第八話 縋る祈りと、差し出された手に
初投稿です。小説の執筆は完全に初心者です。拙い文章ですがよろしくお願いします。この物語には残酷な表現や大人な雰囲気になる表現(※直接的な性的描写はありません)などが含まれます。R15に設定しています。苦手な方はご注意ください。
この物語はファンタジーな異世界で生きる登場人物たちの恋模様を描いています。
・あらすじ
魔法文明が崩壊してその文化が失われていく中、死んだと思われていたはずの魔王が正体を隠して旅をしていた。魔王は旅の中で出会った魔法に憧れる少女と偶然魔王の正体を知ってしまった大男と共に目的の旧女神城跡地を目指して旅を続ける。
ポーション屋の娘の悲鳴が響いた。
すぐにポーション屋の母親が駆けつけて、床に座り込んで怯えている娘を見つける。母は娘に駆け寄って心配するが、娘は震えながら
「お父さん……お父さんが……」
と言葉を漏らす。
母も父の顔を見て血の気が引く。しかし、すぐに娘の手を掴んで立ち上がった。
「立って。すぐに逃げましょう」
「で、でも、お父さんは?」
「今逃げないと借金地獄に落ちるわよ。さあ、立って」
娘は父の顔を見つめる。無念そうな表情が目に焼き付く。娘は歯を食いしばって、床に落とした魔導書を拾って立ち上がった。そして泣きながら母に手を引かれて家を出た。
二人は町を離れてなるべく遠くを目指して旅立った。数日間歩き続けて辿り着いたのは魔法文明の崩壊で職を失った人々が暮らす難民キャンプだった。そこには教会があって食事の配給がされる。二人もその施しを受けてどうにか食い繋いだ。
ポーション屋の娘は父の遺体を見たショックで精神的に参っていて、見かねた母は教会に娘を連れて行って相談した。すると教会は娘に説く。
「全ては魔王の仕業です。魔王が世界から魔法を奪わなければあなたの父は間違わず、このようなことにもならなかったでしょう。女神様に祈るのです。そうすれば必ず報われます」
ポーション屋の娘は全ては魔王のせいで、食事を提供してくれる教会はいいところだと信じるようになっていた。
難民キャンプの治安は最悪で、ポーション屋の娘は父から教わったポーションを武器にサバイバル生活を乗り越えていた。そんなある日、母は教会を通じて紹介したい人がいると娘に話した。娘はその人と会う約束を取り付けて紹介された家を訪ねる。立派な家で庭付きの屋敷には庭師を雇っているほどの豪邸だった。母に連れられて来た娘は門の前に立って唾を飲み、胸に抱えた魔導書を強く抱きしめた。そして、屋敷に通されて約束の人物と会う。若くて格式の高い装いの青年に丁寧に挨拶されてポーション屋の娘も丁寧に返した。豪華な食事の席に通された娘は眩い料理の数々に圧倒される。
青年は言う。
「改めまして、ご来訪ありがとうございます。教会の方から話は聞いております」
「こちらこそ、ご招待いただき感謝いたします」
「さっそくですが、婚約の件についてお話し聞いてもよろしいですか?」
「はい。私のような者が由緒正しい家柄に嫁げるならこの上ない幸せです」
ポーション屋の娘は笑顔を見せた。
「ええ。昨今は魔法文明の崩壊で混沌とした世の中です。将来の血筋を確保することも容易ではない中で、このように巡り会えた奇跡に感謝します」
一同は和やかな雰囲気で会話しながら食事を済ませた。
ポーション屋の娘は青年に屋敷の中を案内されて、いずれ自室になるという部屋に通される。広くて清潔で豪華な部屋に娘は感動する。こんな場所で暮らせたらきっと幸せになれると娘は確信していた。
しかし、娘がずっと肌身離さず持ち歩いていた魔導書を机の上に置いた時、青年は不思議そうにそれを見た。
「それは、何ですか?」
「魔導書です」
笑顔で答えたポーション屋の娘に対して、青年はまだ疑問が残っている様子だった。
「よければ、代わりに捨てておきましょうか?」
そう言って青年は優しく手を差し出す。
九話へ続く
ここまで読んでいただきありがとうございます。作者の心許無い灰色(こころもとないはいいろ)と申します。
今回は怒涛の流れでしたね。書いてて我ながら超楽しいです。しかし、そろそろ書き溜めた本文のストックが尽きてきました。ネタ帳にメモはありますが、また構成で少し悩んでいます。この辺で入れたいなぁと思っていた伏線をどう入れたら自然に見えるのか……と悩みながら
「とにかく変でも何でもいいから書けーっ!」
と自分に言い聞かせています。
今後も不定期の更新になりそうですが、何かしら見える形で応援していただければ幸いです。それでは次回もお楽しみにお待ちください!




