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第40幕

40幕!

「それでは…いきますよ。エデル!」


ユキナはそう言い緊張感を漂わせながら、手に持ったステッキを強く握りしめる。


「うん!いつでもどこからでもどうぞ」


僕も同時に赤の剣を構える。すると前方から直径2メートルほどはある火の玉が同時に4つ飛んできた。


「火属性魔法・エンブレムファイア!」


「上級魔法…!」


エンブレムファイアは上級の火属性魔法。ゆえに消費SPが高く、熟練された魔法使いの職業を所持した者であろうともせいぜい2〜3発連続で放つのがが精一杯なはずだ。彼女はそういう面でも誰がみても素晴らしい才能を持った人間だ。

しかし…


「その程度じゃ僕は倒せないよ!」


そう言うなり、僕は走り出しながら赤の剣でこちらに高速で襲いかかってくるそれらの火の玉を素早く真っ二つにする。もともと高密度に圧縮されていたその火の大玉は僕の赤の剣で切られたことにより統率性を一気に失い、その反動で一瞬にしてその場で大爆発を起こした。


するとここで予期せぬことが起きた。なんと先ほどの大爆発によって地面の一部が砕け、僕の周りで粉塵が舞い、視界がほぼ奪われる状況となってしまったのである。


「引っかかりましたね!」


「うっ!目くらましか!?」


ユキナの不敵な笑みが一瞬、粉塵の中のどこからか聞こえてきた。おそらくこの隙を狙ってさらなる追い討ちをかけようという考えなんだろう。確かに良い考えだ。

だがまだ甘い!


「風魔法・グラントオブブロウ!」


手のひらを前に広げてそう唱えると、あれだけ視界を遮っていた粉塵があっという間に吹き飛ばされた。さすが風魔法最大威力だというだけありその威力は申し分ない。

今は亡き風王狼に感謝しなくては。


「さすがエデルです。けれど私もそれくらいは想定していましたよ!」


さすがに一瞬で作戦の肝である目くらましが無効化されたことに多少怯みはしたが、ユキナは冷静に先ほどの時間を使ってどうやらもう一つのある魔法をステッキの先で生み出していたご様子。そして突如、笑顔でそれを僕に向けて撃ってきた。


「闇魔法・ブラックエンブレム!」


「うおっ!?嘘でしょ!」


もしかしたら彼女は一度スイッチが入ると見境がつかなくなるタイプなのかも。

僕はこちらに向かって飛んでくる闇の炎を見てとっさに横っ飛びで回避した。


「…まさか闇魔法を使うとは」


ふと後ろにあった壁を見てみると黒色の焦土と化して無残な姿になっていた。


「あっぶな…」


「そんなぁ…どうして あれだけギリギリのタイミングで避けられるんですか!」


「確かにここだったらどれだけ暴れても大丈夫とは言ったけど限度を考えて!さすがに2度も死を経験したくはないよ」


「だってエデルが全力を出していいって言うから」


口を尖らせて可愛らしく拗ねるユキナ。恐るべし。だが僕だって別に本気で怒っているわけでもないし、何より本気を出してくれた方が彼女の成長は早まるだろうから良いことだ。それに先ほどユキナが言ったようにここでなら他の人に迷惑をかけることなく修行が行えると思ってきてみたがどうやら正解だったようだ。


えっ?ここが何処かだって?そういえば説明が遅れたね。

ここは僕とフルがドレイクと初めて出会ったあの場所。メビウスの最深部、100階層である。いやー、ダメ元で瞬間移動を唱えてこの場所をイメージしてみたら普通に来れるんだもん。思いつきでも試してみるもんだね。


「とりあえず一度休戦!一息つこうか?」


「エデルがそういうなら♪」


僕の提案にユキナが笑顔で応える。

理由は分からないけど今日のユキナはどうもテンションが高いな。

そんな彼女はいつも通りテキパキとボス部屋の真ん中にレジャーシートを広げて休憩場所を作ってくれた。


「どうぞ!紅茶とクッキーです!クッキーは今日いつもより少し早く起きて焼いてみたんですよ!」


「すごいね!これは美味しそうだ。ありがとうユキナ!」


「エデルの為に作ったんだよ!たくさん食べてね!」


ユキナお手製の色とりどりのクッキーを2人でほぼ一緒のタイミングで口に頬張り、淹れたての紅茶に口をつけたりしながら僕らはホッコリと小休止を満喫した。

そしてある程度の時間が経過してから僕は先ほどの模擬戦で分析した戦闘結果を告げる。


「ユキナの魔法適性度はかなり高い。魔法だけで見れば冒険者ランクで8程度の実力は間違いなくある。

だけど君はまだ魔法戦士という職業の特徴に気づけていない」


「魔法戦士の…特徴?」


顎に手を当てて深く考え込むユキナ。僕は自称英雄オタクというだけあり魔法戦士というものの戦闘スタイルすらも熟知しているんだ。きっとユキナの場合はいくら考えてもこの答えは戦闘経験をある程度積まないとこの答えは分からないだろう。

僕はそんなユキナを横目に綺麗にカゴの中に並べられているクッキーに手を伸ばそうとした。


すると、その時であった。


…ギギギ… ガチャン


そんな鈍い音をたてながらボス部屋と通常ダンジョンエリアを繋ぐ唯一の出入り口である大扉が勝手に閉まったのである。


「え?何が起きているのエデル!?」


「…どうやら一定時間が経ったからボスが出現しちゃったみたいだ」


実は小1時間ほど前にここへ瞬間移動した時、全長5メートルほどの巨大な黒色のサソリがのさばっており、こちらに攻撃をしてきたのだ。だけどユキナと模擬戦をやるのにはどうしてもそいつが邪魔だったので失礼ながら僕が剣で切り捨てたのだ。おかげでその際マウントスコーピオンの尻尾というレアドロップアイテムを獲得できたのはまた別の話である。


…となると、このボス部屋は1時間周期でボスが変わる設定になっているみたいだね。

だがこの状況は丁度いい。活用させてもらおう。


「ユキナ!強くなりたいんでしょ?なら君一人でこれから出てくるボスを倒すんだ」


「ちょエデル!?何を言って…」


そこまで言ったところで、ユキナの反論をまるで遮るようにして足元の地面が膨れ上がり何者かが砂煙を巻き上げながら姿を現した。


『スシャーーーーーーーー!!!』


砂煙が晴れると、そこにはとてつもなく巨大な紫色のいかにも毒々しそうな蛇がいた。


●名前 ポイズンクローサー

●HP 4063/4063 SP 132/132

●レベル89

●スキル 即死の毒牙


鱗の色だけでなく名前ですらも毒々しかった。

この状況、ステータスだけで見ればユキナが劣勢なのは明確である。ただし、ステータスで見ればの話だ。

僕はユキナに一言だけこの絶望的な決闘に勝つためのヒントを与えた。


「ユキナ!賢く闘うんだ!」






「火属性魔法・エンブレムファイア!」


ステッキの先端から繰り出された大きな火の大玉は高速でポイズンクローサーの胴元に当たる。しかしそれがまるで意味が無いとばかりに鱗にはケガ一つつかなかった。


『キシャー!』


するとそれに怒ったポイズンクローサーが反撃とばかりに口から毒を吐き出してきた。

私はそれをなんとか避け、ステッキを構える。


「これじゃジリ貧ね…」


先ほどからずっとこの繰り返しだ。ハタから見ればどちらも致命的な攻撃へと至っておらず互角に見えるかもしれないが、私の場合は魔法の発動の度にSPを消費させているのでこっちの方が押され気味だ。

私に稽古をつけてくれるはずのエデルは助太刀してくれないみたいだしフル君とドレイク君はこのダンジョンの別フロアで修行をしているので今はいないのです。


「賢く…闘う?」


何より私は先ほどエデルが言っていた賢く闘うという意味が理解できないでいた。

だけど彼は私にあの時ヒントのようなものをくれていた気がする。


「魔法戦士の特徴を理解していない…」


魔法戦士の…特徴。彼は確かそう言っていた。きっとその言葉を理解した暁にはきっと魔法戦士だからこそなさる私だけのワザが身についているはず。


『キシャー?シャーーー!!』


ふとポイズンクローサーを見てみると口から飛ばしている毒を当てることができずそらにその挙句、自分の存在を忘れられたように考え事を始めた私に気づき怒りだしていた。


「エデルがいつも言ってたよ!戦闘は熱くなったほうが負けだって」


怒りに身を任せてポイズンクローサーは四方八方に口から毒を撒き散らし始めた。私はこちらに飛んできた毒だけを見極め難なくその攻撃を回避する。


『キシャーー…』


毒を連発して吐いたことによる為かある程度時間が経つとポイズンクローサーの動きが少しだけ鈍くなってきたようだ。

私はそれを観察しながら一つの考えを実行に移す。


「そうだ!あの毒を出してくる口さえ封じてしまえば…!」


私は口元にうっすらと笑みを浮かべる。


「私が今持っている半分以上の魔法力をあなたにプレゼントしてあげるわ」


そういうなりいつも通りエンブレムファイアを唱えるステッキの先端には火の大玉が錬成される。ここまではいつも通りであるが私はさらにここでもう一度エンブレムファイアを唱えた。


「くっ…!」


さすがにエデルとの模擬戦、そしてポイズンクローサーとの実戦と連戦をしてきているのでSPの消費量が尋常じゃないようだ。呼吸が乱れて汗が出てきた。

しかし私はさらに作業を続行させる。ステッキの先端にまるで巨大なさくらんぼのように浮いている二つの火の大玉を融合させていくのだ。


「私はね!まだまだ強くならないといけないの!だからあなたをその為のステップとさせてもらうわ!」


『キシャー!?』


そんな私の瞳を見てポイズンクローサーはこの時初めて自分が置かれている状況に気づいたのだろう。私が融合させている火の大玉に向けて毒を連射してきた。しかし気づくのが一足遅かったわね。

既に私のステッキの先端に浮いていた二つの火の大玉は完全に一つへと融合され、さらにポイズンクローサーの口へと入れられるように小さく凝縮されるという工程まで既に済まされていた。


「はぁああああ!火属性魔法極・エンパイアファイア!」


私はこちらに飛んでくる毒を回避しながら大きく跳躍してポイズンクローサーの口元まで移動すると、ステッキの先に浮いていた火の玉をその口の中へと放り込んだ。


「エデルとのいちゃいちゃタイムを邪魔したらこうやって痛い目を見るのよ。分かった?」


ドカァァァァァァァァン!!


私が笑顔でそう言いながら地面に着地した瞬間、ポイズンクローサーの体内でエンパイアファイアは大きな爆音とともにまるで花火のように弾けたのであった。







●名前 エデル

●職業 モンスターテイマー

● HP 18714/18714 SP 14865/15443

●レベル 72

●スキル 自己回復 与ダメージ倍増

被ダメージ半減 プラズマフレッグ

瞬間移動 HP自動回復 状態異常無効

王の威圧【大】軍隊指揮 認識超強化

風魔法極 炎魔法極

●特殊スキル 学びLV2

●テイムモンスター 子神狼


●名前 神狼 フル

●HP 18714/18714 SP 14685/15443

●レベル85

●スキル プラズマフレッグ ????

???? ???? 自己回復 与ダメージ倍増 被ダメージ半減 瞬間移動 認識超強化 HP自動回復 状態異常無効 王の威圧【大】軍隊指揮 風魔法極 炎魔法極


●名前 金豪鋼鉄竜 ドレイク

状態 【人間】

●HP 18714/18714 SP14865/15443

●レベル73

●スキル 風魔法極 炎魔法極 極炎のブレス 鋼鉄化 自己回復 与ダメージ倍増 被ダメージ半減 瞬間移動 認識超強化 HP自動回復 状態異常無効 王の威圧【大】軍隊指揮 風魔法極 炎魔法極




●名前 ユキナ メンデル

●職業 魔法戦士

● HP 1352/1992 SP325//951

●レベル 22

●スキル 火属性魔法 闇属性魔法 無属性魔法 ???? ????


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