第39幕
「どう?満足した?何か話してくれる気になってくれた?」
「まだ…ダメ」
僕は外は秋なのに一足早く冬を迎えた財布の中を凝視して涙目を堪えながらあの少女に尋ねる。
当の少女は僕のそんな懐事情なんかを気にする様子などさらさら無いようだ。泣き止んでもらうために先ほど屋台で僕が買ってあげた【ワタアメ】というお菓子を頬張りながら彼女はそう言った。
既に先ほど薬屋には寄ってフラマメの漢方は無事に購入できたので、あとはこの街で済ますべき用は実家に顔を出すことくらいのはずだ。
「はあ…困ったな」
果たして何故このような状況になってしまったのだろうか?もう訳が分からんよ…
既に彼女が騒ぎを起こしたことはこの街のほとんどの住人に伝えられたのだろう。先ほどから通りすがる人達からギラギラと鋭い視線が突き刺さる。
しかしそんな視線を気にしていてもしょうがないので、再度彼女の素性を知るためにアタックしてみる。
「じゃあとりあえず名前!名前だけでもさ!」
「…そうね。私の正体は教えてあげてもいいわ。で!も!条件がある!その条件を飲んでくれるのであれば私が知っていることは何でも教えてあげる!」
少女は最後に残ったワタアメを小さな口一杯に頬張って完食してから目をキラキラさせながら思いもしなかった条件を提示してきたのであった。
「ただいま戻りましたぁ!」
僕はバスパの街へ戻ってきてすぐにコルーの屋敷の門を叩いた。
空を見てみると既にオレンジ一色に染まってしまっている。実家に顔を出したり何やらといろいろあってビヤルドの街をお昼頃に出たことを考えると少し遅くなってしまったようだ。
だけどまぁそうとは言っても瞬間移動無しだと片道一週間はかかることを考慮すると、マシなはずだ…と信じたい。
しばらくして屋敷の扉を開けて出てきたのはいつものお手伝いさん…ではなく、なんとフューリ様だった
「おっかえりー!英雄のお兄ちゃん!」
「おっとっと」
僕は玄関までドタドタと全速力で走って出迎えをしてくれたフューリ様を受け止める。
よく見ると頭には折り紙で作られたかの英雄伝説の主人公が着用していたとされる青色の兜を模した被り物をつけている。
「英雄のお兄ちゃん、みてコレ!ユキナお姉ちゃんと一緒に作ったんだよ!」
「す…凄まじい完成度ですね」
それは遠目では分からないだろうけど、良く見てみると兜の細部まで折り紙で表現されていて冗談無しで一瞬ホンモノに見えなくもない。
その後、フューリ様の申し出でおんぶをしながら玄関からハーベスト様がおられる寝室へと移動した。
「失礼します」
軽めに扉をノックして中へ入ってみると、相変わらず窓際のカーテンを全て閉じてしまっており、暗い部屋の真ん中に置かれているベッドの上で苦しそうに咳をしながら起き上がった人が一人。
「大丈夫?ハーベストお兄ちゃん?」
「…大丈夫大丈夫。はぁはぁ…きっとお兄ちゃんさ、この病気治すから。もうちょっとだけ待っててな」
僕らが部屋に入った音によって目を覚ましたハーベスト様の元にフューリ様が僕の背中で遊ぶのをやめてそそくさと移動をして、そんな会話を交わす。
余談ではあるが、二人は本当にそっくりな顔のつくりをしている。髪の色、目の色顔のパーツまでそっくりだ。唯一違うところといえば喋り方くらいかな。
「それでフューリ?このお方は誰だい?」
当たり前な流れではあるがそんなフューリ様との会話の後に僕に興味を持ったハーベスト様。
僕の自己紹介を詳しくするとどう頑張っても長くなってしまうので、とりあえず端的に…
「お初にお目にかかりますハーベスト様。私はエデル。あなたを苦しめている病を治しにきたそこいらにどこにでもいる冒険者です」
そう言いながらアイテムボックスからフラマメの漢方が包まれた薬包紙をおもむろに取り出した。
その中を少しだけ開いて見て見るとこれでもかと言うほど真っ赤に染まっていた。
僕はそれを見てジンワリと嫌な汗をかく。その理由はそのうち分かるはずである。
「それは何なのですか?」
僕とハーベスト様は初対面だと言うこともあり、当然ながらあちらは多少とはいえ疑いの眼差しを向けてくる。
「これはフラマメの実をすり潰した漢方薬です。私の地元にだけ群生している植物の実なのですがこれが少しだけクセが強くて…」
僕はあえてそこまででフラマメの漢方についての説明をやめて、処方を行うための準備をすすめる。
まあ、準備とは言ってはみたもののそれはとてもシンプルなものであるのだが。
「あの、これはどういう…?」
僕はハーベスト様にフラマメの漢方薬が入った薬包紙と事前に買っておいた中級回復ポーションを渡した。
「とりあえずツライかもしれませんがそれらをどちらも一気飲みしてください」
ハーベスト様は当然疑問を持ちながらも、僕の指示通りおもむろに手に持っていた薬包紙の中の漢方を口に流し込んだ。
「!!!!!」
その瞬間の出来事だった。ハーベスト様は苦しそうな表情で言葉にならない叫びをあげながら一瞬で顔を真っ赤にさせた。
「み…み、ずを!」
ハーベスト様は必死に僕の方をみて水をくれと要求してくる。横にいるフューリ様は何が起こっているのかが分からずアタフタしている。
僕はそんなハーベスト様を見て、あらかじめ渡しておいた中級回復ポーションを飲むように促す。
するとしばらくしてポーションの効果がでたのか顔色がだんだんと良くなってきた。
しかし、よほどフラマメの味によるショックが大きかったのであろう。再び気絶するかのように眠りに落ちてしまった。
というより気絶した。
「え?英雄のお兄ちゃん!?ハーベストお兄ちゃんに何をしたの!?」
「実はなんだけど…」
実はこのフラマメの実なのだが、超絶級に辛いことでうちの地元では有名なのだ。その辛さのほどは大人の火竜が一粒フラマメの実を口に入れただけで舌を麻痺させて炎のブレスがしばらく使えなくさせるほどらしい。おそらくドレイクのような伝説クラスの存在ともなれば例外だろうけど…とりあえずこのフラマメというものの危険度は承知頂けただろう。
僕はそれを知っていたのであらかじめ対策として中級回復ポーションも購入していたのだ。
「とりあえずハーベスト様はこれから十分な睡眠や食事を取れば治ります。」
「そうなの!?やった!英雄のお兄ちゃんがハーベストお兄ちゃんを治してくれた!」
僕の足元でとても無邪気に喜んでいるフューリ様。きっと今まで父親も行方不明でさらに一つ上のお兄さんが謎の高熱に侵されていたらそりゃあ他の人が思う以上に心配をひとりでに抱えこんでいたはずだ。
とにかくそんなフューリ様の心配要素を一つでも取り除くことに尽力できて本当に良かった。
僕はそんな無邪気なフューリ様を微笑みながら見守る。
すると突然、フューリ様が何かを思い出したように僕の方へと向き直った。
「そうだ英雄のお兄ちゃん!僕たちと一緒に夕方のご飯を食べようよ!ちょうどさっきドレイク君って子とオオカミ君がこんなに大きな猪のモンスターを狩ってきてくれたんだ!それでね、今ユキナお姉ちゃん達がそれで美味しいものを作ってくれているんだ!」
「ハハ…嘘でしょ?」
思わず乾いた笑いをこぼしてしまった。
「あの子らは一体何をしているのよ…人の家で。」
フューリ様はこれでもかというほどに目を輝かせて手を広げてパタパタさせながらモンスターの大きさを表している。
見てみるにフューリ様が今まで見たことがないほどのデッカい猪を狩ってきた様子です。あの子達。
「それじゃあ一緒に食べよ!英雄のお兄ちゃん!ユキナお姉ちゃん達も待ってるよ!」
「うお!」
僕はフューリ様に手を引かれ、急かされながら気絶したハーベスト様だけが残された寝室を後にしたのだった。
「フンフン♪さすがエデル様、うまくやってくれてるみたいね♪」
そんなエデル達のやりとりを鼻歌を奏でながら屋敷の外で隠れどこか嬉しそうに、そしてどこか監視するかのように見つめる少女がいた。
超認識強化という人間が通常手に入れることなどまず無いレアスキルを持ち、さらにそれを常に発動させているエデルでさえも気がつけないほどの驚くほど高度なスキルを駆使させながら。
「きっとあなたはまだまだこれからも私を喜ばしてくれるのよね」
少女はそう笑いながらどこかへと消えていった。
●名前 エデル
●職業 モンスターテイマー
● HP 18714/18714 SP 15443/15443
●レベル 72
●スキル 自己回復 与ダメージ倍増
被ダメージ半減 プラズマフレッグ
瞬間移動 HP自動回復 状態異常無効
王の威圧【大】軍隊指揮 認識超強化
風魔法極 炎魔法極
●特殊スキル 学びLV2
●テイムモンスター 子神狼
●名前 神狼 フル
●HP 18714/18714 SP 15443/15443
●レベル85
●スキル プラズマフレッグ ????
???? ???? 自己回復 与ダメージ倍増 被ダメージ半減 瞬間移動 認識超強化 HP自動回復 状態異常無効 王の威圧【大】軍隊指揮 風魔法極 炎魔法極
●名前 金豪鋼鉄竜 ドレイク
状態 【人間】
●HP 18714/18714 SP15443/15443
●レベル73
●スキル 風魔法極 炎魔法極 極炎のブレス 鋼鉄化 自己回復 与ダメージ倍増 被ダメージ半減 瞬間移動 認識超強化 HP自動回復 状態異常無効 王の威圧【大】軍隊指揮 風魔法極 炎魔法極
●名前 ユキナ メンデル
●職業 魔法戦士
● HP 1992/1992 SP949/951
●レベル 22
●スキル 火属性魔法 闇属性魔法 無属性魔法 ???? ????




