第十五話 野望を抱き、巡らせる策謀は
初投稿です。小説の執筆は完全に初心者です。拙い文章ですがよろしくお願いします。この物語には残酷な表現や大人な雰囲気になる表現(※直接的な性的描写はありません)などが含まれます。R15に設定しています。苦手な方はご注意ください。
この物語はファンタジーな異世界で生きる登場人物たちの恋模様を描いています。
・あらすじ
魔法文明が崩壊してその文化が失われていく中、死んだと思われていたはずの魔王が正体を隠して旅をしていた。魔王は旅の中で出会った魔法に憧れる少女と偶然魔王の正体を知ってしまった大男と共に目的の旧女神城跡地を目指して旅を続ける。
「こんなにたくさんの魔導書を寄贈してもらえるなんて、本当にありがとうございます!」
旅人は図書館の受付で司書と話していた。その横で大量の本を受付のカウンターに積んでいる大男がいる。
「これほど貴重な魔導書を集められるなんて、もしかして有名な考古学者の先生だったりするのですか?」
司書にそう聞かれた旅人は答える。
「いいえ。何者でもありません。ただの旅人です」
「そうでしたか。失礼いたしました。しかし、いつかまたこの魔導書たちが役に立つ日が戻ってくるといいですね。女神様ならきっと成し遂げてくれるはずです」
「そうですね」
旅人は笑顔で肯定した。
大男は高く積んだ本の影から旅人を見ていた。
大男は老婆の家を出てから図書館に着くまでの道中でずっと考えていた。
この旅人の正体が魔王だと奇跡的に知ったからにはこれを活かす他ない。あの夜に見た不気味な笑顔、あれは魔王がまだ残虐性を秘めているから見せたに違いない。あの男が笑う時はいつも嘘をついている。きっと「普通の生活」なんて夢も嘘だ。この図書館に魔導書を集めているのもおそらく力を取り戻すための下準備だろう。あの男はきっと魔王に復権する。だとすれば、このままついていって媚を売りまくればそれなりにいい役職に就いたり、何かしらのおこぼれを頂戴できたりするかもしれない。そして、いずれは魔王の右腕と呼ばれ、美人なお姉さんにモテまくり、両手両脇に抱えきれないほどの美人と暮らせるだろう。
大男はそう考えた。
図書館を出た旅人は大男に話す。
「さて、ここまで本当にお疲れ様でした。本を運ぶのを手伝ってくれてとても助かりましたよ。ありがとうございます。あとは自由にしてください。山賊に戻ってもいいですが、そうなったら次に会う時はみねうちでは済みませんよ」
「ま、待ってください旦那。俺、やっぱりあんたについて行きたいっす。この通り!」
大男は床に手を付いて頭を下げた。旅人は少し驚きながらも冷静に聞く。
「それは、僕の正体を知ったから?」
「い、いや! あんたが魔王じゃなくてもついていきたいんすよ!」
通りかかった数人の通行人が不思議そうに土下座している大男を見ている。
旅人は屈んで大男の耳元で小声で話す。
「そういうことを今後は大声で話さないでくれるなら、ついてきてください」
大男は自分が言った言葉を思い出して慌てて
「あっ! すいやせん! ついてきやす!」
と言った。
旅人が歩き出してその後を大男がついていった。
旅人と大男は町を離れて原野の真ん中に伸びる道を歩いていた。
大男は周りを見渡してひと気がないことを確認してから旅人に話しかける。
「いやぁ、さっきはすいやせんでした」
「あんな大声で話されたら困りますよ」
「そういや、俺にはタメ口でいいっすよ」
「そう? それじゃあお言葉に甘えて。改めてこれからよろしくね」
「こちらこそ、よろしくっすよ。旦那」
「はぁ。それにしてもこんなにすぐにバレるなんてついてないなぁ」
「はははっ。まさか世界を恐怖に陥れた伝説の魔王が不慮の事故で死ぬなんて俺だって思わないっすよ」
「今までは魔法が使い放題だったから不意打ちの警戒なんて余裕だったのに、今はもう魔法を使いすぎるとすぐに眠くなっちゃうんだよ」
「えっ、旦那はまだ魔法使えるんすか?」
「少しなら使えるよ。世界から魔法がなくなったとは言われてるけど、厳密には魔法を使うために必要な魔力がものすごくインフレした状態になっただけだから、魔力が元々強い僕と女神は軽い魔法なら使えるんだよ」
「へぇ。なんかズルいすね」
「あははっ」
大男は魔王に質問する。
「そういや、旦那はどこ目指して旅してるんすか?」
「旧女神城跡地を目指してるんだ」
「それって結構かかるんすか?」
「そうだね。まだ一週間以上歩くと思うよ」
「マジっすか…でも観光地なら美人な姉ちゃんもいっぱいいそうっすよね」
「まあ、そうかもね」
魔王は淡々と話すが、大男はテンションが上がってくる。
「うっひょー! ぜってぇ遊びまくるぞ!」
「それまでにお金も貯めておかないとね」
「うっす! 任せてくだせぇ! ところで旦那は好きな女のタイプってどんなんすか?」
「え? えーと……別に……ないよ」
「またまた〜。旦那ほどビッグな男ならもう世界中の美人は抱き尽くしたってことっすか?」
「い、いや……」
「へへっ、旦那は意外とウブっすね。俺はもちろん胸のでっかい姉ちゃんがタイプなんで、見つけたらぜひ紹介してくだせぇ!」
「あ、あはは……分かったよ」
魔王は大男の圧に押されて苦笑いで答えた。
そうこうしているうちに新しい街が見えてくる。魔王は大男に言う。
「次の町が見えてきたよ。露店が多いらしいけどどうする?」
「露店はあんまし興味ないんで、別行動にしやしょう。駄賃だけもらっていいっすか?」
「いいよ。まずは宿を見つけて、それから別行動にしようか」
「よっしゃ! 分かりやした!」
そうして駄賃をもらった大男は旅人と別行動でお姉さんと遊べる店に入ったもののすぐに資金が底を尽きてしまった。宿に戻っても暇なので旅人を探して歩いていると、喫茶店で旅人がお茶を飲んでいるのを見つける。声をかけようとしたがよく見ると向かい側に女の子がいることに気づいて慌てて隠れた。
あんなに女に興味なさそうな反応をしてたくせに町についた途端ナンパかよと思っていた大男だったが咄嗟に閃く。
あの二人の仲をいい感じにすれば俺の株は爆上がりして、あの男が魔王に返り咲けばその恩人である俺は人気者に。そうなれば俺は毎日美人なお姉さんと遊び放題に違いない。
大男の脳内には幼稚な紙芝居が繰り広げられて完璧な作戦が練り上げられた。そして少し離れた席から二人の様子を確認する。
「ふむ。痩せ型で肉付きはあまり良くない。俺のタイプじゃないな。旦那はああいう子がタイプなのか」
大男は小声で独り言を呟いた。
十六話へ続く
ここまで読んでいただきありがとうございます。作者の心許無い灰色(こころもとないはいいろ)と申します。
今回はほのぼの回だったんじゃないでしょうか。後書きに書くことがないので話を読み返してみましたが、オモロいな〜と自画自賛しています。とりあえず続きを書きたいので後書きは短く終わらせていただきます。
今後も不定期の更新になりそうですが、何かしら見える形で応援していただければ幸いです。それでは次回もお楽しみにお待ちください!




