第7話 “ミノタウロス”の迷宮――アリアドネ
ファウストがアレス将軍と会話している。私はそれを、硬く冷たい地面に這いつくばって聞くともなしに聞いていた。友、か……。真珠姫と私にとって憎き敵にもそんなものがあったことを知って、不思議な感じがした。いったい私はなにを倒し、なにを得ようとしてきたのか? 違う、信じるのだ、私の愛を。指先を地面に食い込ませる。爪など剥がれてしまえ。
そのとき、七色の光の風が凄まじい勢いで洞窟奥から吹き抜けてきた。どうっと音がするほどの一陣の風は私たちの体を貫いた。
次の瞬間、私たちは軽やかに跳び上がった。体が軽い、すべての傷が癒されている――!
いったい何が? と思うと同時に、洞窟奥から輝く少女が姿を現す。少女が現れると、あれほど暗かった洞窟は真昼の輝きを見せた。その光り輝く少女こそ我が主君――真珠姫なのであった。手には、白い宝玉がちりばめられた白銀の錫杖を握っている。ああ、ついに手にされたのですね!
最初に覚醒したのはランドーだった。
「おおおお!!」
満身の力を込めてアレスに斬りかかる。ファウストの雷がうなりとともに落ち、空間を歪め、破壊しにかかる。アレスは頭上を見上げた。
「なにを……いったいこれは……まさか……お前が私を!」
怒れる雷の轟音、輝き、衝撃が一体となって最後の鉄槌を打つ。
アレスは地面に倒れ伏した。
真珠姫がその前に進み出た。目を閉じ、震える錫杖の先をやつの頭上に突きつける。
「真珠姫、おやめください!」息を飲み、私は叫ぶ。
「いいえ、いいえ、これは私の使命」
「そうではない! 私にお命じください、姫!」
ふらふらとアレスが立ち上がる。額が割れ、血が滴り落ちている。姫にとどめを刺させるわけにはいかない。そんなことをさせないために、旅の間中ずっと手を汚してきたのだ。
私が彼女を王にする。それこそが誰にも渡さない、私だけの使命だ!
姫は目をひらき、背筋を正した。
「命じます、アリアドネ。この者に断罪を」
私は金色の鎧の中心めがけて槍で突いた。
一瞬ののち、将軍アレスの肉体はゆっくりと背後にくずおれた。
終わった……。
息を切らしていると、背中から真珠姫の声がかかる。
「よくやりました。そして、あなたの任務はこれで終わりです。騎士アリアドネ、今この時をもってあなたを解任します」
心臓が凍りついた。振り返る。美しく、清らかなかたは涙を流している。だが、もう見ていない。もう私を見ていない。背が向けられる。ランドーとファウストのもとへ歩いていく。私を置いて。
姫、姫、私を愛してくださっていたのですね。
もうそばにはいられない。もう触れられない。もう笑い合えない。愛されていたから。でもこんなことになるなら、いっそ死んでしまいたい。姫は私の命を救ってくださったけれど、私の魂を殺してしまった。涙があふれた。この迷宮から、私を救い出して。




