第二十五話 優しい指先と、美味しいスープは
初投稿です。小説の執筆は完全に初心者です。拙い文章ですがよろしくお願いします。この物語には残酷な表現や大人な雰囲気になる表現(※直接的な性的描写はありません)などが含まれます。R15に設定しています。苦手な方はご注意ください。
この物語はファンタジーな異世界で生きる登場人物たちの恋模様を描いています。
・あらすじ
魔法文明が崩壊してその文化が失われていく中、死んだと思われていたはずの魔王が正体を隠して旅をしていた。魔王は旅の中で出会った魔法に憧れる少女と偶然魔王の正体を知ってしまった大男と共に目的の旧女神城跡地を目指して旅を続ける。
生まれて初めて優しくされた少年はその人間の行動が理解できずに呆然としていた。
しかし不思議と痛みも恐怖も薄れていくのを感じていた。
「あなたはお話できる? 私の言葉が分かる?」
医者は少年に話しかける。
「……うん」
少年は震える声で答える。
「お返事できて偉いわ。いい子ね」
医者は少年の頭を撫でようとして頭に手を伸ばすと、少年は素早くその手を払い除けた。医者は少し驚く。しかしすぐに察して
「頭は嫌なのね。ごめんね。もうしないから」
と謝った。
「じゃあ、あなたの名前を教えてくれる?」
そう聞くと少年は数字を答えた。
「なるほど……あ、私もっといい名前思いついちゃった」
医者は少年に新しい名前をつけた。
「ね。いいでしょ? そうだ、私のことはお母さんって呼んで。言える? お母さんって」
「お母さん」
「そう! いい子ね。あ、頭はダメなのよね。ほっぺなら触ってもいい?」
医者は少年の頬に優しく触れて撫でる。少年はそれを不思議そうに見ていた。
すると少年のお腹がぐうと鳴った。その瞬間、少年は再び怯えてうずくまった。
「お腹が空いてるのね。今、スープを持ってきてあげる。待ってて」
医者が部屋を出てスープを持って戻ってくる。少年はまだうずくまったままだった。
医者はスープを木のスプーンで掬って息を吹いて少し冷ましてから少年に近づける。少年はそれを恐る恐る横目で見ていた。
「食べていいのよ」
医者が言うと少年はようやく顔を上げて木のスプーンを口に咥える。
するとバキッと音がして少年が咀嚼した。
医者がスプーンを引くとスプーンの先端がなくなっていた。
「えっ、ええ!? 食べちゃった……?」
おそらくスプーンが食べ物かどうか見当がついていないと医者は察する。
そうしているうちに少年は勝手にお椀の熱々のスープを一気に飲み干していた。
「火傷……してないの?」
少年は今度はスープが入っていたお椀を齧り始めたので医者は慌てて止めた。
「そ、それは食べ物じゃないのよ。返してくれる?」
医者が手を差し出すと、少年はお椀を返した。
「いい子ね。おかわり持ってくるわ」
医者は部屋を出て鍋のスープをお椀によそいながら考える。百歩譲ってスプーンが分からないのは仕方ないとして、火傷していないのか、熱さを感じていないのか、やはり魔物の可能性があるのかと考えが巡る。
医者がスープを持って少年のもとに戻ると、少年はベッドの下に潜り込んでいた。
「そんな所に入ったら汚いわよ。出てきて」
少年がベッドの下から出てくると、手に持っていた虫を口に入れた。医者は悲鳴を上げて慌てる。
「キャー! 食べちゃダメ!」
少年は虫を吐き出して言う。
「ごめんなさい」
「落ちてるもの食べたらお腹壊すわよ。おかわり持ってきたからこっちにしましょうね。さっきのスープ、熱くなかった? 口の中、火傷してない? 見せて」
医者が少年の口の中を見てみると、傷跡だらけで舌も変色していて火傷しているのか分かりにくい。
結局あまり大きな異常は見られないのでそのままスープの食べ方を教えた。
「こうやってスプーンで掬って、ふーふーって息を吹いて冷ましてから食べるのよ。スプーンは食べちゃダメよ。やってみて」
教えるとぎこちないがすぐにできるようになった。
「そうそう。いい子ね。スープ、美味しい?」
「おいしいって、なに?」
「美味しいっていうのは……また食べたいってことよ」
「じゃあ、美味しい」
「そう? 嬉しいわ」
医者は喜びを表現しつつも、この子がどうやって生きてきたのかをうっすらと感じていて、思いが湧き上がる。
「ねえ。あなた、ここで一緒に暮らしましょう。あなたにぴったりなベッドもお洋服もあるわ。どう?」
「……うん」
少年は恐る恐る答えた。それを聞いて医者は少年を抱きしめる。
「ありがとう。あなたはとても優しい子ね」
二十六話へ続く
ここまで読んでいただきありがとうございます。作者の心許無い灰色(こころもとないはいいろ)と申します。
時間がないので後で思いついたら後書きを書き足そうかと思います。
今後も不定期の更新になりそうですが、何かしら見える形で応援していただければ幸いです。それでは次回もお楽しみにお待ちください!




