第十九話 滅びの残痕と、怪しい誘いは
初投稿です。小説の執筆は完全に初心者です。拙い文章ですがよろしくお願いします。この物語には残酷な表現や大人な雰囲気になる表現(※直接的な性的描写はありません)などが含まれます。R15に設定しています。苦手な方はご注意ください。
この物語はファンタジーな異世界で生きる登場人物たちの恋模様を描いています。
・あらすじ
魔法文明が崩壊してその文化が失われていく中、死んだと思われていたはずの魔王が正体を隠して旅をしていた。魔王は旅の中で出会った魔法に憧れる少女と偶然魔王の正体を知ってしまった大男と共に目的の旧女神城跡地を目指して旅を続ける。
何となく気まずい雰囲気の三人は次の町へ出発する。
道の途中、昨日旅人が部屋に戻ってきたことで二人がうまくいかなかったと察している大男は少し静かにしていた。
しかし、その雰囲気に耐えかねたポーション屋はどうにかしようと旅人に話題を振る。
「旧女神城跡地までかなり近づいてきましたよね。次の町は復興が進んでいて、大きくて豪華な宿があるそうですよ」
「そうらしいね」
「いつか我々も豪華な宿に泊まってみたいですね」
「そうだね」
「……」
全然会話が盛り上がらず、再び気まずい空気が続く。それでもまだポーション屋は会話を続ける。
「だ、旦那様は劇場で演劇を見たことはありますか?」
「あるよ。かなり前だけど」
「やっぱり元貴族なだけありますね。私はないんですが、演劇の話を本で読んだことはあります。この先の町には劇場があるそうですよ。演目は確か、魔王の呪いで魔獣にされてしまった王子様がお姫様のキスで元の姿に戻るロマンチックなお話です」
「へぇ。僕が見た演劇では確か悪い教会が呪いをかけてた気がする」
「え、ええ……なんというか……地域差ですかね? 魔王寄りな地域だったんでしょうか?」
「そうかも。だから滅びたんだ」
「あ、ああ……な、なんか、すみません」
結局話は盛り上がらないまま次の町についた。
町の入り口の先には栄えた街並みが見えるが、脇道の奥には小さな寂れた建物が見える。ポーション屋はその小さな寂れた建物が気になって、少し寄り道を提案する。
旅人が了承して三人は寄り道をした。
小さな寂れた建物は近づいて見ると入り口は開け放たれているのではなく、元々ついていた扉が完全に壊れていて塞ぐ物がない状態だった。ポーション屋が入り口から中を少し覗くと崩れた天井の破片が散乱していて瓦礫が山になっていた。中は静かで人っ子一人の気配もない。建物の一番奥には像を置くための台座だけが残っていて上には何も置かれていない。
「教会かと思ったのですが、使われていないようですね」
「そうだね。この辺はかなり復興が進んでるから、新しい教会を建ててそっちに引っ越したんだと思うよ」
「無駄足になりましたね。すみません」
「別に急いでないからいいよ。こういう寄り道も旅の醍醐味でしょ」
「そう言っていただけて助かります」
「それにしても珍しいね。使ってない教会をまだ残してるなんて。新しく建てるので忙しくてまだ壊すまでに手をつけられないのかな」
「人々の思い入れがあるんでしょうか?」
「それならこんなに朽ちたまま放置しないで、他のことに使ってると思うよ」
「確かにそうですね」
旅人は石を組んでできた壁に手を触れてみる。
「随分古い建築様式だね。元々あった別の宗教施設を乗っ取って使ってたのかな。本当はもっと早く引っ越したかったのかも。それが魔王と戦争してたから、そこまで手が回らなかったんだろうね。女神様は元々あった文化は徹底的に滅ぼすタイプだから、この建物もそのうちすぐに取り壊すと思うよ」
「旦那様は建築にも歴史にもお詳しいんですね」
「まあね。どうする? まだ見る?」
「いえ、行きましょう」
「うん。それじゃあまずは宿探しからだね」
三人は栄えている町の方へ行き宿を探していると、真っ白いローブのフードを深く被った者が寄ってきた。旅人はわざと無視するように少し距離をとって移動した。
しかし鳥の囀りのような美しい声で大男は声をかけられる。
「旅のお方、宿をお探しですか?」
大男は足を止めて旅人を呼び止める。
「旦那! 宿を紹介してくれそうな人がいますよ」
旅人が立ち止まるとフードの者が近づいてきた。旅人はいつものような笑顔ではなく真顔で話す。
「こんにちは。安い宿を知ってますか?」
するとフードの者は薄らと隙間から笑みを浮かべて答えた。
「はい。我々の宿ならタダで泊まることができますよ」
三人は驚く。しかしポーション屋はすぐに旅人に小声で耳打ちする。
「旦那様、タダより高いものはありませんよ。怪し過ぎます」
「まあ、そうだね」
旅人も同意した。しかしフードの者はまだ話す。
「ただし、一つ条件がございます」
「何ですか?」
旅人が聞いた。するとフードの者は深く被っていたフードを脱いで顔を晒す。そこにはまるで発光しているかのような神々しさを放つ整った顔立ちの僧侶が現れた。旅人はその顔を見て驚きと同時に少し血の気が引くのを感じた。美しい僧侶は言う。
「私を仲間に入れてください」
旅人は一瞬固まっていたが、隣の大男は大興奮で旅人に言う。
「旦那ぁ! ぜひ仲間にしやしょう!」
しかし旅人を挟んで反対側からポーション屋が口を挟む。
「ダメです! こんなの怪し過ぎます!」
両側から真逆の意見で挟まれた旅人は
「えっと……」
と言葉に詰まっていた。すると両側の二人が喧嘩し始める。
「タダで泊まれて仲間も増えるなんてサイコーっすよ! なあ旦那!」
「ダメですよ! こんな都合のいいことを言う人には裏があるに決まってます! ねぇ旦那様!」
「旦那ぁ!」
「旦那様っ!」
「どうするんすか?」
「どうしますか?」
二人の圧に押されながらも旅人はポツリと言う。
「少し、考える時間をください……」
それを聞いた大男は気合を入れはじめた。
「よっしゃ! ぜってぇ旦那を説得してやる!」
一方のポーション屋は怒りながら
「どうして悩む余地があるんですか! 絶対おかしいですよこんなの!」
と旅人にしがみついて揺さぶる。
「ごめん。僕個人としては断りたいのも山々なんだけど、断りづらい事情があって……その……後で説明します……」
旅人はポーション屋を宥めようとする。しかしポーション屋は俯いて呟く。
「旦那様もきっとそうなんですね」
そして目に涙を浮かべながら
「旦那様も、胸の大きいお姉さんが好きなんでしょーっ!」
と叫んで町の方に走って人混みに消えてしまった。旅人はポツリと呟く。
「そういうわけじゃないんだけど……」
そこに僧侶が来て言う。
「我々はいくらでもお待ちしますのでごゆっくりお考えください。あちらの宿でお待ちしております。いいお返事を期待していますね」
僧侶は町で一番高くて大きい豪華な宿を丁寧に示した。
二十話へ続く
ここまで読んでいただきありがとうございます。作者の心許無い灰色(こころもとないはいいろ)と申します。
今回はコミカルとシリアスが入り混じる回だったんじゃないでしょうか。語りたいことはあるのですが、よく考えたらネタバレかなと思って思いとどめておきます。
今後も不定期の更新になりそうですが、何かしら見える形で応援していただければ幸いです。それでは次回もお楽しみにお待ちください!




