16本目
素直な想いを口に出して伝える…。
簡単なようで難しい行為である。
その想いが強ければ強いほど、相手との関係性の崩壊を恐れるあまり、なかなか出来ないものだ。
だが、俺は死を覚悟したときに誓った。
危機を乗り越え生きていたら…この想いを絶対に伝えると!
「なあマミム、聞いて欲しいことがあるんだ」
俺は真っ直ぐマミムの綺麗な瞳を見ながら言った。
「え、ちょ、何なに? 急にどうしたのよ」
マミムの顔が赤らむ。
こいつはバカだが見た目だけは美しい…。
バカだが。
「俺、気付いたんだよ。自分の気持ちに…。さっき死ぬかと思ったけど、もし死なないで生きていたらお前にこの想いを伝えようって決めてたんだ」
「ハ、ハゲのくせに、何カッコつけてるのよ…。い、いいわ、聞かせて」
喉の渇きと激しくなる鼓動を感じる…。
よ、よし、言うぞ!!
勇気ってのは、後悔をしないように決断し実行することだ。
「マミム、おっぱいを揉ませてくれ。頼む!」
とうとう…とうとう俺の想いのありったけを伝えたぜ。
「へ? お、おっぱい? あたしのこと…好き…なの…?」
「いや、全然。純粋にただおっぱい揉みたいだ…ブベルァッ!!」
首がネジ切れんばかりの平手打ちを喰らい、俺は3mほどぶっ飛んだ。
「死ね! ホント死ね!! このスケベハゲッ!!!」
「す、素直な気持ちを…伝えただけなのに…」
顔が倍くらいに腫れ上がってるのがわかる。
めちゃくちゃ痛くて涙が…。
あとションベンも。
「下衆でホントに素晴らしいですわ。感動しました。さすがはゴミくず未満のゴミですね。…しかし、わたしのおっぱいではなくマミムのおっぱいを求めたのが気に入りませんね」
ゴミくず未満のゴミって何?
ツカツカと寄ってくるリルレ。
さすがに介抱してくれるんだよね?
これ重症だと思うんですけど…。
リルレが足を上げる。
サイボーグだが官能的なリルレの肢体を見上げる俺。
あー、何か超エロいなー。
そう思った瞬間…。
「オブルスァッ!!」
俺は意識を失った。
…。
……。
…………。
「ハゲ! ねえハゲったら!! いい加減起きなさいよ! ハゲったら!!」
何かムカつく声が聴こえてくる。
あれ?
死んだかと思ったけど、俺生きてる?
目を覚ますと、俺は何かの機械に囲まれたベッドに寝かされていた。
「ヨウヤク目を覚ましたカ。救世主ドノ」
最初に会ったリルレみたいなデザインのロボット…いやサイボーグか…が話しかけてきた。
「あ、あなたは…?」
まだぼんやりする頭で俺は尋ねた。
「ワタシはニヌ。皆からは博士と呼ばれてイル」
「えっ? あなたが博士?」
ブリキのロボット然としたニヌ…博士が錆び付いた音を立てながら頷いた。
この姿…やはりリルレと同様封印によるものなのか…。
「お母さんが踏みつけたら頭が陥没しちゃって死にかけちゃったから、仕方なく博士のところに連れて来たのよ」
「え、えぇっ? 俺死にかけてたの?」
「加減したんだけど、間違って殺しかけちゃいました。生きてて良かったですね、ゴミ」
俺は確認するために頭を触る。
陥没した痕などないようだったが、俺の…俺の何よりも大切な髪が…ない!!
ツルッツルに剃りあげられているんですけどぉ!
俺は甲高い悲鳴を上げてまた気絶した。
しばらくしてまた目を覚ました俺は、毛を失った現実をなかなか受け入れられないまま、呆然としていた。
「2週間も寝てイタのに、マタ寝てしまって困ったヨ。しかしキミが救世主トオルか…。我らがアダムが思っていたヨリ醜い生物で驚いた」
俺、そんなに寝てたのか…。
アダムって何のことだ?
それにしてもこいつ嫌い。
初対面で失礼なことを言うロボットだぜ。
お前こそ鈍臭そうでフォルムも全然美しくないクセに、人のことよく言うぜ。
まあ、しかし博士に会えたのは僥倖だ。
この世界についてや、なぜ俺が救世主と勘違いされているのかとか、魔王のこととか訊きたいことがたくさんある。
「博士…あんたに色々訊きたいことかある」
見た目ロボットのような博士は表情など図り知れないが、俺が質問することを歓迎しているようだ。
「ヨカロウ。ただ、全ての知識を解放するタメに、キミの血を少し貰おうカ」
博士の口の辺りがバクンと開いた。
やはりこいつも封印されているようだ。
きっと嫌みな感じの神経質そうな男にでもなるのだろうと予想しながら、俺は彼の口に指を入れた。




