第32幕
『まったく骨が折れたぞ!ようやく見つけた…』
「こらフル、牙を見せて威嚇をしないで!怖がっちゃうじゃないか」
僕とフルの見つめる先にはまだ生まれて間もない幼い体長80センチほどの青と赤色の鱗をもつドラゴンがいる。そしてその子は現在なんとおよそ4倍近く体が大きいフルに食ってかかっている。
『ふん!僕はオオカミさんなんかに怒られても怖くないんだ!
それより一体お前らは何者なんだー!もしかして僕を捕まえようとしているのか?そんなことすると僕のパパが黙っちゃいないんだぞ!』
そのことで黙っていられなかったパパをフルがボコボコにして僕たちが今ここまで来たことなど口が滑っても言えないよ…。
というかこの子はすごいな。とても強気でフルの威嚇をものともしていないし…ほんとすごくない?普通に。
ここは奴隷競りの会場から西に2キロほど離れた位置にある小さな洞窟の中。そんな場所にエレメンツドラゴンのこの子は閉じ込められていた。しかも、ご丁寧なことに【プリズナ魔法】という束縛系の魔法をこの子にかけて、この子に外へとは出られないような対策もしっかり講じてあった。この【プリズナ魔法】の恐ろしいところは、その者の精神を蝕んでいくところだろう。例えば今回の子エレメンツドラゴンの件でいえば洞窟の出口は目の前にあり自分の意思で親元へと向かうことができたにも関わらずそこから決して出ようとはしなかった。僕の推測だと、術師によりこの魔法をかけられた後すぐにエレメンツドラゴンはこの洞窟は自分の家であるという嘘を刷り込ませられたのだと思う。
そう、この魔法は一種の洗脳だよ。エゲツない話だ。
だけどそんな高度な魔法が使われていたことには驚かされたのだが、それをはるかに凌ぐ驚きがそこにはあった。
「フル?あのやけに神々しい雰囲気をまとった金色の卵はなんだろね?」
踏ん反り返ってこちらを見てくるエレメンツドラゴンの子の横には30センチ程度の大きさの金色の卵が洞窟の壁にもたれかかっていた。
普通の村人などであれば絶対分からないはずだけど、目の前のこの卵からは絶大な…それこそフルやドレイク、ヘタしたら僕すらも上回るほどの威圧が先ほどからバンバンと感じ取れるのである。
そう言えばフルが"探知"を使った時、確かこんなやりとりをしたな…
『エデル聞くのだ!我がたった今調べた結果、ある場所に強力なモンスターの気配を二つ感じ取ったのだ!そこに間違いないから行くぞ!すぐ行こう!』
僕にやたらと誇らしげな顔をしてくるフルがそう急かしてくる。おそらく、自分のスキルの応用性の高さをここで自慢したいのだろう。
何よりこんな辺鄙な土地でフルに"強力な気配"と言わせるほどの存在なんかエレメンツドラゴンの子供以外いないだろう。ほぼ間違いはない。ないのだが、もう一つの強力な存在とやらの正体はこの時、まったく分からなかった。けどそんな疑問もこの場所へ来て、この金の卵のことであったのだと分かり解決した。
「とりあえずエレメンツドラゴン君?僕らが君をこの洞窟から出して、お父さんとお母さんのところに送ってあげるよ。だから1回警戒を解いてくれない?」
僕の隣で子供相手に火花を散らせているフルを静止させながら僕はそう言い微笑みかける。
それが功を奏したのか、子エレメンツドラゴンはイライラしているフルへの平然とした対応を止め、僕の方へ目を輝かかせ向き直る。
『え?パパやママのところへ送ってくれるの!ありがとう!"さっきの人間達"やオオカミさんとは違ってお兄ちゃんは優しい人間なんだね!』
先ほどまでのフルへの対応とは打って変わって背中の青と赤色の小さな羽根をパタパタと動かし喜びを体いっぱいで表現してくる。
先ほど言っていた"さっきの人間達"というのはおそらくアレクの部下なのだろう。
どうせ、遠くから誘拐してきたエレメンツドラゴンの子供をこの奴隷競りにかけようとでもしたのであろう。そしてそれに気づき息子を追ってきたこの子の親には「エデルという人間が子供を攫った」と適当な入れ知恵をして、僕とエレメンツドラゴンの両方を玉砕させようと考えた…とまぁそんなところだな。
子供の純粋さに漬け込んでひどいことをするものだ。
「それじゃあ少しばかりじっとしていてね。今から君にかけられた【プリズナ魔法】を解いちゃうから」
人差し指と中指をそっと子エレメンツドラゴンの頭に乗せてそう僕は微笑む。
『お兄ちゃん?ぷりずなまほうって?』
キョトンとしながら丸っこい目をこちらに向けてくる姿はとても可愛く、そんな姿にちょっとだけ癒された。
そう。本来は".魔法の解除"なんてものは大賢者クラスでない限りできはしない。事実、魔法解除が過去に行われたケースなんて数える程である。しかしそれを可能にする膨大なSPと強大な後ろ盾が僕にはある。
【フッフッ。ご主人様も私の力を必要としてくれる回数が増えてきていますねー!今回は魔法の解除ですか。承りましましたよ!】
そういう盛大な声と同時に僕の指先から子エレメンツドラゴンの体へSPが流される。
『わーお!すごい!なにかお兄ちゃんから温かい力が伝わってきたよ!』
「よし、これで君をお父さんとお母さんのところに連れていけるよ」
金の卵の方にも、念のため魔法解除だけは使ってこの洞窟からは中の子が生まれた後に出られるようにしておいた。
可哀想だから家に持ち帰り育ててあげようとも一瞬考えたのだが、本来モンスターというのは人間とは違い外で生きるものである。なのでここへ置いていくことにした。
そうそう。奴隷バイヤー達とユキナのおかげでとても清々しい顔つきになったアレクとエレメンツドラゴンのお母さんお父さんは現在、いつ暴れても対応できるようドレイクとユキナに見張りについてもらっている。
この子も早く親に会いたいだろうし、フルはフルで先ほどから構って欲しそうな態度でかつ恨めしそうな視線を無言で僕に送ってきている。
何はともあれ僕もとりあえず早くこの洞窟から出たい。
「それじゃ行こうか!」
『れっつごー!』
僕は少し重いが子エレメンツドラゴンをおんぶするような形をとり彼を親の元へ帰すべく瞬間移動を使ってその場を後にしたのであった。
●名前 エデル
●職業 モンスターテイマー
● HP 10061/10061 SP 6931/8212
●レベル 72
●スキル 自己回復 与ダメージ倍増
被ダメージ半減 プラズマフレッグ
瞬間移動 HP自動回復 状態異常無効
王の威圧【大】軍隊指揮 認識超強化
●特殊スキル 学びLV2
●テイムモンスター 子神狼
●名前 神狼 フル
●HP 10061/10061 SP6931/8212
●レベル85
●スキル プラズマフレッグ ????
???? ???? 自己回復 与ダメージ倍増 被ダメージ半減 瞬間移動 認識超強化 HP自動回復 状態異常無効 王の威圧【大】軍隊指揮
●名前 ユキナ メンデル
●職業 魔法戦士
● HP 1992/1992 SP949/951
●レベル 22
●スキル 火属性魔法 闇属性魔法 無属性魔法 ???? ????




