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第36幕

【解けない謎があるのかい?それなら過去を振り返るといい。】


こんなセリフを聞いたことがあるかな?


え!何だって!?知らないの!?


……


そうか…それなら仕方がない。英雄伝説オタクである僕が解説してあげよう!


これは僕が昔から憧れているかの英雄が幼少期当時、どれだけ修行をし、努力を続け何度挑んでも攻略出来ないでいた【あるダンジョン】の攻略法を彼の師に尋ねた際にその師が実際に返してきた言葉らしいだよね。

そしてこの言葉をキッカケに幼少期の英雄は過去を振り返りそれまでの修行の効率の悪さを改めた結果、そのダンジョンをたった数ヶ月後に攻略することができたのだという。


いやー確かに良い言葉だし何べん聞いても良い物語だよ。うん。


でもね、困ったことにどれだけこの言葉を参考にして自分の過去を振り返ってみても今この場所にアレクがいる理由が見当たらないんだよな。


僕が頭の中で悶々とそんな事を考えているとそれまで無言だったアレクが口を開いた。


「驚いた?捕まっているはずの僕が君の前に姿を現して」


あの時のような人の心の奥底に恐怖を生み落す笑顔ではなく、穏やかな笑顔で彼はそう言った。


「驚いているに決まっているじゃないか!」


僕は第一声に放たれたその言葉に対しコンマ数秒でこれまた素直な返事をした。


だってまさか、またユキナの誘拐でも企んでいるんじゃないか。彼の姿を見てからそんな不安が僕の中にはあるわけだし、とても正気ではいられない。

だがアレクはそんな警戒態勢をひいている僕に対して手を横にプラプラとさせ敵意がないことを告げる。


「ほらほらそんなに身構えないでよ。実は今日、君に少しだけ話しておきたいことがあって後をつけてきたんだよ」


その言葉の後にアレクの口から告げられた言葉は僕と僕の家族が歩むべき今後の方向性を大きく決定ずけることとなるものであった。










「うーん…おそい」


つい先ほどふらっと家に帰ってきたばかりの体の大きさが倍近く違うフル殿のブラッシングという名のふれ合いのようなものを一時中断し、そう言ったのはユキナ様だ。


ユキナ様は先ほどからそれはそれはとても悲しそうなのです。

原因はただ一つ。私のご主人であるエデル様が夕食の時間になっても家に帰ってこないことにあるのです。

ご主人様はあのZAQという服屋で私達と別行動をとる際に今日の夕食の調達も済ましてくれるとおっしゃっていたのでそろそろ帰ってきてもおかしくないはずなのですが…。先ほどから定期的に念波も送っても届かないですし、とても心配です…。


フル様も帰宅してから今まで外で何をしていたのかすら誰とも話そうとせずただユキナ様によるブラッシングを受けている状態。

なんだかこの家全体が沈んだ雰囲気が漂っているように感じる気がするのです。


なんとかこの空気を打開せねば…


私は手元にあるオレンジジュースを飲むのを止め、ユキナ様の方へ向き直る。


「き、きっとエデル様はすぐに帰ってきますって!」


私は何の確証があるわけでもないのにユキナ様をなんとか元気にさせるべくそう声をかけた。

しかしユキナ様は無理やりに作った笑顔を私に見せてきて「そうよね」と小さく呟くと、また少し悲しそうな表情でフル様のブラッシングを始めた。


どうやら私の声はユキナ様に届かなかったらしい。




…私には家族というものが未だ分からない。


…何せついこの間まで私は人間から【英雄】と呼ばれていた存在に完膚なきまでに叩きのめされ、そのあげく英雄の仲間であった魔法使いの職業を持っていた者に最上級の闇魔法である【永遠封印】の紋章をこの身に刻まれたことにより死ぬことすらできず、ただただ生きる屍の如く何百年もダンジョンの最下層に幽閉されダンジョンボスという存在を続けていたのだ。


そんな長い年月を無駄に生きただけのちっぽけな存在の私ではご主人様やフル様、ユキナ様達が心から楽しそうにしているあの本当の家族の輪の中に入ることができるのかが分からないのです。


「私はまだ家族として認められていないのか…それとも」



…いや、そんなものじゃないのか。私はご主人にとってただの召使いなのかも。



そんなことを考えていた時だった。

家のドアがコンコンとノックされた。

それを聞きフル様へのブラッシングを丁度終えたユキナ様が誰よりも先に反応した。


「あ!帰ってきたみたい!」


そう言いユキナ様は立ち上がり、小走りで玄関へ向かおうとした。

だが私はそんなユキナ様の手を握り、静止させる。


「ちょ、ちょっと!ドレイク君!?」


「静かに」


多分、フル様も気づいていたはずだ。

この扉の外にいる存在は我々に対して敵意を持った何者かであるということを。

それと同時にフル様はきっとこのピンチに対して私がどのような行動をおこなうかをテストしているはずだ。


…それなら


「私、このドレイクが対応します」


そう言い私はノックされたドアの前に進み、心してその扉を開けた。


そこには軍服を身につけた180センチほどの高身長で、左目に眼帯をつけた男がたたずんでいた。

そして私はすぐさまあることに気づき、冷や汗を流した。

…この男、まるで隙がない。


「はて?何用ですか?こんな夜遅くに」


私は最大級の警戒心をこの男に向けたまま、そのように声をかけた。


「いやー夜遅くに悪ぃなボウズ、今日こんな辺鄙な場所に来たのはちょいと人を訊ねたくてな。

そいつの名はエデルって奴で私が所属しているグラリオッサというパーティを…」


その言葉が全て言い終わるよりも早く私は男の死角へと瞬間移動し、右腕を竜だった頃の状態へ戻し喉元に当てた。

言うまでもなく竜の腕はとても鋭利な爪を擁する。つまりこの状態の私の腕は人間の首なんか造作もなく吹き飛ばせる訳だ。


「貴様はあのアレクという男の手先だな。おそらくここへきた目的は我々への仇討ちってとこなんだろう?貴様一人で勝てるとは思えんがなんなら私が貴様の相手をしてやろうか?

残念ながらご主人はまだ帰宅なさっていない」


私はこの眼帯の男の器を調べるべく挑発を込めてそう言った。

だが眼帯の男は私の発言を聞いた途端に突如として怪しく笑い出した。


「フッフッフッ…やはり噂通りここがあのエデルの隠れ家なんだな?それと一つ言いたいのだが…」


そこで少し間を開け、眼帯の男はさらに怪しい笑みを浮かべて言った。


「私がいつ一人でここへ来たなんて言った?」


直後、その男の横に今の私と同じほどの身長をした少女が音もせずに姿を現した。

その少女は氷のような無表情で私を一瞥すると、いきなり胸ぐらを掴みユキナ様の家の中にそのままぶん投げはらしい。


らしいと言うのも、そもそもその動作が速すぎて私は自分の目で捉えることすらできなかったのだ。ただ気付いた時には家の中にあった食器や食卓などを盛大に壊し、吹き飛ばされた後だった。


「ユキナ様やフル様に当たらなかっただけでもまだ良かった方だ」


少女の追撃はそれに止どまらず続く。


「最大闇魔法発動…暗黒炎」


「そ、その魔法は!」


私はこの魔法を知っている。

それは対象物を完全消滅させるまで燃え続ける呪われた黒い炎を生み出す魔法。危なすぎるために一昔前に禁忌魔法に登録されていたものだった。


「…この時代にもやはり継承者がいたのだな」


そして予想通り今我々がいるこのユキナ様の家のいたるところから凄まじい爆風を纏って破滅を呼ぶ黒い炎が上がり始めた。

おそらくこの炎はこの家を数十秒で灰にした後、中にいる我々にも引火して灰に

させようとしてくるだろう。


「さて、我々はそろそろお暇するとしよう。おっとっと、その前にちょいとあのエデルとかいう男に伝言を頼むよ。【これは始まりにすぎない。グラリオッサをこれ以上怒らせるな】とな。

まぁ生きていることが仮にできていたらの話だがなぁ」


眼帯の男はそう言うと高笑いを響かせながら少女とともにどこかへと姿を消した。


「ふ、ふざけるな!!」


私は男の後を追うべく立ち上がった。しかしそれをフル様は一声で止めたのだ。


『ドレイク!この家はもう長くはもなたい。先ずは避難が先だ!ユキナを連れ瞬間移動でこの家から離れるぞ!』


「うぅ…分かりました」


フル様の指示を聞き、私は悔しい気持ちを押し殺して呆然と一点に佇んでいるユキナ様を炎から守るように抱え込み瞬間移動を行なった。


移動先は人の目線が無いことなどを考慮してバスパの街からあまり離れていない距離にある小さな湖にした。

そして私を追ってフル様もすぐにその場所に到着した。


「ユキナ様、お怪我はありませんか?」


ユキナ様の身を案じた私はすぐさま声をかけた。

しかしユキナ様は私の言葉に応えることなくただ無言でバスパの街をジッと瞬きもせずに見つめている。

唇を強く噛み、拳も強く握りまるで心のどこかで見えない何かとずっと戦っているかのようなユキナ様。よく見ると唇からは血がにじんでいる。

もう、あの愛らしい小さな家は今頃消え去っているだろう。


「ユキナ様…」


私はあの時何も出来なかった。一瞬にしてあいつらの思うがままに大切な物を壊された。


…強くならなきゃいけない…どんな災悪も弾き飛ばせるほどに。

居場所がない?それなら自分が必要とされる存在となり自分で居場所をつくるんだ。


私は三日月の浮かぶ夜空を見上げ、決意を胸に刻みこむのであった。





●名前 エデル

●職業 モンスターテイマー

● HP 1652118714 SP 15112/15443

●レベル 72

●スキル 自己回復 与ダメージ倍増

被ダメージ半減 プラズマフレッグ

瞬間移動 HP自動回復 状態異常無効

王の威圧【大】軍隊指揮 認識超強化

風魔法極 炎魔法極

●特殊スキル 学びLV2

●テイムモンスター 子神狼


●名前 神狼 フル

●HP 16521/18714 SP 15112/15443

●レベル85

●スキル プラズマフレッグ ????

???? ???? 自己回復 与ダメージ倍増 被ダメージ半減 瞬間移動 認識超強化 HP自動回復 状態異常無効 王の威圧【大】軍隊指揮 風魔法極 炎魔法極


●名前 金豪鋼鉄竜 ドレイク

状態 【人間】

●HP 16521/18714 SP15112/15443

●レベル73

●スキル 風魔法極 炎魔法極 極炎のブレス 鋼鉄化 自己回復 与ダメージ倍増 被ダメージ半減 瞬間移動 認識超強化 HP自動回復 状態異常無効 王の威圧【大】軍隊指揮 風魔法極 炎魔法極




●名前 ユキナ メンデル

●職業 魔法戦士

● HP 1992/1992 SP949/951

●レベル 22

●スキル 火属性魔法 闇属性魔法 無属性魔法 ???? ????


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