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第43幕

「モンスターテイマー特殊スキル【視覚共有化】ですか?」


ドレイクが食卓の上のオレンジジュースが入ったコップの中身をコクコクと喉を鳴らし飲みながら僕に尋ねてきた。

関係のない話であるが、最近ではりんごジュースやパインジュースにもチャレンジしているようだ。


「僕もまだ最近身につけたスキルだから詳しいことは分からない。だけど今のところ分かっていることとすればこのスキルは僕と完全に主従関係となっている…つまり本契約を交わしたモンスターがその瞬間見ている光景を主人である僕も見ることができるという能力なんだ」


「?」


ドレイクは顎に手をやり首を斜めに傾けて体全体で【意味がわからない】というアピールをしてくる。ついでに何故かそのドレイクの横の席に座っているユキナも同じくアピールしてきている。

なんというか二人とも仲が良いな。


「まぁ、言葉で説明されても分からないでしょうから見せてあげるのが一番だよね」


僕はユキナとドレイクを連れて一度、家からバスパの街へと伸びる一本道の道中にある多少の戦闘行為を行っても問題がない程度の広さはある原っぱへとやってきた。

因みに、一応フルも誘ってみたのだが未だに家の隅っこでふて寝をして『行かないもん』と頬を膨らませながら一言言ってきたので、今日のところはとりあえずパスだ。


「そうだな…。わかりやすく解説する為にとりあえず手頃なモンスターでも呼ぶか」


僕はその場で【認識超強化】のスキルを使用して周囲にいるモンスターを捜索した。

該当結果としてはフラッツェルの湖というそこそこ大きな湖が近くにあることもあり、ほとんどが水中でしか活動できない魚系モンスターしかいなかった。

しかし、しばらくして手頃なモンスターが運良くヒットした。なので僕はソイツをこの場に【瞬間移動】で呼び出す措置をとった。


「ドレイクとユキナ、少しだけ離れた場所にいてくれる?」


僕はそうして二人が無事に安全な場所へと離れたことを確認すると、【瞬間移動】僕の少し前の空間がグニャリと歪んだかと思うと、徐々にその歪みが大きな生物の形を作り始めた。

そして暫くして出てきたモンスターに一番驚愕の表情を浮かべたのは、ユキナであった。


「嘘でしょ…冗談じゃない!エデル!?あなた、なんて恐ろしいモンスターを呼び出しちゃうのよ!!」


僕はそれほど恐ろしい存在とは感じていなかったが、これほどまでにユキナが恐怖しているのも無理はない。

よく見るとドレイクも僕のことを心配そうな面持ちで見てきている。

まぁ、それはそのモンスターのステータスを見ればわかるはずだ。



⚫️名前 キラーマンティス

⚫️HP 2321/2321 SP 953/953

⚫️レベル 32

⚫️スキル 斬首術 極 捕食



そうです。僕が呼び出したこのキラーマンティスという巨大カマキリモンスターは、まさしく名前の通りの殺人鬼。1番の特徴としては何よりも目につくあの巨大な鎌で人間や他のモンスターの首を刎ね、その生物の血肉を啜って生きている危険モンスターなのだ。

個体一つ一つのステータスとしては、地上に生息していることもあり、ダンジョンに生息しているモンスターほど高いステータスというわけではないが、それでも体力値が2000オーバーというのは人間側からすれば十分脅威だし、事実として害獣扱いされている。


「てなわけで、口で話すより実戦形式で見てもらった方が早いから手頃で運良く近くにいたキラーマンティスを呼んでみたよ」


僕がまるで友人の他己紹介のようなノリでキラーマンティスのことを紹介した。

しかし、やはりどうもドレイクやユキナには不評な様子だ。


「ご主人、大丈夫なのですか?確か人間界ではキラーマンティスは危険モンスターに分類されていますよ!大丈夫なのですか!?」


「そんなことはどうでもいいの!私は虫が大嫌いなんだから元の場所に帰してきてよ!!」


「そんなユキナ様!どうでも良くはないですって!というかエデル様の心配より己の虫嫌いを優先しないで!」


ドレイクがユキナにツッコミを入れている。


本当に二人とも仲睦まじくやっていることで何よりだ。

しかし、そんな平和な時間も長くは続かなかった。いきなり知らない場所へと飛ばされたストレスか僕らの話題に一瞬にしかならず、無視を決めこまれたために溜まったストレスのせいなのかは知らないが、キラーマンティスが自慢の鎌を振り上げて羽で飛びながら高速で襲いかかってきたのである。


一番近くにいたターゲットである僕へと…


「「危ない!!」」


二人がそう言うよりも早くキラーマンティスはエデルの首を目掛けてその鎌を大きく振り切った。

ドレイク、ユキナ共にこの瞬間はエデルの死を覚悟していた。


…しかし何故かその鎌での攻撃は見事なまでの大きな空振りとなった。

それどころかエデルを目掛けて縦に大きく振りかざした鎌の速さが尋常じゃないスピードであったがために、当の本人すらも鎌のスピードを緩めることができず、そのまま一回転して己の身体に鎌の刃が刺さって悶え苦しんでいた。


ターゲットであった筈のエデルは、先ほどの高速カウンター攻撃を受けたにも関わらず、いとも簡単に横に体を逸らして躱したのであった。本来であれば避けることができただけでも奇跡であった。しかし、彼はさらに驚くことに目を瞑ったままであれだけのスピードで繰り出された一撃を避けていたのだ。


「分かったでしょ?僕は今、目を閉じた状態で"右手の鎌から繰り出された攻撃"を避けたんだ。ドレイクの瞳だけを頼りにしてね」


エデルは目を閉じたまま、そう言った。

彼はニコッと笑って自身がキズを負っていないことを観覧者二人にアピールした。


「なるほど、分かりましたよご主人!その力が本当なら私の瞳を通して次にキラーマンティスが放とうとしている攻撃が分かるんですね?」


実際、ドレイクの視線の先にいる既に満身創痍のキラーマンティスはまだ機能している左腕の鎌を苦し紛れに、未だに目を瞑ったままのエデルの首目掛けて横から攻撃を繰り出そうとしていた。


ドレイクからすれば、目の前でご主人であるエデルが危険な目に遭いかけているこの状況はあまり見ていたくはなかった。本当のことを言うならば、エデルに危害をくわえようとしているキラーマンティスを自分の腕だけでも竜化させ、その腕に地獄の炎を纏わせた正拳突きで攻撃して今すぐにでも消し炭にでもしてやりたい気分であったが、ここはグッと堪えた。

考えてみれば、エデルのテイムモンスターであるドレイクでさえ主人であるエデルの強さを知らない。エデルがどれだけ強いのかをドレイクは知りたかったのだ。


ドレイクの核心にも似た質問にエデルは

笑顔でこう答えた。


「左腕の横からの攻撃!」


エデルはそう言い目を見開いた。そして直後、ちょうど鎌の刃がエデルの首を通過する寸前のところで彼は素早く、無駄のない動きでその場にしゃがんで見事に再度、避けてみせた。

そしてその腕のスピードを殺すことができなかったキラーマンティスの胴体へと再度、鎌の刃は食い込む事態となった。


「ふぅ…」


エデルがゆっくりと目を開けると、遠くで驚愕の表情を浮かべているユキナと尊敬の眼差しを浮かべているドレイクの二人が目に入った。

どうやらユキナの方はエデルの横で緑色の液体を体のあちこちからぶちまけているキラーマンティスを見てゾッとしているんだと思う。


⚫️名前 キラーマンティス 状態【死亡】

⚫️HP 0/2321 SP 653/953

⚫️レベル 32

⚫️スキル 斬首術 極 捕食


ステータスを見て確認したところ、どうやら死んでしまったようである。

確かによく見て見たらキラーマンティスの足元からズブズブと少しずつ地面に飲み込まれていっていた。

あと数分もすれば、ドロップアイテムだけが付近に転がっていることだろう。


さて、新しいスキルのお披露目会もできたことだし家に戻ろうかな。

エデルが観覧者二人に帰ることを提案しようとした矢先、後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「すっごーーいね!!英雄のお兄ちゃん!!あんな大っきなモンスターをやっつけちゃうなんて!!」


「確かにフューリと言う通りだ。ここら辺の土地を縄張りにしていてよく冒険者に危害をくわえることから、害獣認定されていた噂の大型のキラーマンティスを武器も使わずに葬るなんて…お兄ちゃんもビックリだ」


なんと、僕らの前に現れたのは、バスパの街の有力貴族であるコルーの屋敷に住んでいる一族の次男と三男。ハーベスト様と!フューリ様であった。


「え!えぇ!?フューリ様とハーベスト様が何故このような所に!?」


さすがのエデルも突然、この二人が現れたことには驚きを隠せなかった。

だって無理もないでしょう?有力貴族の次男坊と三男坊が傍に護衛兵士すらもつけないでバスパの街から離れているこんな辺鄙な場所へと赴いているのだ。


「驚かせて悪かった。悪気はない、どうか許してくれ。ところで、私たちがここへと赴いた理由なんだが…ちょっとだけ君たちに頼みがあったもので、私たちの別荘…もとい、今はエデル君達が暮らしているあの家へと向かっていたのだ。」


「そうそう!そうしたら途中でズドーンってすっごく大きな音が聞こえたからお兄ちゃんと見にきたんだ!」


「なるほど。それで遥々このような場所へ…」


エデルは相槌を打ちながら二人の話を聞いた。

しかしやはり春の時期が近づいてきてはいるが、外は十分に冷える。


「とにかく詳しい話は家の中で。温かいコーヒーでも飲みながらとしましょう」


エデルは、ドレイクと共に先ほどのキラーマンティスから落ちたドロップアイテムをしっかり一つ残らず回収したことを確認すると、他の3人を連れて瞬間移動で家へと戻ったのであった。






「おや?ここのコーヒー美味しいですね!何というか…私らの屋敷で提供されるコーヒーとは違い、どこか奥深い味わいだ」


「バスパの街でポピュラーに飲まれている豆から焙煎しているので、大きな差異は無いとは思いますが…

強いて言うならフラッツェルの湖から汲み出している天然水を使用しているので、香りが引き立つのかもしれませんね」


「なるほど、屋敷のコーヒー豆は高価な値段のものを使っているがこのような味はでない。ふむ興味深いな」


ハーベスト様はそう言うと、再びカップのコーヒーを一口飲んだ。

この時エデルは、僕より3つほどしか年齢は変わらないはずなのに、コーヒーの味について語ることができるハーベスト様には色々な意味で敵わないと感じていた。

因みに現在ハーベスト様の隣にいるフューリ様はオレンジジュースを、僕の横にいるドレイクはりんごジュースを飲んでいる。ユキナは、ヘソを曲げているフルのためにブラッシングをしてあげるために別室にいるといった感じだ。


「さて、落ち着いてきたところであの時の話の続きをしましょう。

私への頼みというのは、どのような内容なのでしょうか?こちらとしては、無理のない程度の内容であれば前向きな答えを出すつもりですが…」


とりあえず僕の方から切り出して見た。別に僕はあまり頭がキレる方ではないので貴族との太いパイプを作るために…だの高額な謝礼金をもらうためにといった裏の考えを巡らせての発言ではない。

僕は英雄への第一歩は人助けだと思っている。だから、その考えに則っただけにすぎない。


「君は確かに"正しい心"を持っているね。君になら依頼ができるな」


もうしかしてこの一瞬の間に僕は"試された"のだろうか?


僕がこのような思考に陥っている理由は、彼のステータスを覗き見したことによる。


⚫️コルー ・ ハーベスト

⚫️職業 読心術師

⚫️HP 598/598 SP 231/251

⚫️ 分析極み



どうやら彼は、人の行動から心に抱いていることを読み取ることができるスキルを有する【読心術師】という職業だということが分かったのだ。

よく分からないが、おそらく僕は今日ハーベスト様に出会った瞬間から"依頼を頼むに値している人間"かどうかを試されていた気がするんだ。

微弱だったけどスキルの発動も常に感じていたし。


「さて、改めて自己紹介をさせてもらおう。私はコルー・ハーベスト。読心術という相手の考え、行動を細かい動作から分析することを得意としている。

さっきまでエデル君には黙っていたが、君のことも分析させてもらったよ」


「はぁ」


「怒らないのかい?勝手に分析したんだよ?」


僕はそんなハーベスト様に微笑みながらその行動に対する自分の考えを伝えた。


「別にほぼ初対面に近い人間を警戒するのは不思議じゃないですから分析されても怒りはしませんよ。

逆にハーベスト様の警戒心をこちらもしっかりと"見る"ことができたので良かったです!」


僕がそのように答えるとハーベスト様はピクっとだけ反応すると、手に持っていたコーヒーカップをテーブルに置くとクスクスと笑いだした。


「あのー?何かおかしなことがあったでしょうか?」


僕は不安になってハーベスト様にそう尋ねた。もうしかしたら、この笑いの裏にも僕を分析する成分が含まれているかもしれない。分からんけど。


「いや、私は貴族という立場なので多くの人間をみてきたが君のような人間は初めてあったよ。

それにしてもなかなか滑稽ではないか?読心術師が"分析"されていたなんて」


おそらく、僕がハーベスト様の警戒心について語ったことを言っているのだろう。


「お待たせした。それじゃあ本題に入らせてもらおう。私たちコルーの人間が君に依頼する内容について…」


「はい」


数秒間だけ無言の時間が続いた。その間、ハーベスト様は少し俯き加減になり僕と目合わせようとはしなかったが、しばらくして重たそうな口を開いた。


「私たちコルー一家の現当主であるコルー・ベルナーが最近、フラッツェルの湖のほとりで目撃されたという情報が入ってね。

その情報の真偽を確かめて欲しいんだ」









●名前 エデル

●職業 モンスターテイマー

● HP 18714/18714 SP 15432/15443

●レベル 72

●スキル 自己回復 与ダメージ倍増

被ダメージ半減 プラズマフレッグ

瞬間移動 HP自動回復 状態異常無効

王の威圧【大】軍隊指揮 認識超強化

風魔法極 炎魔法極

●特殊スキル 学びLV2 視覚共有化LV1

●テイムモンスター 神狼


●名前 神狼 フル

●HP 18714/18714 SP 15432/15443

●レベル85

●スキル プラズマフレッグ ????

???? ???? 自己回復 与ダメージ倍増 被ダメージ半減 瞬間移動 認識超強化 HP自動回復 状態異常無効 王の威圧【大】軍隊指揮 風魔法極 炎魔法極


●名前 金豪鋼鉄竜 ドレイク

状態 【人間】

●HP 18714/18714 SP15432/15443

●レベル73

●スキル 風魔法極 炎魔法極 極炎のブレス 鋼鉄化 自己回復 与ダメージ倍増 被ダメージ半減 瞬間移動 認識超強化 HP自動回復 状態異常無効 王の威圧【大】軍隊指揮 風魔法極 炎魔法極




●名前 ユキナ メンデル

●職業 魔法戦士

● HP 1992/1992 SP 951/951

●レベル 45

●スキル 火属性魔法 闇属性魔法 無属性魔法 ???? 水属性魔法


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