。




