17本目
「あ、いけません! 博士の封印を解いては!!」
え?
何で?
リルレが俺と博士の間に割って入ろうとするが、指先にチクリと痛みが走る。
「モウ遅い。救世主トオルのDNAコードを確認。パンドラロック解錠。モード『ソクラテス』解放。再構成開始」
博士が輝きだし、分解と再構成を開始した。
どういうテクノロジーなのかさっぱりだが、とても美しい光景に心を奪われる。
どんどん醜いロボットから美しいサイボーグへと変化していく。
「え? 女!?」
てっきり博士は陰湿な男かと勝手に考えていたが、再構成を終えたその姿は非常にプロポーションのいい長身金髪の白人の女性であった。
リルレの再構築した姿も非常に美しかったが、博士もそれに匹敵するほど…いや、もしかしたらそれ以上に美しいかもしれない。
妖艶な色気を持って俺に近づいてくる。
「あ…あの…」
ドギマギしている俺の顎に手を添え、唇を近づけてくる。
ファ、ファーストキスはこんな美人とか…。
「ダ、ダメぇ~~~ッ!!」
「オブァッ!!」
俺を思い切り突き飛ばすマミム。
部屋の壁に激突し、また気を失ってしまう。
…。
……。
…………。
「ハゲ! ねえハゲったら!! いい加減起きなさいよ! ハゲったら!!」
何かムカつく声が聴こえてくる。
目を覚ますと3人の美女が俺を覗いていた。
「危うくモード『ソクラテス』を固定し、博士が最強となってしまうところでした…。ゴミのクセにキスとか生意気ですよ。するならわたしに…はぁはぁ、ゴミの汚い腐臭漂う唇で、高潔なわたしにキスしなさい!!」
ねえ、俺ってそんな汚い?
「ダメよダメ! そういうのは、お互い好きになってからじゃないと…」
チラッと俺を見て顔を赤くするマミム。
可愛いんだけど、こいつはバカ過ぎて…。
「惜しかった。もう少しでわたしが世界を支配出来たのに…。まあまたチャンスもあろう」
リルレと同様に、先ほどの金髪白人の美女ではなく口元以外は仮面のようなパーツで覆われた博士か意味ありげなことを言った。
リルレ同様、完全な封印解除とならなかったのだろう。
「何かよくわからんが、酷い目にあったぜ」
俺は起こされ、それぞれテーブルを挟んで椅子に座った。
テーブルの向かいにサイボーグ組、こちらが生身組って感じだ。
博士がお茶とクッキーのようなお菓子を出してくれた。
うおお!
この世界に来て初めてのお菓子だぜ!!
俺は実は甘いものが大好きである。
ちょうど腹が減っていたので、ひとつつまんだ。
うん、口の中に甘い香り…は広がらずに剣山を舌に刺したような熱く激しい痛みが走る。
「ゲボァッ! か、辛い!! 舌がめちゃくちゃいてぇよぉ~~~。 何じゃこりゃぁ!?」
「お気に召したようで嬉しいよ。わたしの手作りプリティクッキーだ。7日間煮詰めたハバネロに、シリカゲルと隠し味にダイオキシンを入れてクッキーの生地に練り込んだんだぞ」
全然お気に召してねえよ!
プリティクッキーって何だよ、ふざけんな!!
どこがプリティなんだよ、どこが!
こんなの作って一体誰得なんだよ!?
つーか、ダイオキシン?
猛毒じゃねえか!!
俺は慌ててお茶を飲んだ。
「オッバァアアア~~~ッ! うぎゃぁあああ~~~ッ!!」
俺はのたうち回り、食べたものと飲んだものを吐きながら悶え苦しんだ。
「そんなに喜んでくれるとは。特製の薄めた塩酸だ。原液は刺激が少し強いから、飲みやすいように薄めてみたんだ。わたしはこう見えて結構家庭的な女なんだぞ」
「喜んどらんわッ! 殺す気かーーーッ!!?」
「うふふ、照れ屋さんめ」
ねえ、俺照れてた?
どこら辺が照れてた?
地獄の苦しみを味わってのたうち回ってたんですが、照れてる要素あった?
「ヒー…ヒー…、み、水はないのか水は…?」
「はい水」
俺は奪うようにしてそれを飲んだ。
「おぶぉえぁッ!!」
「水なかったのでガソリンにしておいたぞ」
新しいタイプのバカの登場に、俺は戦慄しながらまたもや気を失った。




