第42幕
新エピソードスタートします。
「おい、聞いたか?あのスゲー噂」
「あれだろ?バスパの街の隣にあるメビウスのダンジョンをクリアした人間が最近、現れたってやつだろ?
なんかイマイチ信憑性に欠ける気がするけどな」
「それがどうやらあの噂は本当らしくてだな。俺の知り合いの情報屋によると…」
男たち二人がカウンターに座り酒瓶を片手にそんな話をしている。
ここはビヤルドの街の中央にある冒険者ギルド1Fの酒場エリア。外は夜の寒さのためか雪がちらほらと舞い、冬の色が濃く出てきている。そしてそんな中、一日を通して街の内外で働いてきた者たちが時間の経過と共に少しずつ集まってきており、場は非常に賑やかな状況だ。
周りを見渡すとその日の愚痴をこぼしている者、プロポーズをしてみたが彼女に振られて涙を流している者、酔いが回って暴れている者と多種多様な人間がいる。
しかしそんな中でも圧倒的に多いのはビヤルドの街で最近持ちきりになっているある人物についての噂話をしている者たちである。
「なんでも年齢はまだ20歳でこの街出身の人間だという話しだってよ!」
「なんだそれ!?ホントに考えらんねぇよ。俺なんか今年でもう40なのに【木こり】なんて職業なだけあってそんなスゲェこと成し遂げたことねぇぞー!」
「俺だってこれでも一応【剣士】だが、パーティ5人と全力で挑んでもあのダンジョンは12階層までしか行けなかった。全く、どんだけスゲェ職業を授かったんだろうな?」
この噂がデマなのかはたまた真実なのかはこの場の全員知らない。しかし、これほどまでにこの話が話題となっている理由はその噂となっている人物の正体と素性が全く分からないからだろう。
職業付与で受けた職業は?性別は?メビウスをクリアした際のパーティの人数は?使用している武器は?
これらを推測して語り合うだけでも彼らには十分なほどの酒の肴となるのである。
「おいおい何言ってるんだよ木こりのおっちゃん!俺が聞いた話によるとメビウスをクリアしたのは女で…」
「いや、ちげぇよ!魔法使い職の青年で…」
「いやいや、まだ20にも満たない青年で…」
「いやいやいやいや、俺の聞いた噂だと…」
「うぃ〜//」
また一人、また一人と酔っ払って既に出来上がっている冒険者が熱い討論を男たちに持ちかけてきた。
本当に人間は噂が好きなのである。気づけば酒場の客のほとんどが最初の木こりと剣士の男たちの元に集まり、自らの推測を語り出していた。
しかしそんな酒酔い男たちの集団を横目に数席離れたカウンターに座っていた男は小さくため息をつく。
「全くくだらねぇ」
目の前の透明なグラスの中に入っているそこそこアルコール度数が高い酒をグビグビと口から体に流し込みその男は、酔いの回った頭であの時の光景を思い浮かべた。
「街の中央噴水広場で俺とトールは確かにあの恐ろしく強ぇ女のガキに殺されかけていた。だがそんな中"あいつ"は突然現れて俺らを助けてくれたばかりでなく謎の力で傷の治癒までしてくれたんだっけかな」
その男、有力家族ノエル一族のカインはそう言うと自分の身体を改めて見てみた。
カインはあの時、確かにあの中央噴水広場で謎の少女に襲われ、至る所に重傷級のケガをし負い場所によっては骨折までしていた。誰がどう見てもしばらくの間は【農家】の職には復帰できないことは明白であった。それどころか目の前の少女に殺され、明日を迎えることができるかさえもわからない危機的状況であった。
そんな状況にも関わらず咄嗟に出てきて助けてくれてたあの男…エデルはカインがどれだけ反撃しようとしてもビクともしなかったあの少女からダウンを奪っただけでなくそんなカインらが負った深手をたったの数秒足らずで治してしまったのだ。
お陰であの次の日から何の支障もなくノエル家の敷地にある広大な畑を無事、耕すことができた。
だからこそ、そんな経験を積んだからこそ確信に近い根拠がカインにはあった。
「間違いなくメビウスをクリアしたのはエデルだ。絶対に」
カインは最後にグラスに残った酒を飲み干すと金をその場に置いてギルドを無言で雪がちらほらと舞っている外へ出て行った。
そしてそんなカインの背中を話の渦中の一人の少女が笑いながら見ていたなんてカイン自身は知る由もない。
「ふふ、…そう。私のエデル様は常に成長を続けている。私にはいずれ全人類…いえ、全生物の頂点に立つあのお方を見届けることこそ生きている意味。…だから」
【ご主人様!!スタートしてから丁度1時間経ちましたのでフル様とドレイク様に集合合図の念波をとばしておきました!】
いつものどデカイ声が僕の頭の中に響いてきた。その正体は久し振りに活躍を見せてくれているサポナビさんだ。
「おっと、もう終了時間か。ありがとうサポナビさん」
エデルはそう言い目を閉じたままその場で深く深呼吸を一つした。
ここはエデル達の家の軒先。地面には残雪の他に若草が所々に顔を出して、少しずつ春の訪れを感じる。
この木造住宅に越してきて早くも半年が経ち、エデルを始めとしたこの住宅に住んでいる人間たちには最近、さらなる成長と変化が見られていた。
【どうですかご主人様?"視えました"?】
サポナビさんが軒先にある切り株に腰をかけ目を閉じた状態のエデルにそう問いかけた。
「うん、最初の頃に比べるとだいぶね。試してみよっか?
じゃあ、この情報が正しいなら…もうすぐ僕の目の前にスノーラビットが降ってくるね
ドレイクの獲物のようだ」
エデルがそう行った刹那であった。エデルの前方10メートルほどの地面に上空から何か巨大なものが降ってきて、その衝撃で周りの残雪を巻き上げた。
そしてその数秒後、残雪や周りの埃やらを巻き上げて起きた砂煙が晴れると真っ白な毛皮を見にまとった体長2メートルほどの大きな獣の姿があった。
●名前 スノーラビット 状態【死亡】
●HP 0/2532 SP 132/985
●レベル31
●スキル 隠れ蓑 目眩し
「どう?正解でしょ?」
エデルは未だ目を閉じたままニヤリとした表情を浮かべた。
【ご主人様すごいですね!大正解ですよ!!】
サポナビが主人のエデルを大声でそう褒めた。
そしてここでさらにもう一言
「おっと。どうやらフルも帰ってきたみたいだ」
『む!?我が気づかれたのか?せっかく透明化までしてエデルを脅かしてやろうと思っていたのに』
そう少し残念そうな感じに言いながらエデルの後ろから姿を現したのは、巨狼姿のフルだ。よう見るとその口には何か白色の巨大な生物を咥えていた。
エデルはすっと目を開くとフルの方に向き直った。
『それより見てみろエデル!このホワイトモールは冬の時期にだけ活発に活動するモグラのモンスターだ!
体重もそこそこありそうだしドレイクとも良い勝負になるんじゃないか!?』
「こりゃまたすごいな…。まさかホワイトモールなんて希少価値の高いモンスターを狩ってくるとはおもわなかったよ。
さすがに僕も"二人は視えないし"」
『そうだろうそうだろう?もっと我を褒めるのだ!』
と、エデルとフルがワイワイ話し合っていると先ほど、上空からスノーラビットを落下させた人物。竜の姿のドレイクがその羽を広げてドスンと舞い降りてきた。
『エデル様お待たせしました。早速ですが計測の方をお願いしたい』
早く結果が気になるドレイクがソワソワしながらそうエデルに提案した。
「そうだね。そのまま地面にスノーラビットを放置したままだと埋もれてドロップアイテムだけになってしまうしね。
なら計測を始めちゃおっか」
ドレイクとフル、彼らがここまでこの’狩ってきた獲物の体重対決'に躍起になっているのには理由があった。
『はやく終わらせるのだエデル!そして勝利のモフモフとブラッシングをするのだ!』
『フル様、残念ながらこの勝負をもらうのは私、ドレイクですよ。ご主人と一緒にバスパの街まで行きオレンジジュースを飲む権利は絶対に私がもらいますから』
この勝負の勝者にエデルがささやかなそんなプレゼントを用意した結果、ここまで熱くなったのである。
元はフルがドレイクより自分の方が力もあって優秀だという発言にドレイクが腹を立てたことによりこの勝負がはじまったわけだが、もはや今はそのプレゼント目当ての勝負となっている節がある。
「はいはい、バチバチしないしない。それじゃあまずは、スノーラビットの方から」
エデルがそう言いながらスノーラビットに手をかざすと、瞬時にサポナビさんが測定を行ってくれた。
【このスノーラビットを解析した結果、体重が230キロでした!】
ふと、エデルがドレイクの方を見てみるといつのまにか子供の姿となっていたドレイクが鼻高々とフルの方を見ていた。
「それじゃあ、次はフルがとってきたホワイトモールだね」
【既に解析済みですよ!体重は227キロでした!!】
「え!?仕事早くない!?」
なんと既に解析を終えていたらしい。サポナビさん、恐ろしや。
そんなわけで、この瞬間、2匹の勇士が演じたこの勝負の勝者が決した。
軍配はなんと僅差の戦いを制した挑戦者ドレイクの方に上がった。
「危ない戦いでした。ですが私が勝者ということは…」
ドレイクはそういうと非常に嬉しそうにエデルの方を見てきていた。
「うん、それじゃあ今度一緒にバスパの街に行こうか」
エデルもドレイクに笑顔でそう呟いたのであった。
「そういえば先ほどまでずっと目を瞑っていたようですが、あれは何故ですか?」
ドレイクが僕にそう尋ねてきた。
僕らが家の中に入って一番最初にした話はやっぱりコレだった。
家の端の方で悲しさのあまり顔を伏せてふて寝しているフルもこれは気になるようで耳を上にピンと張っている。
仕方がない。僕が最近、サポナビさんの支援もあって身につけた新たな【特殊スキル】のネタばらしをしよう。
「実は二人が対決をしている最中、僕が最近身につけたスキルを試験的に使っていたんだ」
「へぇ〜、それでそれで?どんなスキルなの?」
途中から昼ご飯の片付けを終えたユキナも合流した。
「そのスキルの名前は【視覚共有化】。モンスターテイマーという職業を持った人間だけが覚える可能性のある所謂【特殊スキル】さ」
●名前 エデル
●職業 モンスターテイマー
● HP 18714/18714 SP 15443/15443
●レベル 72
●スキル 自己回復 与ダメージ倍増
被ダメージ半減 プラズマフレッグ
瞬間移動 HP自動回復 状態異常無効
王の威圧【大】軍隊指揮 認識超強化
風魔法極 炎魔法極
●特殊スキル 学びLV2
●テイムモンスター 神狼
●名前 神狼 フル
●HP 18714/18714 SP 15443/15443
●レベル85
●スキル プラズマフレッグ ????
???? ???? 自己回復 与ダメージ倍増 被ダメージ半減 瞬間移動 認識超強化 HP自動回復 状態異常無効 王の威圧【大】軍隊指揮 風魔法極 炎魔法極
●名前 金豪鋼鉄竜 ドレイク
状態 【人間】
●HP 18714/18714 SP15443/15443
●レベル73
●スキル 風魔法極 炎魔法極 極炎のブレス 鋼鉄化 自己回復 与ダメージ倍増 被ダメージ半減 瞬間移動 認識超強化 HP自動回復 状態異常無効 王の威圧【大】軍隊指揮 風魔法極 炎魔法極
●名前 ユキナ メンデル
●職業 魔法戦士
● HP 1992/1992 SP 951/951
●レベル 45
●スキル 火属性魔法 闇属性魔法 無属性魔法 ???? 水属性魔法




