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第45幕

「おい…もう大分時間が経っているはずだよな?計画は順当に進んでいるか?」


「はい、3つという目標設定のうち現在では2つまで発見に成功しています。」


「二ヶ月の間に2つとなると、一月に1つペースか。順調だな」


そこはとある高難度ダンジョンの中腹にあるモンスターが一切出現しない所謂セーフティフロアと呼ばれる場所だ。普通であるならばこのような場所は冒険者達がダンジョンの攻略に向けた情報の共有やら怪我した冒険者の治療の他に一時的な仮眠を取る等に利用する空間であり、どのような人間も束の間の休息という意味で緊張をほぐすことのできるはずなのだが、ここだけは世界に点在するダンジョン内のセーフティーフロアにおいても大きな例外だ。


というのも現在その場は凄まじい圧迫感で支配されていた。

とある一人の人物が出している強者だけが醸し出すことのできるその純粋な威圧、力なき者がこの場にいたのならその覇気だけで気を失いかねないものである。

しかし生憎この場には、そんなとある一人の人物が放つ威圧すらものともしないような実力者だけが揃っていた。

そしてそんな中で特に目を引くのはやはり場の中央にてとある案件の近況報告をしている男だろう。


「えぇ、このペースで進めば3つ目が見つかるのも時間の問題であるかと。

しかし我々には"例の物"を見つける能力がない…なのであなたの考えはあくまで1つの目安としていただきたい」


身長は180センチ以上という高身長、その身には軍服を着用している渋顔のその男。顔の渋さから察するにおそらく50歳くらいだろうか。

目の前の凄まじい覇気を纏う人物に臆することなくそう淡々と述べる。


「前にも言ったとは思うが時間はかけられねぇぞ。ただ同時に俺は連続したミスを許さねぇ、お前は優秀だから心配はしてないが…"あいつ"のようになりたくなけりゃドジるなよ」


「えぇ、貴方の期待に添えるように努力しましょう。」


軍服男は口元に薄っすらと笑みを浮かべてそう述べた。


「なら良い。それともう1つ、俺の稼ぎを潰したあのエデルという男の始末についてだが…」


「そちらも心配いりません、まだ奴の抹殺は完了してはおりませんが"エサ"は撒いております。

時期にそちらも良い報告ができることでしょう」


軍服の男は怪しくそう述べると踵を返してその場を後にしたのであった。





またあの時と同じような夢を見た。

全く音がしない草原が広がる世界…そして例のあの小高い丘に子供の姿の僕が一人座り込んでいるんだ。

夢だと薄々分かっているのに僕はやはりこの世界が好きにはならない…というよりキライだ。何というかもう自分の本能がこの世界を拒絶しているのがよく分かるのである。

僕の力不足でユキナを連れ去られたあの日の数時間前にもこの世界の夢を見ていたし…もはや軽いトラウマなんだよね。


「またこの場所か。何で見たことのない景色のはずなのに懐かしい気がするんだろう。」


最初にこの場所での夢を見たときからずっと心の何処かに引っかかっていた疑問である。ホントに不思議だ。


僕は麓に大きく広がる草原と遥か彼方に雄大に聳える山脈を見ながらボンヤリとそんな事を考えていた。

そしてそんな時ふと自分の足元に違和感を感じた。何というか混沌とした…凄まじい力が僕がいる真下の地面に生じたのだ。


「なんだよ。なんなんだよこれは!」


見た目からして紫色をした太い触手のようなその何か。

その混沌とした力は、はっきりとした悪意を持って僕の足や腰に幾重にも絡みつき地面に飲みこもうとしていた。

もちろんのこと僕は必死に抵抗する。


「やめろ!やめろやめろ!離れろよ」


殴る、蹴る、といった基本的攻撃をその触手に繰り出すが全くもって効果がなかった。単に夢の世界だからという理由なのか、子供の姿が故に力もそれに依存する形となってしまっていることが理由なのか、分からないことがだらけだがハッキリと確信を持って言えることはこの状況は僕を心の底から不安にさせ、恐ろしいほどの孤独感を植え付けるには十分であるということ。


「誰か…誰か助けて」


誰もいないはずの世界に僕の届きもしない声がか細くこだまする。

精神も幼くなってしまったのか止めどなく涙が溢れてきていた。


今思い返してみると、これは目の前でユキナがさらわれ僕が死んでしまったことによりフルを道連れにしてしまった時に見た夢と凄く似ている。

あの時はユキナとフルがこの闇のような何かに拘束されていたけど前回との違いは今度はそれが僕だということ。


「ドレイク…フル…ユキナ…父さん」


僕が最後の力で皆の名前を言うのと同時に、その闇の触手は僕の顔にまとわりつき更に勢いを増して小さな僕の身体を闇の中へと完全に沈めたのであった。



「…き…ル!…起きろ!…エデル起きろ!!」


「…んん?」


ドシンドシンという凄まじい振動が体を襲ってきたことによって僕は無理やり起こされた。

犯人は他でもなくフルであった。僕の体の上に乗ってドシンドシンと跳ねてきたり、僕の耳やらを甘噛みしてきたりしてくる。

まったく朝から何という目覚まし時計だろうか…。


「おはようフル…。どうした?」


「何ってもう朝飯の時間だから起こしにきたのだ。それにしても随分と魘されていたようだが悪い夢でもみたのか?」


「良くわかったね。あまり心地よくない夢だったよ」


「我とエデルは付き合いも長いからな。そーゆーのは分かるのだ。ふむ仕方がない、一肌脱ごうではないか」


フルはそう言うとそそくさと僕の布団の中に入ってきて仰向けに寝転んだ。


「何をしているのさ?」


「きっとエデルは最近、癒しが足りないのだよ。さあ我を思うがままにモフるが良い」


満更でもない表情でそう言ってくるフル。確かに今みたいに小さい姿だと不思議ともふもふ欲が上がるんだよね。

フルは構って欲しいだけなんだろうけどさ。


という事で僕はその後5分くらいとなるべく手短にモフモフを堪能した後、皆で朝食を済ませ昨日ハーベスト様達が持ってきた依頼…コルー・ベルナー様の捜索活動を開始することにした。

とは言っても現在のところそのベルナー様に関する情報は多く揃っていない。

ハーベスト様から昨日聞いた基本情報は身長が170センチほど、職業は【ダンジョン研究者】というかなり珍しいものであるということ。性格はじっとしていられないアクティブな人らしい。


もちろんこの情報だけじゃ頼りないので裏技を使おうと思う。


【ハローサポナビさん?1つ頼まれてくれないかね?】


【おはようございますご主人様!ベルナー様の場所なら既に見つけておきました!】


【嘘!?】


いつもの凄まじい声量でさも当たり前かの如くサポナビさんがそう答えてきた。

有能なんてものじゃないね、もはやサポナビさんはスキルの枠組みを超越したもはや別の存在になろうとしていないかね?

だって僕以外の事象にすら息を吐くように教えてくれるもん。


すると次の瞬間、頭の中にベルナー様に関する情報が数多く流れてきた。これもおそらくサポナビさんの計らいによるものだろう。


「どれどれ…現在地、身長、体重、家族構成…ふむふむ性別、性格…性的趣向…得意料理」


なんか後半の方はあまり必要としないような情報まで添付されていたけど、まぁいいや。


「皆聞いてくれ。昨日のハーベスト様達からの依頼の件を覚えていると思うけど、その渦中のベルナー様の居場所が無事に判明したよ。」


「え?どうして見つかったの!?エデルずっと家で寝ていたはずなのに」


この場にいる中で一人だけ驚いたのはユキナである。もちろん他の面々は僕の本契約を通してサポナビさんの力を使えるためにさほど驚いた様子はない。知らないのは彼女だけだからビックリしちゃうよね。


「ということでこれから救援に行ってこようと思う。

一応のためにベルナー様がお怪我をなさっていたらいけないので回復ポーションやら包帯といった治療道具はもっていくつもりだ。何せ随分と長い間家を留守にしているという話だからね」


僕がそう言うとドレイクが手を挙げて質問してくる。


「ご主人様一人で行かれるおつもりで?」


「いや、一応の保険もかけて助手としてドレイクに同行してもらいたい。いざ現地に行ってベルナー様を見つけられなかった時に上空からの捜索が君なら可能だからね。

フルとユキナは家で待機しておいてくれ。

何かあったら念波を通して呼び出すから」


僕は立ち上がり外出の準備を始める。

何があるかわからない…あの変な夢が嫌な形で正夢となってしまうかもしれない。一応だから剣も装備して行くことにしよう。


「それじゃあ行ってくる」


「行ってまいります」


僕とドレイクが玄関の前に立ち二人に挨拶をすると、いきなりユキナが抱きついてきた。


「どうしたんだいユキナ?」


「今朝、少し嫌な夢を見たの。だから少しこうしていたくなって」


「そう…か」


僕も強く、そして優しくユキナを抱き返した。その間3秒ほどだったか、あっという間だった。


「すぐにベルナー様を連れて帰ってきてねエデル。今日は私が調理当番だから美味しいご飯作って待っているから」


「うん」


僕は一言そう返すと、ドレイクとともに我が家を出発したのであった。






●名前 エデル

●職業 モンスターテイマー

● HP 18714/18714 SP 15432/15443

●レベル 72

●スキル 自己回復 与ダメージ倍増

被ダメージ半減 プラズマフレッグ

瞬間移動 HP自動回復 状態異常無効

王の威圧【大】軍隊指揮 認識超強化

風魔法極 炎魔法極

●特殊スキル 学びLV2 視覚共有化LV1

●テイムモンスター 神狼 金豪鋼鉄竜


●名前 神狼 フル 状態【子狼】

●HP 18714/18714 SP 15432/15443

●レベル85

●スキル プラズマフレッグ ????

???? ???? 自己回復 与ダメージ倍増 被ダメージ半減 瞬間移動 認識超強化 HP自動回復 状態異常無効 王の威圧【大】軍隊指揮 風魔法極 炎魔法極


●名前 金豪鋼鉄竜 ドレイク

状態 【人間】

●HP 18714/18714 SP15432/15443

●レベル73

●スキル 風魔法極 炎魔法極 極炎のブレス 鋼鉄化 自己回復 与ダメージ倍増 被ダメージ半減 瞬間移動 認識超強化 HP自動回復 状態異常無効 王の威圧【大】軍隊指揮 風魔法極 炎魔法極




●名前 ユキナ メンデル

●職業 魔法戦士

● HP 1992/1992 SP 951/951

●レベル 45

●スキル 火属性魔法 闇属性魔法 無属性魔法 ???? 水属性魔法



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