↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
40/52

第37幕

閑話も合わせて四十話に到達!


「ごめん本当に…僕があの時、別行動をとっていなければこんなことには…」


僕は一点に呆然と佇み、街の方を静かに見つめるユキナを後ろから優しくなだめるように腕を通し、抱きしめる。


…本当に自分がつくづく嫌になる。

僕は一体何度ユキナやフルに怖い思いをさせたら気が済むんだろうか?

それに今回に至ってはドレイクまで巻き込んでしまった…。

アレクにユキナを奪われた時、確かに僕は家族をもう悲しませないと決めたのに。


…あれは僕が突如として現れたアレクから“グラリオッサに関するある大切な話”を聞き終わった時だった。

突然告げられたのである。サポナビさんから、僕の家族に命の危機が起きていると。

僕はすぐにその場を後にして瞬間移動で家へと戻ってみると、敷地の外には野次馬がたくさん集まっていた。僕はその野次馬をかき分けてみると、僕らの家があった場所には大量の黒い灰と焦げ臭さだけが残っていたのだった。


「嘘…だろ」


あの時ほど怖い思いをしたことはないかもしれない。

改めて僕らは常に狙われていることを痛感させられた。


「ユ、ユキナ達は…」


サポナビさん曰く、ドレイクとフルのお陰で命辛々なんとか魔の手から逃れたことを告げられた時は大人気なく灰となった家の前で号泣してしまったよ。





湖から夜の冷たい風が容赦無く僕らの間を通り抜ける。


僕はしばらくユキナの冷たくなった肌を温めるように優しく無言で抱きしめていた。

すると、それまで何も喋らず無言だったユキナがバスパの街から背後に広がる月に照らされた小さな湖に視線を移しながら小さく呟いた。


「私を…強くしてください」


風にかき消されそうなほど小さな声で確かにユキナは僕にそう申し出た。


「もうエデルさん…いや、もうエデルにばっかり助けられ、心配ばっかりかけるのはイヤなんです!」


相変わらずまっすぐな瞳で彼女は僕にそう告白した。初めて呼び捨てを使って。


本当にユキナは強い人間だと思う。

自分の家が消され挙げ句の果てには命を狙われたら普通、心が折れるものだ。

僕がユキナの立場なら悔しさを糧にここまで向上心を持つことなどできないだろう。


僕はユキナの手を取り、ただ一言返答する。


「一緒に強くなろう!」


何故かその際、ユキナの顔が赤くなりソワソワしてたけど…僕、何かしちゃったのかな。


青く輝く月の湖のほとりで僕らがそんな対話をしていた時だった。


「ご主人、どうか…どうか私も強くしていただきたい!!」


果たしてどこへ行ってきたのかフルと共に竜の姿に戻ったドレイクが口に咥えていた何かを地面に下ろしてそう言った。

というかドレイクって自在に竜の姿にもなれるんだ。便利な身体だな。


「お!ドレイクも!いいよ!ビシバシ鍛えてあげる!」


ちょうど最近ギルドの依頼を受けられていないし、今の状況が一段落したらクエストの受注でもしようと僕は考えた。


それはそうと…


「ドレイク?フル?それ、何を捕まえてきたの?」


僕はちょうど前方に横たわる大きな赤い鳥型モンスターを指差し尋ねる。

するとドレイクとフルは一瞬二人で顔を合わせた後に僕らの方を振り向き声を揃えて言った。


『『亜種のグリードラプラスだぞ(ですぞ)!』』


「…え?」


『周りにいた雑魚【モブ】達の処理は私が行い、亜種の方をフル様が主に相手しました!全討伐まで15分かかってしまったことは反省点ですが…』


「へぇ!?」


思わず素っ頓狂な声が出てしまった。

なんたってたった二人でいつしか戦ったあの風王狼と同格の亜種を無傷で倒してきたと言い出したのだ。

確かにグリードラプラスは通常、体長1メートルほどの青い体表の飛べない鳥のはず。

だが目の前のこいつは体長がその3倍はあるし、何より赤色だ。亜種という証言は正しいだろう。

しかし、僕は彼らを讃えると同時にこの時とんでもないことに気づいてしまった。


「ベイクバード…もう食べれいんじゃないの…これ」


僕がバスパの街で買ったこのベイクバードというものはここ最近になって話題になった食べ物だ。

話題というのも、ベイクバードというのはここ近年バスパの街周辺でグリードラプラスが大繁殖が起こっていた事に目につけたバスパ内にある肉屋の店主が作った所謂、創作料理なのである。

つまりそのグリードラプラスの繁殖の生みの親である亜種が倒され、その残党達も全て葬ってしまったということは、そいつらは今頃全員地面に呑まれているだろう。

うん。どう考えてもベイクバードはもう食べれないね。



あぁ…ごめんなさい


僕は心の中で肉屋のおじさんに謝る。


ただ聞いてみたところによると二人とも自分達の力足らずで家を消されたと思っており、そのお詫びとしてユキナと僕に狩ってきてくれたとのことだった。

確かに亜種ともなればいくらくらいになるかは分からないけど素材が高く売れるだろうし、食料にも困らなそうだ。

それに僕やユキナの為に善意でやってくれたことらしいからここは一応、黙っておこうと思う。


『ユキナ、悪かった』


『ユキナ様!私の力不足で…本当に申し訳ない!』


そしてそんなその二人の必死の弁解を聞いていたユキナが次第にクスクスと笑い始めた。


「何言ってるの?二人とも私を守ってくれたじゃない。とっても感謝してるよ!それとね、エデルは私たちの晩御飯として街からグリードラプラスのお肉を買ってきてくれてたのよ?」


僕もそんなユキナの微笑みにつられてクスクスと笑ってしまった。


「ほら、シリアスタイムは終わり終わり!皆のお腹が大きく膨れるほど買ってきたよ。少し遅い時間だけど久しぶりにみんな揃ったし夕食にしよ!」


僕は既に冷めてしまった大量の串が入っている紙袋の中身を二人に見せてあげた。


冷めてしまってるから唯一火属性魔法が使えるユキナに再度温めてもらおう。


フルは僕の食事開始の発言に気を良くし、ドレイクは金の鱗を纏っていてもハッキリと分かるほど顔を赤面させたまま固まってしまっている。きっとユキナの優しさに触れたのと同時に自分が獲ってきた獲物が意味をなさなかったことにショックを受けて感情が今、大洪水を起こしているんだろう。


こうしてこの後すぐ、僕らは静かな湖のほとりで青白い月の光に照らされ、星達と共に賑やかなベイクバードパーティを楽しむのであった。









「うわぁ…大きい」


僕とユキナは上を見つめながら驚嘆の声を漏らす。

僕らの前には4階建ての立派な屋敷が堂々と聳え立っている。ここはバスパの街の一等地。そんなところまで来た理由はただ一つ。

ユキナを助けた際に一緒にアレクの奴隷競りから逃した人達の中に貴族の三男がいた件。


「でも本当にエデルはすごいですよ。まったく。色々な意味で」


「ハハ…そりゃどうも」


乾いた笑みを浮かべ僕はそう返した。だって僕だって知らないうちにこのバスパの街一の有力貴族を助けてて、その反動でその貴族と接触することになるとは夢にも思わなかった訳だし。

因みにここへはフルとドレイクは来ていない。なんかメビウスのダンジョンへ修行へ行くらしい。

本来ダンジョンは冒険者ギルドで冒険者登録しないと入らないけど、フルはもうこの街では風王狼の一件で英雄扱いされているからその辺りは問題ないらしい。


僕はZAQの店で買った黒を基調とした自慢の正装を一度整え、気持ちを切り替え、屋敷の門を叩いた。


暫くして中から出て来たのは所謂メイド服を身に纏ったピンク髪の若いお手伝いさんらしき人。

おそらくまだ二十歳にもなっていないと思う。まだ若いのに頼もしい限りだ。


「エデル様ですね?お待ちしておりました!フューリ様がお待ちになっております。どうぞどうぞ。土足でお上がりください!」


「はい!」


僕とユキナは緊張感を漂わせながら屋敷へ上がられた。絵画や花瓶などが飾られている広い廊下を通りメイドさんの後に付いていくと応接間らしき一つの部屋に案内された。

壁には煌びやかな装飾が施されていて有力貴族の凄さを思い知らされる。

メイドさんは僕らを応接間の中央にある長テーブルが置いてある場所へと座らせると


「フューリ様をお呼びしますので少々こちらで寛いでお待ちくださいね!」


といつの間に用意したのか僕らの前にとても高価そうなカップに紅茶を用意してくれそう言い応接間から出ていった。

その手際の良さはもはや一つの芸術のようだった。


僕とユキナは無言のまま顔を見合わせた。

お互い何も言わずとも伝えたいことはわかる。


…これはある意味とんでもない場所へ来てしまった。と。




それから5分ほど経ち応接間の扉が開かれた。おそらくフューリ様が来たのだろう。


案の定、僕らのちょうど向かい側にあった椅子に一人の少年が座った。


「ようこそコルーの屋敷へ」


少年は両手を幅広く広げ、僕とユキナにそう歓迎の挨拶を行なった。


「……」


僕らはただ無言でそれを見ていた。


理由は単純、まさか7歳ほどの子供に歓迎の挨拶を受けるとは思わなかったからだ。


「え〜っと、わ、私の名前はフューリだ!今日は…君達に…え〜っと…」


多分、無言で受け流されるとは思っていなかったのだろう。

僕らがずっと黙ってこのフューリ様をジト目で見ていると次第に額に汗をかきはじめ動揺しはじめた。動揺を隠すためにメイドさんが用意してくれたオレンジジュースをがぶ飲みしたが効果はなかったみたい。

するとこの雰囲気に耐えられなくなったのかフューリ様は何かがメモされた紙を下着のポケットから取り出した。


「今日は君達に感謝の意を送りたいと思う!」


うん。所謂、カンペというやつだねアレ。

最後までセリフを言い終えたのが嬉しかったのか目を輝かせながらこちらを見てくるフューリ様。


僕は緊張をほぐしてあげる為、フューリ様に話しかける。


「お初にお目にかかりますフューリ様。あの、無理してそのような口調にしなくてももっとフランクに接していただけないでしょうか?」


僕の提案を聞きフューリ様はこれでもかとばかりに再度目を輝かせ


「いいの!?お兄ちゃん!ありがとう!」


と言った。

いやいやお兄ちゃんって…。


フューリ様は椅子から飛び降り、小走りでユキナと僕のところまで移動すると


「お兄ちゃん!お姉ちゃん!僕を悪党か

ら助けてくれてありがとう!」


フューリ様は子供らしい満面の笑みを浮かべ、僕らに感謝の言葉を述べた。


ユキナは自分も捕まっていたとは言えるわけもなく涼しい顔を装い一緒にフューリ様の感謝の言葉を受け取っていた。




そんなこんなでそこまでの一通りの流れを終えてから静かになった応接間で僕はメイドさんに声をかけた。

因みにユキナはフューリ様に別の部屋に案内をされて積み木遊びの相手をしているらしい。


「これ、おかしいですよね?」


だってそうだろう。普通、こういう場にはこの家の主人とかも一緒に顔を出すはずだ。子供一人で任せるなんてどう考えても異常だ。


僕が言いたいことを瞬時に察したのだろう。メイドさんが深々と頭を下げた。


「申し訳ありません、今この家はある難題を二つばかり抱えている状態でして…」


メイドさんは表情を曇らせながら話を続ける。


「実は本来この場に出ていただくべきはずのご主人様なのですが…数日前から外にフューリ様を一人で誰にも言わず捜しに行かれたご主人様が帰ってこられないのです」


「えぇ!?なんだって!?」


僕は驚嘆の声をあげた。だってバスパ1の貴族の主人が行方不明なんて…とてもじゃないが驚かずにはいられない。


「そしてさらに本当はご主人がいらっしゃらない場合、長男のカイ様か次男のハーベスト様にこの場にご出席いただきたいところでしたが、カイ様は既にご結婚なさってこの家を出ておりますしハーベスト様は現在、謎の高熱に苦しんでいる状態で…手の施しようがない状態でして…」


先ほどよりさらに顔に影を落としながらメイドさんはそう言った。


「そんなことが…」


何か僕に助けてあげられることはないだろうか?そんなことを頭で考えていた時だった。サポナビさんがいつものどデカイ声で僕に話しかけてきた。


【ご主人様!そのハーベスト様の症状を私が診てみます!もうしかしたら私なら何かしら解決できるかもしれません!】


「ああ!そっかぁ!それがいい!」


まずい、しまった。思わずサポナビさんの声への返答が口から漏れてしまった。メイドさんを見てみると絶賛ドン引き中だ。

だが僕はそんなメイドさんにハーベスト様の症状を直すことができるかもしれないことを伝え、ハーベスト様が匿われている部屋までの案内を頼む。

すると半信半疑ながらもメイドさんは承諾して案内してくれた。


ハーベスト様が寝込んでいる部屋に案内されて入ってみると、これまたものすごい高価そうな金ピカの装飾が施されたベッドの上で苦しそうに咳をしている多分20歳ほどの青年がいた。

部屋の中はカーテンを全て締め切っており、外の光を全て遮断していた。

近づいてハーベスト様を見てみると顔は真っ青で一目で具合が悪いことは分かった。


「一週間ほど前からずっとこの状態なのです。食事すら殆ど喉を通らないらしく日に日に衰弱していっております。

私は一体…どうしたら良いのでしょうか」


涙をうっすら浮かべ、ハーベスト様の近況について教えてくれた。

僕はすぐさまサポナビさんに診察を開始するよう促した。


【ふむふむ…おや!この症状ですと…どうやらポップグリーンの毒に侵されているみたいですね!これは二週間で生物を苦しませながら死へと追いやる恐怖の植物の毒です!】


サポナビさん、どうやら特定したみたい。


【え〜っとですね。これならビヤルドの街の薬屋で売られているフラマメを粉末状にさせた漢方を処方して、後はしっかりとした食事をとれば治りますね!】


さすがサポナビさん、完治までの詳しい内容まで完璧に伝授してくれた。


…ん?


「ビヤルド…ビヤルド?ビヤルドの街!?」


おやおやなんてこったい。

僕は今日何度目かの驚嘆の声を思わずあげてしまった。だって僕の出身地に人の命を救えるものがあるなんて!


メイドさんはもはやそんな僕を不審を通り越してシカトしている。

だが僕はめげずにメイドさんに喜びの声をかける。


「治せます!ハーベスト様の病気はすぐ治せますよ!」


するとメイドさん、僕の発言で目を丸くした。


「えぇ!?そ、それは本当なんですか!!!」


なんやかんやでメイドさんがこの時、今日一番の驚嘆の声を響かせたのであった。







●名前 エデル

●職業 モンスターテイマー

● HP 18714/18714 SP 15443/15443

●レベル 72

●スキル 自己回復 与ダメージ倍増

被ダメージ半減 プラズマフレッグ

瞬間移動 HP自動回復 状態異常無効

王の威圧【大】軍隊指揮 認識超強化

風魔法極 炎魔法極

●特殊スキル 学びLV2

●テイムモンスター 子神狼


●名前 神狼 フル

●HP 18714/18714 SP 15443/15443

●レベル85

●スキル プラズマフレッグ ????

???? ???? 自己回復 与ダメージ倍増 被ダメージ半減 瞬間移動 認識超強化 HP自動回復 状態異常無効 王の威圧【大】軍隊指揮 風魔法極 炎魔法極


●名前 金豪鋼鉄竜 ドレイク

状態 【人間】

●HP 18714/18714 SP15443/15443

●レベル73

●スキル 風魔法極 炎魔法極 極炎のブレス 鋼鉄化 自己回復 与ダメージ倍増 被ダメージ半減 瞬間移動 認識超強化 HP自動回復 状態異常無効 王の威圧【大】軍隊指揮 風魔法極 炎魔法極




●名前 ユキナ メンデル

●職業 魔法戦士

● HP 1992/1992 SP949/951

●レベル 22

●スキル 火属性魔法 闇属性魔法 無属性魔法 ???? ????







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。