18本目
はぁはぁ…。
あのあとマミムからホントの水をもらい、1時間くらい経ってやっと落ち着いてきた。
まだ口の中がヒリヒリして、しかもガソリン臭い。
この時代の人間にはまともなヤツいないのか…。
まあとにかく、人格や常識のなさは置いておいて、この博士とかいうやつが知識人であることは間違いないようなので、色々と質問をぶつけてみることにした。
まだホントかどうかわからないが、2000年後の地球に関してもう少し詳しくなる必要がある。
あと、運命何たら装置を直してもらい、過去に戻って…少なくとも元の世界に戻って俺の周りの人間たちをここに連れて助けないといけない。
まあ、俺の時代…世界に本当に魔王とやらが侵略して来るとしたらの話だが。
可能ならば、魔王側の話の通じるやつとも接触したいな。
両方の情報を精査して、よく吟味し今後の行動を決めたいところだ。
神々とやらの人造人間たちが、俺が理性のあるゾンビと勘違いして、情報を得ようとしていたのもわかる。
そういや、あの人造人間たちが一体何者なのかも気になるな。
まあ、ひとつひとつ質問していくとするか。
「博士、この世界は俺の元いた世界の2000年後…つまり同じ地球だという話なんだが、大まかな歴史を教えてくれないか? どうしてこんな世界になったのか…」
「いいだろう、猿よ。わたしの話に果たしてお前の矮小な脳で理解出来るかわからんがね」
ハゲ、ゴミに続いて今度は猿か…。
何だっていいや、もう。
しかし、こいつらは人を見下さないと生きていけないんか…?
「この世界は、お前の時代から2000年後の地球で間違いない。今から2000年前、突如として現れた魔王や魔人たちにより、人類は壊滅的ダメージを受けた。人類だけでなく、人類自身がもたらした激しい気候変動もあったせいで、かなりの生物が絶滅してしまった。戦争のせいで気候変動が早まったというのもあるが…。我々がサイボーグなのも、魔王たちと戦うためと気候変動後の地球で生き残るための処置だ」
気候に関しては、確かに俺の時代から温暖化がどうのこうのと一部の人間たちが騒いでいたな。
「今は気候変動も収まったってことか? 随分のどかな印象を受けたが…」
「この大陸の一部は巨大なドームで覆っているので気候変動の影響を受けないが、他の大陸は水没したり自然環境が壊滅状態で人は住めん。また、ドームの外は魔王たちの技術で宇宙を構成する霊子自体をやつらのものへと変換させてしまっており、全く別の世界を構築してしまい、お前など1分と生きていられないぞ。なのでやつらと戦うには、改変された霊子の中でも活動出来るようにサイボーグになる必要があった」
レイシ…?
まあ、本筋から離れることを詳しく訊くのは控えるか。
「魔王って何者なんだ?」
「魔王は平行宇宙からやってきた異邦人たちの支配者だ。魔王や魔人とは我々が付けた俗称で、本人たちはアスーラと名乗っている。太古より、時々この世界に干渉していたようだ」
仏教の神で阿修羅ってのがいたな。
何か関連があるのかもしれない。
「やつらは何でこの世界に侵略してきたんだ?」
「どうも、やつらが元々いた平行宇宙に何らかの危機があり、こちらの世界に住むために侵略してきたようだが、やつらとはコミュニケーションが成功したことがないので推測でしかない。非常に高度な文明を持つようで、平行宇宙間の移動や霊子に関するものなど、我々などはるかに及ばない技術を所有している」
「そんなやつら相手によく今まで生き残れたな」
「実は我々もある程度霊子をコントロールすることに成功している。壊滅の危機にあったときに、高次元知的生命体と異星人による技術提供があったのだ。今でも協力関係にあり、何とかやつらと対等に渡り合い、ここ300年程は膠着状態だ」
つ、付いていけない…。
高次元知的生命体?
神みたいなものか?
異星人?
やっぱ宇宙人っていたんだなー。
まるでSFだな…。
わけわからんが、俺はラノベをよく読んでいたおかげで、世界観は何となく理解出来ているつもりだ。
とにかく、あんまり細かいことは後回しにして、本筋だけ掴むことにしよう。
「何で高次元生命体や宇宙人たちが、地球人に協力してくれたんだ?」
「我々人類の闘争本能の強さを利用したかったようだ。何せ、人類の歴史は戦争だらけで自らを滅ぼしかねないくらいだったからな」
「なるほど。魔王たちと渡り合うには宇宙人たちの技術と我々の闘争本能が必要だったわけか」
「猿の割にはまあまあの知能のようだな。さすがは救世主だと一応誉めておこう」
ねえ何なの、その超絶上から目線は…?
「そんな過酷な状況なのに、マミムだけ普通の人間なのは何でなんだ?」
「わ、わたしのこと訊いてどうするつもり!? このスケベ!!」
別に話の流れで訊いただけだよ、ボケ!
「人類はサイボーグ化により不老不死を手に入れたが、その代わり子を作ることが出来なくなった。異なる霊子の満たされた空間で生存するためには高次元知的生命体との融合が必要で、そのためのサイボーグ化なのだが、XY染色体を持つ個体との適合が出来ず男はいなくなってしまったのだ。更に高次元知的生命体たちは生殖する必要がないようで、その影響で融合の際に生殖能力を失ってしまったのだ」
「不老不死なら別に困らないんじゃないのか?」
生命は存続するために子孫を残し、多様性を持つために異なる個体同士の遺伝子を掛け合わせ、環境変化などに対応してきた。
が、サイボーグ化した人類なら、生命としては無敵ではないのか…?
「猿にしてはいい質問だ。いくら不老不死とはいえ生き残った人類も徐々に個体数を減らしてしまっているのだ。このままでは滅亡してしまうため、リルレの遺伝子を使って生身の人間であるマミムを作ったのだ」
「なるほど…。じゃあ、あの神々とかいう人造人間たちは何なんだ?」
「やつらはいわばマミムの失敗作たちだ。うまく人間っぽく作ることに成功したが、やつらも生殖能力はない。たくさん作ったのでまだ100万人ほど生き残ってはいるが、寿命も短くそろそろ滅んでしまう。憐れなのでエデンという人工的な楽園で暮らさせている」
「え、わたしの失敗作なの、あいつら!? とゆーことは、わたしはあいつらより偉い…。ハゲ、これからは私を尊敬するのよ。わかった!?」
「バカなお前のどの辺を俺は尊敬したらいいのか、俺にはわからん」
「うわーーーん!! バカって言ったぁ~~~! ハゲよりバカじゃないもん! ホントだもん!!」
「あー、わかったわかった! うん、俺より偉いよ~ホントだよ~」
「えへへ、でしょ! えっへん」
ねえねえ、何でもっと賢い個体に出来なかったの、博士?
「成功したのはマミムだけなのか?」
「高次元知的生命体と融合せずにサイボーグ化も行わず、異霊子空間でもある程度生きていけて、長寿な個体はマミムだけだ。非常に難しかった。生殖能力も有している。だが、XX染色体ひとりでは話にならん。そこで、お前を連れてきたのだ」
え?
とゆーことは、いずれ俺はマミムとセックスするってこと?
と、とうとう俺は童貞を卒業するのかー!!
「で、でも他にももっといい条件の男がいそうなものだが、何で俺なんだ? トオルってやつなんだろ、本当は?」
まあセックス出来るなら、勘違いでもいいけどな!!
「トオルはお前だよ、猿」
「…俺サトルなんですけど」
「いや、お前はトオルだよ。魔王との戦いの切り札だ」
わけがわからん…。




