第十一話 出会ったあの日と、囲む焚き火は
初投稿です。小説の執筆は完全に初心者です。拙い文章ですがよろしくお願いします。この物語には残酷な表現や大人な雰囲気になる表現(※直接的な性的描写はありません)などが含まれます。R15に設定しています。苦手な方はご注意ください。
この物語はファンタジーな異世界で生きる登場人物たちの恋模様を描いています。
・あらすじ
魔法文明が崩壊してその文化が失われていく中、死んだと思われていたはずの魔王が正体を隠して旅をしていた。魔王は旅の中で出会った魔法に憧れる少女と偶然魔王の正体を知ってしまった大男と共に目的の旧女神城跡地を目指して旅を続ける。
「こんにちは。どうかしましたか?」
旅人は笑顔で挨拶した。
林の脇の道を歩いていた旅人は、武器を持って茂みから出てきた三人の男に道を塞がれていた。三人のうち二人は小柄で、一人は大柄だった。
険悪そうな男たちは旅人に武器を向けて言う。
「荷物を全部置いていけ」
「それは困りますね」
旅人は背負っていた大きな荷物を地面に下ろした。山賊たちの口角は上がる。
旅人は腰に下げていた剣を鞘ごと外して鞘が抜けないように布を巻き付けた。
「では、勝負しましょう。僕が降参したらこの荷物は全部あげます。でもあなたたちが降参したらこの荷物を運ぶのを手伝ってください」
「あ? 兄ちゃん数は数えられるか? 俺たちは三人でお前は一人だ」
「はい。もちろん三人まとめて相手してあげますよ」
旅人が笑顔で言うので男たちは狼狽える。リーダー格らしい小柄な男はコソコソと小声でもう一人の小柄な男に何か言った。それから大男に指示を出す。
「お前、デカいんだから先に行け」
「え!? 俺が?」
大男は驚く。しかし他の小柄な二人は大男の後ろに隠れて背中を押した。無理やり前に出された大男は屁っ放り腰で武器の斧を構えた。旅人は鞘に収まったままの剣を構えた。
「な、舐めやがって……!」
大男が斧を大きく振りかぶって旅人に近づき、一気に振り下ろす。しかし、あっさり避けられた。次の瞬間、旅人は鞘に収まったままの剣で思い切り大男の腹を突いた。大男はあまりの痛さに武器を落とし、膝をついて倒れ込む。
離れてその様子を見ていた小柄な男二人は一瞬の出来事に呆気に取られる。
旅人は二人の男に初めに挨拶した時と同じ笑顔を向けた。
それを見た男二人は慌てて逃げ出した。
「あれ? 行っちゃいましたね」
旅人が言うと大男は後ろを振り返る。すでに他の男たちの姿は豆粒程遠くなっていた。
「あっ! あいつら……!」
「どうしますか? まだやりますか?」
「こ、降参だ! 降参する! だから命だけは助けてくれ!」
「分かりました。じゃあ約束通り、荷物は持ってもらいますね」
「ああ、分かった。けど、それ持って俺が逃げたらどうするつもりだ?」
「逃げてもいいですよ。ただのガラクタしか入ってませんから」
不思議に思った大男は旅人が置いた荷物を持ち上げる。
「随分重いな。何が入ってるんだ?」
「魔導書です」
「魔導書? 魔法なんて誰も使えないのにそんなもん集めてるのか。物好きだな」
「はい。この辺にある図書館なら魔導書を保管しているそうなので寄贈しようと思って集めてきたんですよ」
「ふーん。まあいい。とにかく、これを運べば飯ぐらいは食わせてくれるんだろうな?」
「もちろんです。ただし、僕の料理の腕は保証できません」
「ふん、食材だけあれば料理くらい自分で作る」
「それじゃあそこはお任せしますね。あとは歩きながら話しましょう」
「分かった」
大男は荷物を背負い、旅人は剣を腰に戻して歩き始めた。
「あんた、さては名のある武闘家か?」
「いいえ。何者でもありません。ただの旅人です」
「ふーん。俺はさっきの奴らに賊やらないかって誘われてついてきたんだ。けど、俺はさっぱり悪事なんて向いてないのかもな。さっきのが初仕事だったんだがこのザマだ」
「それは災難でしたね」
「まったく……さっきの奴ら、後で覚えとけよ」
「でも幸運でしたね。僕は身軽になれたし、あなたは食事にありつけるわけですから」
「まあ、ポジティブに捉えておくか。おかげで手を汚さずに済んだしな。俺は図体がデカいだけで本当は喧嘩なんてしたことはないんだ。武器を持って戦うなんて尚更だ」
「そうですよね。動きが素人でした」
「あんたに習えば俺も強くなれるか?」
「どうでしょうね? 強くはなれるかもしれませんが、多分この先必要のない力になっていくと思いますよ」
「まあ、魔王は死んだらしいからな。この先すぐに戦争が起こるなんて考えつかん」
「ええ。きっと女神がより良い世界にしてくれますよ」
「あんたは女神の信者か?」
「いいえ。特に何も信仰していません」
「ふーん」
「あなたはどうですか?」
「俺も別に……今はこんな状況だからな。助けてくれるんならなんでもいい」
しばらく歩いてからお昼時に二人は昼食の支度をする。
旅人は大男に食材を渡して火起こしの準備をする。大男は渡されたナイフで食材を手早く切って鍋に入れた。焚き火の準備ができて鍋を火にかける。旅人は大男に調味料を渡した。
「味付けはお任せします」
「あんた、マジで料理下手なのか?」
「実は僕、味が分からないんですよ。何を食べても味がしないんです」
「へぇ、そりゃ困った体質だな。腐ったもん食っても気づけないだろ?」
「そうなんです。でもみんなが美味しくないものでも食べられるのはちょっとお得ですよ」
「そんなのか……?」
大男は調味料を鍋に足して味見する。
「これくらいだな。食べよう」
「ありがとうございます。僕の分は少なくていいですよ」
旅人はスープを少量だけ器によそう。
「これだけでいいのか?」
「はい。僕は他にも食べられるものがありますから」
旅人が鞄から爬虫類の干物を取り出して見せた。干物は独特な臭いを発していて大男は鼻をつまんだ。旅人が聞く。
「こっちがいいですか?」
「い、いや……いらない」
大男は怪訝そうに言った。
旅人が干物を頭から齧っているのを見て呟く。
「なるほど。お得だな」
旅人は大男が作った料理に手をつけた。
「美味しいですね」
「でも味しないんだろ」
「ははっ、そうでした」
十二話へ続く
ここまで読んでいただきありがとうございます。作者の心許無い灰色(こころもとないはいいろ)と申します。
今回のお話から大男の過去編に入りました。実はこの話はかなり初期の頃に書き始めた部分なので文章の雰囲気に若干ブレを感じます。ストーリーの流れ的に本当はここが第一話だったのですが、それだとヒロインが全然出てこないという致命的な欠点があったので順番を並び替えることにしました。重要な三人が集まる瞬間を第一話に持ってきて、この話は回想にすればいいという構成に変更しています。
今回の文章はあとから改変はしていますが、大まかな部分は初期の頃のメモをそのまま使っているのでなんとなく違和感があるような気がします。しかし、修正案もパッとは思い浮かばないので「どうせ誰もみてないから後で修正点を見つけてから変えればいいか」とまずは更新を止めないことを第一優先に心がけています。
この話の順番の並び替えのために前回の第十話を急遽追加しました。三人で焚き火を囲んで回想に入るという流れの中でやりたいネタがあったので、ちょうど良くネタを仕込めたなと思います。この後の展開が自分でも楽しみです。
今後も不定期の更新になりそうですが、何かしら見える形で応援していただければ幸いです。それでは次回もお楽しみにお待ちください!




