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終末旅行には、魔王を連れて  作者: 心許無い灰色
第五章 魔王の誕生
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第三十話 向けられたナイフは、滲む赤色へ

初投稿です。小説の執筆は完全に初心者です。拙い文章ですがよろしくお願いします。この物語には残酷な表現や大人な雰囲気になる表現(※直接的な性的描写はありません)などが含まれます。R15に設定しています。苦手な方はご注意ください。

この物語はファンタジーな異世界で生きる登場人物たちの恋模様を描いています。


・あらすじ

魔法文明が崩壊してその文化が失われていく中、死んだと思われていたはずの魔王が正体を隠して旅をしていた。魔王は旅の中で出会った魔法に憧れる少女と偶然魔王の正体を知ってしまった大男と共に目的の旧女神城跡地を目指して旅を続ける。

扉を開けた瞬間、重力がかかったように体が重くなった。

扉の向こうには息苦しそうに床に座り込んだ少年がいた。小さな少年の体から感じる強力で邪悪な魔力はまるで巨大な魔物がいるかのように感じて医者と狩人は背筋が凍りつく。少年は口から真っ黒い泥のような魔力の塊を吐いていた。

「お……かあ……さん……たす……けて……」

少年はまた魔力を吐き出すと、その塊が形を成して動き出した。

狩人が構えていた弓から矢を放って魔力の塊を射抜く。射抜かれた魔力の塊は霧散した。

「やっぱりこいつが魔物を出していたのか」

「不安や恐怖を感じると魔力が強くなっているようです」

「ご……めん……な……さい……」

「落ち着いて。大丈夫。魔法の練習と同じよ。ゆっくり深呼吸して。それから魔力を集中させて」

少年は医者の言う通りにゆっくりと、しかし震えながら呼吸して魔力を集中させる。体から放っていた邪悪な魔力が漏れ出さなくなり少しずつ落ち着き始めた。

「はぁ……はぁ……ごめんなさい……やっぱり……僕なんか……いない方が……いい?」

「そんなことないわ。ずっと私のそばにいて」

その時、家の玄関から数人の兵士が入ってきた。

「誰かいるのか?」

気づいた狩人はすぐに兵士を案内する。

「こちらです」

兵士たちが少年のいる部屋の前に集まる。

「人間の子供の姿。そして強烈な魔物の魔力。女神様の言う魔王の特徴と一致している」

「ま、魔王?」

狩人は驚いた。

「迅速な通報に感謝する。その子供は我々が預かる」

医者は兵士の前に立ちはだかって少年を庇う。

「待ってください。この子は悪いことはしていません。見逃してください」

「我々の邪魔をするなら貴様も連行する」

「それでも構いません」

その瞬間少年は叫ぶ。

「やめて!」

少年は床に刺さったままの矢を掴んで折ると、兵士に向けた。すると体から出る瘴気が矢に集まって固まり、黒いナイフになった。

少年は震える手でナイフを握りながら兵士を睨みつける。

兵士たちもそれぞれの武器を構えた。

医者は少年と兵士の間に立って手を広げる。そして少年に言う。

「ダメでしょ、ナイフを人に向けちゃ」

「お母さん、どいて」

「いいえ。あなたはそんなことする子じゃない。悪い子になってほしくないの」

「だったらもう遅いよ。多分、僕がお母さんの家族を殺したんだ」

「……でも私の家族を憎んでたわけじゃないでしょう。あなたは悪い子じゃない」

「いいからどいてよ!」

「だったら最初に私を殺しなさい!」

医者は少年が向けるナイフの前まで来て少年の手を掴むと、しゃがんでナイフを自分の首元に突きつけた。

「さあ、殺しなさい」

医者は少年の目を真っ直ぐ見つめる。少年の手はずっと震えていて、医者の首元にナイフの刃先が触れて薄く血が滲んだ。

少年は泣きそうになりながら医者の手を振り払ってナイフを投げ捨てた。

少年は膝をついて号泣する。医者は少年を抱きしめた。

「大丈夫よ。お母さんが代わりに女神様とお話ししてあげる。あなたは見てるだけでいいのよ。女神様はとっても優しいお方だからきっと分かってくれるわ」

少年は泣きじゃくるばかりだった。そこへ兵士が近づいてきた。

「二人とも連行する」


三十一話へ続く

ここまで読んでいただきありがとうございます。作者の心許無い灰色(こころもとないはいいろ)と申します。


更新が遅くなり申し訳ありません。

今回は過去編の中でも特にお気に入りの回です。医者が初めて少年に怒るシーンがあります。これまでの医者の優しさがただ甘やかしじゃないように感じられてすごく好きなシーンです。この物語がやっとここまで辿り着けたことを嬉しく思います。とはいえこの物語はもう少し続くのでこの先の展開も楽しみですね。


今後も不定期の更新になりそうですが、何かしら見える形で応援していただければ幸いです。それでは次回もお楽しみにお待ちください!

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