第二十七話 塞がる傷口と、優しき誓いは
初投稿です。小説の執筆は完全に初心者です。拙い文章ですがよろしくお願いします。この物語には残酷な表現や大人な雰囲気になる表現(※直接的な性的描写はありません)などが含まれます。R15に設定しています。苦手な方はご注意ください。
この物語はファンタジーな異世界で生きる登場人物たちの恋模様を描いています。
・あらすじ
魔法文明が崩壊してその文化が失われていく中、死んだと思われていたはずの魔王が正体を隠して旅をしていた。魔王は旅の中で出会った魔法に憧れる少女と偶然魔王の正体を知ってしまった大男と共に目的の旧女神城跡地を目指して旅を続ける。
医者の家からは少年の叫び声が響いて、森の鳥たちが一斉に飛び立った。
医者は少年に眠りの魔法をかけてみたが痛みですぐに目覚めてしまった。
すぐに刺さった牙を抜いて、手早く骨を整えようとして医者は驚く。
「治ってる……?」
医者は何度も確認したが整えただけのはずの骨はもうくっついていた。それどころか牙を抜いた傷口すら塞がっていく。少年はまだ痛がっている様子だったのを見て痛みを和らげる魔法に集中する。
「治った……みたいね……。痛みはどう?」
「大丈夫」
少年は足の指先を動かしてみせた。
「……もう動かせるのね」
医者は少年の足を固定していたベルトを外す。少年はすぐに片足で立ち上がってよろめきながら医者に抱きついた。
「まあ、頑張ったわね。あなたはとっても強い子だわ」
医者は少年を抱き返す。
少年は医者の服をしっかり掴んで顔を埋めながら聞く。
「ここにいてもいい?」
「ええ。あなたは私の大切な家族よ」
それを聞いた少年は安心して、涙を医者の服で拭った。医者はその涙を見て少し驚いていた。
魔物にこんな複雑な感情を表現できるだろうか。この子はやっぱり人間なのかもしれない。
医者はそう希望を抱いた。
「さあ。次は歩く練習ね。歩けるようになったら手を繋いで一緒にお散歩しましょう」
「うん」
「そろそろお片付けしてもいい?」
「……うん」
医者が少年から離れようとすると少年はまだ医者の服を掴んでいた。しかし、すぐに手を離して
「ごめんなさい」
と言った。
「あなたは本当に強くて優しい子だわ。大好きよ」
医者はもう一度少年を抱きしめて頬に軽くキスして少年をベッドに寝かせた。
医者は片付けながら考える。
しかし、まだあの子は何かおかしい。全身傷跡だらけなこと、熱いスープを飲んでも火傷していなかったこと、獣の牙が骨に刺さっていたこと、折れた骨がすぐにくっついたこと、傷口がすぐに塞がったこと、これらを踏まえると獣に食べられていたように見えたという話が気のせいではない可能性がある。
医者は少年が運び込まれた時に少年に付いていた血が本当はその少年の血だった可能性を考え始める。
仮にこの少年の傷の治りが異様に早いのが事実だとして、それがつまりこの少年が魔物であると考えていいのか。しかしこの子は何も悪いことはしていない。たとえこの子が魔物だったとして村から追い出せば路頭に迷って本当に魔物になってしまうかもしれない。この子はまだ誰かを襲おうとしたことはない。それならここでたっぷり愛情を注いで育てた方が魔物でも人を襲わないかもしれない。
医者は独り言を呟く。
「はぁ……女神様。どうかこの子をお救いください」
「……?」
「ああ、何でもないわ。気にしないで。女神様はとても優しいお方だから」
二十八話へ続く
ここまで読んでいただきありがとうございます。作者の心許無い灰色(こころもとないはいいろ)と申します。
キリが悪かったので追加でもう一話投稿させていただきました。
そういえば昔、クソ重い扉に足をぶつけて数針縫うレベルの怪我をしたことがあったのを思い出しました。
履いていた靴下に穴は開いていなかったものの、血が滲んでいたので靴下をまくると思いの外出血していました。
しかし、ぶつけたのが左足だったのでそのまま自分で車を運転して病院に行って縫ってもらいました。腱に傷は無かったので歩けないほどではなかったですが、その後は傷口が塞がるまで患部を労って歩くのが大変でした。
傷口が塞がってから触ってみると皮膚の表面に凹凸が残っていて、傷跡って本当に残るもんなんだなぁと思ったので、無意識にそういう体験がこの物語に反映されているのかもしれません。
皆さんは扉を開けながら考え事はしないように気をつけましょうね。
今後も不定期の更新になりそうですが、何かしら見える形で応援していただければ幸いです。それでは次回もお楽しみにお待ちください!




