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第二十三話 囚われのお姫様と、静寂に響く本音は

初投稿です。小説の執筆は完全に初心者です。拙い文章ですがよろしくお願いします。この物語には残酷な表現や大人な雰囲気になる表現(※直接的な性的描写はありません)などが含まれます。R15に設定しています。苦手な方はご注意ください。

この物語はファンタジーな異世界で生きる登場人物たちの恋模様を描いています。


・あらすじ

魔法文明が崩壊してその文化が失われていく中、死んだと思われていたはずの魔王が正体を隠して旅をしていた。魔王は旅の中で出会った魔法に憧れる少女と偶然魔王の正体を知ってしまった大男と共に目的の旧女神城跡地を目指して旅を続ける。

僧侶はすぐに部屋の扉の鍵を閉めて席に戻った。

「邪魔が入りましたね。しかしお見事ですよ。奴を追い返しました」

「あ、ありがとうございます。しかし……今ので彼に気づかれてしまったんじゃないでしょうか?」

「構いません。それさえ飲んでしまえば奴は手出しできません」

「あの……これはなんなんですか?」

「それは『女神の祝福』です。またの名を『女神の涙』と呼ばれています。女神様の慈悲の涙が入っているそうですよ。飲めば女神様に全てを捧げることができます」

「全て……ですか」

「はい。名誉あることです」

ポーション屋は唾を飲み込む。

これを飲めば父の仇である魔王に一矢報いることができるかもしれない。しかし、今までの旦那様の優しさは本当に嘘なのか?

何より、世界から魔法を消したはずの魔王がどうして魔法が好きだなんて言ったのか。

今はもう彼に直接聞く手段なんて無い。

ポーション屋は悩んだ末に瓶の蓋を開けた。


その瞬間、部屋の扉が開いて再び旅人が入ってきた。

「失礼します」

僧侶とポーション屋が驚いて扉の方を見た。今度は立ち止まらずに旅人はポーション屋の前まで行くと彼女の腕を掴んだ。ポーション屋は慌てて瓶の蓋を閉める。

「な、何ですか?」

旅人はポーション屋を見てにっこり笑うと僧侶に向かって言った。

「ちょっとお借りしますね」

そう言ってポーション屋の腕を強引に引っ張る。彼女が椅子から転げ落ちそうになった瞬間旅人は彼女の腿に手を伸ばして抱きかかえると窓に向かって走り出す。

旅人が向かう先のカーテンと窓が勢いよく開いて外の空気と光が一気に部屋に入り込む。

「ちょ、ちょっと……!」

ポーション屋が言い終わる間もなく旅人は窓の縁に足をかけて飛び込んだ。

「ここ、四階っ!」

ポーション屋は旅人のシャツをがっちり掴んで悲鳴を上げる。

地面に激突する瞬間に旅人は魔法で衝撃を吸収してふわっと地に足をつける。そして旅人はポーション屋を抱えたまま宿の敷地の外の道を走り抜けた。

僧侶はさっきまでとは打って変わってイラついた様子で開いた窓から外を見て、旅人が走っていった方向を確認する。イラつきで歯を食いしばって、窓の縁を握りしめた拳で叩いてから窓を離れた。


旅人はポーション屋を抱えて走っていた。ふとポーション屋の顔を見ると涙目で旅人のシャツをがっちり掴んだまま固まっている。旅人はポーション屋に聞く。

「ねぇ、今のドキドキした?」

「心臓、止まる、かと、思った」

ポーション屋はもはや敬語も忘れてカタコトに答えた。

旅人は笑う。

「あははっ。僕も今すっごくドキドキしてるんだ」

「そ、そりゃ、走ってたらそうでしょうね」

「うん。でもこんなの初めてなんだよ。誰かに頼まれたわけでもないのに、こんなことしてるんだから」

「言ってる意味が分かりません。そろそろ下ろしてもらえますか?」

「ダメだよ。君は今、魔王に囚われた哀れなお姫様なんだから」

「……あの、あなたは本当に魔王なんですか?」

「そうだよ」

「……」

ポーション屋は目を伏せて、がっちりとシャツを握っていた拳が緩む。


旅人はひと気のない朽ちた廃教会に逃げ込んだ。崩落した天井を避けて、一番奥の中央にある像が置かれていた台座の裏に隠れる。

そこでやっと旅人はポーション屋を下ろした。

しかしポーション屋は旅人のシャツの胸元を掴んだまま離さない。ポーション屋は旅人を真っ直ぐ見つめて言う。

「あの、質問してもいいですか?」

「いいよ。何でも聞いて」

「魔法が好きだって言ったのは嘘だったんですか?」

「嘘じゃないよ。魔法は好きだよ」

ポーション屋は掴んだままのシャツを少し引っ張る。

「じゃあ、どうして世界から魔法を無くしたんですか?」

旅人は少し分が悪そうに目を泳がせて言う。

「そ、それは……戦争を……終わらせるために……」

しかし旅人は短く息を吐いてから言い直す。

「いや、君には正直に話す」

旅人はポーション屋を真っ直ぐ見つめて言う。

「本当は、死にたかったんだ」


二十四話へ続く

ここまで読んでいただきありがとうございます。作者の心許無い灰色(こころもとないはいいろ)と申します。


とても重要な回に辿り着いたので少し語りたいと思います。


前にもやりましたが、オタクは誰しも自創作のテーマ曲を考えずにいられない生き物だと思います。

今回のエピソードがもしもアニメだったらこの回だけ特殊エンディングが用意されてるんじゃないかと妄想しています。そこにピッタリだと思う曲はsasakure.UKさんの「深海のリトルクライ」です。歌唱は土岐麻子さんです。今回はボカロじゃないですね。でもそれなりに古いです。

この曲が発表された当初はちょうどフリーホラーゲームが流行っていて、「Ib」というゲームも流行りました。そのゲームのとあるキャラクターと、この曲がマッチしてると当時は言われていましたね。でもよく歌詞を聴いてみるとこの曲のテーマって多分「人魚姫」だから、Ibの方も人魚姫のストーリーをモチーフにしてたのかもしれないと後で気づきました。

少し脱線しましたが話を戻して、この曲のテーマの人魚姫といえばバッドエンドです。人魚姫が泡になって消えるというのがよくある通常エンドだと思います。この曲の主人公は人魚姫になぞらえつつもその運命に抗い、自立しようとする歌詞のような気がします。そんなストーリーが、今のこの物語のバッドエンドに向かいつつあるキャラクターたちに似合うなと思いました。この物語がどんな方向へ進むのか、キャラクターたちはこの曲のように立ち上がれるのか。


今後も不定期の更新になりそうですが、何かしら見える形で応援していただければ幸いです。それでは次回もお楽しみにお待ちください!

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